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DEEPLY JAPAN

古い話も今の話も、それでもやっぱり、ずっと日本!
Truly, honestly, DEEPLY JAPAN!

位置オンチは修正すべきでしょう、やっぱり

2017-12-28 19:14:46 | 太平洋情勢乱雑怪奇

孫崎さんが、近著「日米開戦へのスパイ」についてtweetし、その周辺で日本が現在取っているミサイル防衛だの空母だのという戦略にもならない戦略を批判すると、いろんな人たちがコメントをつけるのだが、そのほとんどが、なんというかアホすぎて孫崎さんが気の毒になる。レベル低すぎでしょう、日本って感じがありあり。

日米開戦へのスパイ 東條英機とゾルゲ事件
孫崎享
祥伝社

 

で、見てて思うのは、それが、例えば産経に毒されたような人たちばかりでないってところが困ったところということ。

今日見たのでは、

憲法9条を守れば非武装中立地帯にならざるを得ない。そうなるとロシアや中国が領土を取りにくるわけ。さらに日本人も拉致されて奴隷化されるわけ。あのシベリア抑留者のようにな。だから自衛隊が国を防衛してるわけ。だから日本人に自由があるわけ。左翼には分からないだろうねwww

 

あまりにもアホなので、名前は伏せたい。でもこの考え方って、結構多くの人が漠然と持っているとも思う。

非武装中立になるとロシアや中国が日本の領土を取りに来るというのは、ロシアは1945年に戦争に負けた時に連合軍が分割統治する可能性があったから(現実的にはまずなかったと思うが)、日本人がそこはかとなく怖がっているというのはあると思う。が、チャイナについてはどういう根拠なんでしょうね。前世紀において、盛大に他人の土地を盗みに入ったのはもっぱら日本であろうと、まぁ世界中の誰でも知っている話は置いておくとしても、何かこう、このままでいいわけはないだろうと思わずにはいられない。

ということで、大事なことは、まず日本の位置的特性をしっかり押さえていないことがこのような通俗理解を支えているのではないのか、など考えてみる。

私が考える日本の特性は、こんな感じ。

  1. 大陸諸国にとって、日本はそこを通らなければ移動やメジャーな流通路が築けないという場所ではない
  2. 日本の土地を取っても、石油、天然資源等の直ちに富となるようなものはない
  3. 日本には1億人以上の人間が住んでおり、これらの人々は1千年スケールでみて総じていえば他の民族との交流に乏しい(簡単に仲間になるキーがない。例:同じカトリック、同じスラブ系、ドイツ系、かつて同君連合だった)

従って、大陸側には日本の領土を切り取る大きなモチベーションは育たない。

であるならば、上のコメントの議論は成り立たない。以上、といったところ。

 

1について日本と真反対なのが、北朝鮮、満洲あたり、パキスタン、モルドバ等々で、歴史的にみればわかる通り何度も揉めてる。

しかしながら、日本の位置は、昔の東インド会社勢力とか現在のその延長みたいな米軍という地域外勢力とってはこの限りではない。

  1. 地域外の勢力にとって、日本はロシア、中国、朝鮮といった大陸諸国の団結を阻止する、あるいは発展を阻止するために優れて重要な地理的特性を持っている

といえるでしょう。

つまり、この手の図を見れば一目瞭然。

 

思うに、日本の近代史が何かずさんで、自分たちの知りうる限りのよもやまをつなぎ合わせたような講談めいたものに終始し、他国との関係をしっかり押さえた記述になっていない根本的な理由は、こうした位置関係を国民に知ってもらいたくないからなのじゃなかろうかと最近思うようになった。

だって、あまりにもあまりにも、こういう図が出てこないし、たとえ出てきてもでは自分の位置とはどんなものなのかを考察する人はまれなのだもの。この位置であればこそ、イギリス、フランスといった国々がアプローチしてきたという視点を持つ人は本当に少ない。

あ、逆に、ほうらみなさい、日本の位置というのは中国やロシアからすると、まったく邪魔で仕方がないわけですな、あはは、みたいな人は結構いる。しかし、彼らの行動を邪魔することは(邪魔だとして)日本にとってどんな意味があるわけだろうと考えると、実は意味がわからない。

わからないのに、なにせ戦後70年間、一貫して米軍(米国ではない)に支配されているために、知らず知らずのうちに、米軍にとって都合のいいことが自分にとっても都合のいいことになっているという、根深い事情が重なる。

これによって、現在の私たちの「位置オンチ」とでもいうべき状態がほとんどピークに達している、と考えていいのではないかと思う。

そして、もっと悪いことには、この位置オンチによって見失われている視点は、なにも大陸と自己の関係にとどまらない。米軍と自分が一緒であることをもって、あたかも、米国と自分が一緒であるような錯覚を呼び起こしている。

