一昨日、ロシアの安全保障会議書記のパトルシェフ氏の名前がニュースにあがっていた。
(ニコライ・パトルシェフ)
ロシア、イスラエル、アメリカの安全保障担当のトップが会合を持った席での発言を拾ったもの。
例えば、
米無人偵察機、撃墜時はイラン領空内に=ロシア安全保障会議書記
https://jp.reuters.com/article/mideast-iran-russia-drones-idJPKCN1TQ126
TASSは、イランを米とイスラエルがIS扱いするのはまかりならんと言ったという見出し。
Russian security chief slams attempts to put Iran on par with IS as inadmissible
https://tass.com/politics/1065448
この意味は、米国内で懸念を呼んでいることへの対応でもある。イランをテロリスト扱いするということは、通常の議会による歯止めをすっとばしてテロ対策で大統領権限で戦争やれちゃうんじゃないかという話。ウクライナでCIAがウクライナ人をぶっ殺したのも、「テロ対策」という名目だった、そういえば。
ウクライナ東部でCIA主導のキエフのクーデターにびっくらこいた人たちは、ある日突然テロリスト認定されて殺された。1万4000人ほどと言われている。これはみんなオバマとバイデンに殺害されたようなもの。
しかし、パトルシェフさんはもう一つ、会談後の記者会見で含みとしてとっても大きなことを言った。
私たちの対話者(米とイスラエル)が地域の主要な国、つまりイランについて語った声明に関していえば、私は次のようなことをいいたいと思います。
イランは常に私たちの同盟者でありパートナーですし、そうあり続けています。これに伴い私たちは二国間ベースでも複数の国のフォーマットにおいても関係を一貫して育ているわけです。
"In the context of the statements made by our partners with regard to a major regional power, namely Iran, I would like to say the following: Iran has always been and remains our ally and partner, with which we are consistently developing relations both on bilateral basis and within multilateral formats,"
https://tass.com/politics/1065448
もちろん、このallyという語がギクッとさせられるほど大きな意味を持つ。なぜなら、ロシアの軍事使用の原則は、ロシア連邦とその同盟者に対する攻撃に対応する、というものだから。
しかし、ロシアとイランの間には公式な同盟関係は何もない。ただし、シリアを目的として協力し、事実上シリアと共に同盟者であることは証明されている。
これはつまり、この間っから何度も書いている通り、ロシアの戦力がこの地域に投影されていることを背景に、イラン1国でも十分に強いが、それ以上に何か危険なことが起こるのなら、イランには同盟者がいるんだからな、と言って米(&イスラエル)の行動を抑止しているって構造ですね。
しかし、何か厳密な同盟とするまでのことは言っていない。言明することが返って緊張の増大に寄与することを考慮して、って感じではなかろうか(メディアが煽ることがイヤだし、そしてイスラエルが暴発することを望まないというのも大きい)。
この間指摘した力の投影のお話。
また、ロシアは、表だってイラン側で参戦しないとしても、カスピ海を通ってイラン領を通過して航空戦力を向かわせることが可能な立ち位置になっているというだけで、パワーが投影されてるし、そして、装備の補充を第三国領空通過とかいう鬱陶しいことをしないでもできる位置にいる。
欧州勢は、欧州各国を万遍なくNATOに入れることでロシアを空から排除してる。とりわけ、デンマークとトルコのところでロシア軍が自由に空を飛べないよう区切ってる。しかし、イランとロシアが同じ敵に向かう場合に、イランはロシア機の領空通過を許す、というのはシリア戦で達成された。この2国は決して仲がいいわけではないことを考えれば、大きかったねこれは。
タッカー・カールソンが止めたんだよ^^;
慎重なロシア安全保障会議がそういうんだから、イランとの間ですり合わせは出来ていて、ロシア空軍兵力がイランに展開するならこう、ミサイルならこう、といった話し合いと実装計画みたいなものはあるんでしょう。
あと、お金の問題もあるはず。イランはロシアから何か、多分航空機を買うんじゃなかろうか。イラン・ディールが成立すると直ちにイランはエアバスとボーイングに大量の発注をした。逆にいえば、イランの主に改革派がどこと繋がっていたのかが丸見えになったみたいなところがあって、ちょっとなぁと私でさえ思ったが、ロシアは警戒したと思う。だから、今度はこれをこのままにはしないものと思うし、その行動が2国間の一つの担保となるものと思う。
ということで、これは北朝鮮に対してロシアと中国が保証人になると言っているのと似た構造になったきた。
別の言い方をすれば、自分の方は世界一の軍備と金持ち集団を同盟国につけて、目いっぱい同盟ネットワークを作りながら、イラク、リビア etc.といった国を丸裸にして襲っていくという不正常かつ卑怯なやり方がもうできそうになくなってきた、ということで、地球上の大部分の人にとっては朗報だと思う。
ただ、それでもなんとかぶっちぎろうとして、シリアで毒ガス、ロシアはスクリパルだの正体不明の放射性物質で直ちに死んじゃうリトビネンコとかとか、何でもやろうとしている集団は、それでも多分諦めない。ある意味、この勢力は宗教的情熱を使って他者をジハード主義者に仕立てて騒ぎを起こす手法を繰り返すうちに、自分たちがジハード主義者になっていったようなもの。誰かといえば、CIA、モサドであり、そしてMI6であり、少数の労働党を除く大部分のイギリスって感じがメジャーなところだろう思うな。
■ オマケ
何この、不穏な見出しと思わず吹いた。
トランプ米大統領、G20でイラン包囲網目指す=問われる指導力-圧力強化に懸念も
https://www.jiji.com/jc/article?k=2019062500765&g=int
中は、まぁ重要アイテムは盛り込まれてるけど変な記事。最後がさらにへん。
ドイツのメルケル首相は22日、外交を通じた「政治的解決」を目指すべきだと強調。大阪で予定するトランプ氏との会談でもこうした立場を訴えるとみられる。外交戦略よりも圧力ありきのトランプ氏と意見の一致を見るかは不透明だ。対イラン外交で米国と各国の亀裂が深まる恐れもある。
いきなりメルケル?? むしろ、メルケル、マクロンというイラン・ディールの当事者がしっかりと前面に立って調整できないことが丸わかりとなった、独仏の無能力さを見せつけたのがこの一件だと思うわけだが・・・・。
あれか、日本の情報整理の担当者(だかなんだか知らないけど)は、トランプは危険分子だが、メルケルは外交的、政治的解決を目指す良い人、という設計なのか。
いやぁ、メルケルこそ、外交的秩序を乱して、ウクライナを奪取した、ナチスドイツの再来を実現してまった、ヒトラー以外の凶暴な人間だったわけだが。何を言っているんだろう?って感じ。