日産のゴーンが逮捕された話は、日産とルノーを通してフランスが支配権を取ろうとしたのを日本が妨害したのだ、とか、日産とルノーは事実上日産+三菱&ルノーになり、三菱は重工に通じるので、フランスが日本の技術を盗むことを懸念したアメリカがなんかした、とかとか、なんかそこらへんで落ち着いているみたいだ。
重工がらみの話がおかしいのは、フランスと米はNATOとして一体というより、フランス他の欧州諸国はNATOとEUという枠を通じてワシントンの支配が及ぶ構図になってるというのが失念されてる、というところか。つまり、日本がワシントンの支配下にあるのと同様に英仏独その他も支配下にあるという基本の構図が見えてないんでしょうね。おかしな話。
じゃあゴーン事件は何なのかといわれりゃ、知りませんとしか言えないが、各種ブログやらメルマガやらが似た話をさも確定情報みたいに書く時には眉唾だと思った方がいいという経験則からすると、違うんだろうな、とか思ってる。
私としては、この間書いたように、これはマロン派事件なんじゃないのかな、というところから見てみたい。シリア問題ともいいますね。
シリアの一件は、2011年ごろからのオバマ政権による侵略行動が今般の混乱の始まりだけど、その前に2005年にカラー革命の一環みたいな「杉の革命」なるものがレバノンであって、そのメインテーマが反シリアで、シリア軍をはじめとするシリアの影響力をレバノンから出すべきだ、そうだ~と騒ぎになった。アサドの悪魔化は(前からあるけど今に繋がるのは)ここから始まったと言っていいんでしょう。で、マロン派はこの革命を推進した側。反対したのがヒズボラなどのイスラム系統(だけではないが)。
■ レバノンではゴーン事件を残念がってる
で、ゴーンさんの育ったレバノンでは、今回の日本でのスキャンダルに驚き、残念がっているという記事が11月23日付けでCNNにあった。
Lebanon put Carlos Ghosn on its postage stamps. His downfall has stunned Beirut
https://edition.cnn.com/2018/11/23/business/carlos-ghosn-lebanon-icon/index.html
レバノンで欧米側に繋がってる、いわゆるビジネスコミュニティーなるものの大物は、まぁマロン派主体だと言っていいと思うので、そこのコミュニティーは当然ゴーンは尊敬される成功者で、ゴーン自身は一貫して参加を否定しているものの、大統領選挙となると噂の中に名前があがっていた。
レバノンでは切手になったことがあるらしい。
日産の負債を片づけたように、レバノンの混乱も片づけてほしいものだわ、みたいなことを現地コミュニティーは言っているらしいのだが、これはまぁ日本じゃ記事にしづらいでしょう(笑)。コストカッターを褒めるのは、当時は褒めてたんだが、今じゃ微妙でしょう、やっぱり。
で、レバノンも政治的に動くべき、という声があると23日付けの記事にあるからなのか、駐日レバノン大使は行動しているようだ。
レバノン大使、ゴーン氏は「すべて無実」 拘置所で接見
https://www.asahi.com/articles/ASLCX52GFLCXUTIL037.html
ゴーンのレバノンとの関係はそれほど(少なくとも表には)なかったのだが、最近になって投資しはじめ、最近の動向としては、12月8日に、世界中の8都市からの人物を集めてベイルートで会合をしようとしていたらしい。
Two weeks ago, Ghosn and his friends were planning a Bridge gathering in Beirut on December 8, bringing together eight players from cities around the world.
ビジネスコミュニティーの、著名なフランス系レバノン人の事業家は、カルロス(ゴーン)はレバノンではどこでも非常に尊敬されている。我々は彼を守らないとならないといい、さらに、
カルロス(ゴーン)の評判を破壊することを止めることが我々の義務だ。これは恥だ
"Carlos is someone highly-respected and appreciated everywhere here. Our duty is to defend him because of our identity as Lebanese, because we want the truth," said prominent French-Lebanese businessman Pierre Chidiac.
"It is a duty for us to stop this reputational killing of Carlos. It's a shame."
と言っている。
■ シリア情勢の変化
が、しかし、レバノンはマロン派という奇妙なキリスト教集団だけのものではない。もともとのイスラム勢力(ドゥルーズ派)だけでなくスンニ、シーアも大きい。現在はスンニ派集団が最大。ついでにいえばギリシャ正教会派も結構大きい。
そして、現在、反シリア、反アサドで団結したところでどうしようもない。
さらにいえば、レバノンはそもそもイスラエルこそ敵だろうにシリアを排除したらバランスできないだろうと出て来た民兵軍団ヒズボラさんたちは、前にも増して発言権を増している。
反アサドを再燃させるなら、モスクワ行って言って来いという状況になってしまった。杉の革命の頃とは大違い。
現実的には、西側によるシリア侵略の侵略行動真っ盛りの時には、レバノンはできるだけ中立を保つことによって、ロシアはレバノンの立場を支援する、という状況がある種の安定基盤になってる感じだった。
しかしそれ以前から、レバノンは不安定だらけの状況のバランサーとしてのロシアと、関係は深い。
そして、今年2018年前半には、ロシアとレバノンが軍事協力するという協定に取り組んでいると報じられている。可能性としていわれているのはロシア軍がレバノンの軍事施設、港湾を使い、かつ、両軍が演習などをするというもので、現実的にはロシア軍がレバノン軍をしっかり強化するという話。これがどうなったのかは現時点では不明。
Lebanon: Russia's New Outpost in the Middle East?