これにより、米国は国として、大西洋と北極海をはさんでロシアと相対し、幾多の戦役と戦役未満を重ねることにより、さらには、いずれもが西欧文明との接合によって発展してきた歴史から意外にも共通事項を持っていることが理解できない(なぜなら、米国が自分と一緒に日本列島にいるかのような視点でものを考えるから)。

また、米国は国としては、中国に対して並々ならぬ関心を持ってきた歴史があり、かつ、東南アジア諸国との関係を通じて、互いにけん制しあってきた歴史のあることも失念される(再び、なぜなら、米国が自分と一緒に日本列島にいるかのような視点でものを考えるから)。

ということから考えると、日本が、現状はいたしかたないとしても、できるだけ日本であろうとするのなら、まず克服すべき課題は、自分がどこにいて、どんな位置的特性を持つかを理解することから考えるべきだろうなどと迂遠なことを言ってみたくなる年の瀬であった。


 


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『白村江以来の薮蛇大陸外交』 (ローレライ)
2017-12-29 16:00:53
『白村江以来の薮蛇大陸外交』の歴史を教訓とするなら『西側の噛ませ犬としてのバルバロッサ作戦』なんて『労多くて火だるま』だとわかる。
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宗教支配の怖さ (ブログ主)
2017-12-29 16:24:41
ローレライさんと私だけがずっと言ってる気がしますね、バルバロッサだ~と。でもほとんどの日本の人には共有されていないと思います(笑)。

でもって、『西側の噛ませ犬としてのバルバロッサ作戦』が労多くして火だるまなのは、リアリストが考えればわかること。なぜならこれは自分の隣人と対立するモデルだから。

しかし、西側というのは宗教支配なんだと思います。だからリアリストは勝てない。アメにはリアリストがいますので、これが日本のリスクですね。
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バルバロッサ作戦と義父の話 (Симомура, И.)
2017-12-30 03:35:43
度々の投稿,気がひけます.しかし日本人には多分興味深いものがあろうかと思い,家内の父より伺った話をご紹介いたします.義父はナチ占領開始からほどなくして,東プロイセンのドイツ人経営の農場に徴用農夫として送られ,1945年の同地への赤軍進撃で解放されています.農場主は大変穏やかで如何なる虐待も辱しめ行為も,それをすることがなかったそうです.ドイツがソ連攻撃を準備していることは,近くにある内陸運河複合網―匣門式運河では荷船はその両側に敷設された狭軌鉄道で牽引するーが猛然と稼動し始めたことから伝わってきたのだそうです.夜中でも船と貨物鉄道との間で荷の積み替えが行われる,そこに動員がかかる,積み替えは2時間内に完了されねばならぬ,…これらは切迫した軍事作戦の徴なのだそうです.そして1941年6月の末のある日,農場主は義父を呼び,ひそひそ声で「ヒットレル,カプート(ヒトラーお終いだ)ロシアに攻め込んだ」と”喜色満面”で言ったそうです.そして「ドイツは必ず敗北する,ロシアは緒戦は敗け戦が続くだろう,あの国は絶対に降伏しない,女どころか子供までもが銃を執る,強いぞ,お前の国も戦勝国となるだろう,いいか絶対にこの農場に残れ,パルチザンの勧誘があっても,それに応じてはならぬ,ドイツ中どこも密告者だらけだ,捕まったら鉤に吊るされてじわじわと殺されるのだから」.農場主はどうなったでしょうか.赤軍が東プロイセンに入ってきて,彼の家族を含めドイツ人民間人の西への脱出が始まったとき,義父に労働証明となる自筆の書類と給料を渡し,馬と牛を餞別代わりに与え,自分は縊れて死んだそうです.義父はこの話を何度も何度もしてくれたのですが,いつも涙目になりましたね.YouTubeに古いロシアのワルツの”ベージェンカ”(Беженка家なき子)を聴く事ができます.広い庇帽子の母親が女児と男児を連れた写真は,後背の石造りの家の特徴からしてドイツ人かラトビア人のものでしょうか.逃亡や流浪が美しいワルツとなるなど,ロシアですね.
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ありがとうございます (ブログ主)
2017-12-30 16:18:58
Симомураさん、貴重なエピソードをお話くださってありがとうございます。
読んでる私も涙目になりました。

ご指摘のБеженкаはこの動画のことかと拝察します。リンクしておきます。
https://www.youtube.com/watch?v=Zx3YnzBr5N4

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