https://nationalinterest.org/blog/the-buzz/lebanon-russias-new-outpost-the-middle-east-24538
じゃあしかしイスラエルはどうなのかというと、シリアに攻撃を仕掛ける権利があるとばかりに勝手に空爆してまわるイスラエルだが、限界点をさぐりながら、モスクワ詣でをしてるのは周知のこと。つい先ごろこの限界点を自分でぶっちぎったことから、ロシア軍がS-300というミサイル防衛システムをシリアに導入し、いよいよもってイスラエルは動きにくくなった。
■ 混乱地域に首をつっこみたくなかった?
一言で言ってと言えないのがレバノン情勢ではあるわけだが、あえて一言でいえば、どうあれシリア軍が軍事プレゼンスを置くことによってかろうじてバランスしていたところを、シリアの独裁者が軍を入れてるのが間違いなんだわ、とかいうデタラメでカラー革命をしたが、立ち行かず、シリアの代わりにロシアが関与してある種の安定を見てるという感じじゃなかろうか。
そうであれば、今後どうなるのかわからないけど、多分マロン派で杉革命を主導して、西側(サルコジ時代のフランスと米介入主義者?)と組もうとしていた人たちは残党狩りに合うかもしれん。
それを阻止するために、マロン派主体の杉革命推進派という名のよく言えばビジネス志向集団、悪くいえばマスターの言う通りにすることで金を稼ぐ集団が何か決起してくるかもしれない。
現実にどこまでどうかわからないにせよ、そこに日産のゴーンが関与していく可能性が見えたとしたら、多分、日産も日本政府もイヤなのでは? 私もイヤだが(笑)。
だって面倒すぎるし、わかんないにもほどがあるもん。
だから、ここで日産と日本政府が共闘してゴーンの追い出しを画策した、というのも結構ありそうな線ではなかろうか、など思うわけですよ。
もちろんそこに、世界的な自動車メーカーの再編みたいなテーマから賛成するグループとかもあるんでしょうが。
■ オマケ
全体としてみると、いわゆるソ連崩壊を演出してオープンだの自由だのというスローガンで既存秩序を破壊して多数の人間を難民化することによって各国をコロニー化する、というシナリオを持った見た目ソフトなナチみたいな派が負けてるって感じなんじゃなかろうか。カラー革命とかなんとかの春とかいう奴。ネオコンは鉄砲玉。
そういえば、トルコでもソロス財団が活動をシャットアウトされた模様。
Soros foundation to end work in Turkey amid 'baseless claims'
https://www.bbc.com/news/world-us-canada-46347975
ソロスに象徴される動きがしぼんでる、一般人に否定されてる、といった感じが日本の中で理解されていないのは、日経も朝日も毎日もみんなソロス側だからでしょうね。報道の仕様がない。
■ オマケ2
日産 三菱 ルノー 3社のトップ協議で提携維持を確認
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20181129/k10011728401000.html
ということなので、各社の提携はそのままなら、ルノー―排斥説は弱くなりましたね。
パナマ事件って19世紀の? それはどうかよくわかりませんが、フランスはリビアを潰したこともくすぶってる。
仏だけとは限らないけど、しかし多分仏中心にビジネス界の一部がつるんで、地政学的イベントに繋がるようなビッグプロジェクトで釣って投資つのってた、しかし上手くいかなくなってる、みたいなことだったりするのかも。
その意味で確かにパナマ事件的ですね。自分で書いてて納得しました(笑)。
ブラジルは出生地主義なので〇。フランスは5年(高学歴者はたったの2年)で国籍取得可。レバノンは、血統主義なので〇。
ブラジルもフランスも多重国籍容認国。(というか、たしかブラジルはブラジルで出生した国民の国籍離脱を認めてなかったと思う。)
となると、ゴーンは三重国籍か。
中東、南米、欧米のいずれにも国籍を有する、マロン派の面目躍如といったところか。
1年前の記事ですが、やっぱりどうも中東情勢込みの話に見えますよね。
私は、彼の妻のキャロルが気になってしかたない。
旧姓キャロル ナハス。NY出身、USとレバノンの二重国籍者。NY出身ということと、風貌からして、おそらくアシュケナージではないかと思う。(連れ合いは、どこかのサイトで、その事実を確認したと言っているが、私は未確認。)
今回の逃亡劇には、キャロルの義理の兄弟がトルコと特別な関係があり、そのつてを使ったとの報道。常識的に考えれば、一般人がどこかの政府と特別な関係なんてありっこない。臭い。
ナハスという旧姓は、彼女の出生時のものか、前夫のものか。この名字、アラブ系でもユダヤ系でもある。
経済危機、腐敗でゆれるレバノン。ゴーンの帰還は、一般市民からは決して歓迎されていない。不安定な政権への最後の一発となるか。
彼のピンク色の豪邸を警備するのは、一体誰から誰を守るため?
最後になりましたが、ブログ主さん、あけましておめでとうございます。今年も、ブログのアップを楽しみにしております。