DEEPLY JAPAN

古い話も今の話も、それでもやっぱり、ずっと日本!
Truly, honestly, DEEPLY JAPAN!

ハンガリー、新規原発着工にEUがゴーサイン

2017-03-08 12:43:17 | 欧州情勢複雑怪奇

ハンガリーは、パクシュ原子力発電所に新規プラント2基を建設する計画に来年着工することとなった。

新規分は既存のものと同様ロシア製。80年代に建てたものが古くなったので新型にすると考えてもいいんだと思う。

で、EUのエネルギー委員会がいろいろいろいろ問題視していたわけだが、結局EUからゴーサインが出たため着工の運びとなった。

だもんで、タス通信の見出しは、プーチンとオルバン、欧州委員会の決定を称賛、となってる。

Putin and Orban hail European Commission’s approval of Paks nuclear power plant project

http://tass.com/economy/934415

             

wikiを見たら、建設予定の原子炉がVVER-1000となっているけど、実際はVVER-1200、つまり最新のものとなる模様。

 

で、そのVVER-1200というのは、第三世代プラスのカテゴリーで、一応ここが安全性、効率性の面から現在最先端で、多くの事例があるわけではない。

第3世代原子炉
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AC%AC3%E4%B8%96%E4%BB%A3%E5%8E%9F%E5%AD%90%E7%82%89

だったら、そのVVER-1200がロシアで商業オペレーションに入りましたよ、というのはニュースバリューがあると思うわけだが、業界紙みたいなのとロシアとその周辺みたいなところからしか出ない。

First VVER-1200 reactor enters commercial operation
http://world-nuclear-news.org/NN-First-VVER-1200-reactor-enters-commercial-operation-02031701.html

 

VVER-1200は、フィンランドのピュハヨキ原子力発電所でも採用されるらしい。

Hanhikivi Nuclear Power Plant
https://en.wikipedia.org/wiki/Hanhikivi_Nuclear_Power_Plant

RAOS Project Oy is the Supplier of Fennovoima’ Hanhikivi 1 NPP being supported by all Rosatom’ experience and knowledge
http://www.raosproject.fi/en/news/raos-project-oy-supplier-fennovoima-hanhikivi-1-npp-being-su

 

日本語版のwiki情報は更新が遅れている。記念にコピペしておこう。

フェンノボイマは2012年から13年の内に東芝アレバの2社のうちから建設業者を決定する予定で[3]、東芝の1600MWのEU-ABWRとアレバの1700MWの新型加圧水型炉EPRのいずれかの軽水炉を選択することを発表していた。その後、大型の原子炉については東芝が優先交渉権を得ているが[4]、フェンノボイマ株の34%を保有していたE.ONがフィンランドの事業からの撤退を決めて株を売却することを決めており、資金調達の難航によって原子炉が中型炉に変更される可能性があり、この場合はロスアトムを加えた3社による受注競争になると考えられる[5]

ピュハヨキ原子力発電所

 

ここでもまた東芝は取れなかったって話なんだなぁと改めて確認。

で、フィンランドと来れば東芝というよりフランスのアレバでしょう。アレバはフィンランドで欧州型の加圧水型EPRを作っていたのだが、着工から10年建ってもできず、フィンランド政府との間で泥仕合をしていたし、多分今もいる。

どうしてこんなに遅れたのか。最初は工事的な問題だろうと考えられていたのだが、一昨年あたりからは根本的に欠陥があるんじゃないかとまで言われる始末。

2015年の日経の記事。阿修羅に全文がコピペされていたのでそこをリンク。

安全な原発は夢か 仏アレバの新型炉建設が難航[日経新聞]

http://www.asyura2.com/16/genpatu46/msg/833.html

こっちは阿修羅に誰かが書いた記事。

世界最大の原発企業アレバ社の落日:最新鋭“夢の原子炉EPR”圧力容器に欠陥
http://www.asyura2.com/15/genpatu42/msg/587.html

 

つまり、フィンランド政府はアレバとか冗談だろ、ということでロスアトムと仕事することにした、ってことなんでしょうね。

 

■ 西側世界なるところは何を考えているんだろう

前から書いてるけど、原発に関する記事というのは本当にへん。日本独自にへんなところだけでなく、いわゆる西側世界なるところでは、ロシア(ソ連)を存在しないものとして扱ってることがしばしばある。

世界では~、とか書くんだけど、一方で現実の地上では上で見たようにロシア周辺ではこれまでもソ連製を使い、ここからもロシア製を使うらしいところが散見できるし、新興国もインド、イラン、トルコとロシア製で原発を作った、または作ろうとしているところが普通に目につく。

2年前のロイターの記事が指摘したところ。

原発外交でロシアが広げる「核の傘」

 

にもかかわらず「世界」では、といった語を使った原発記事はあふれいている。これはつまり、私たちが日ごろ目にする記事における「世界」というのは実は地球規模の世界の話ではなくて、どうも西側のコア世界なんでしょうね。だから、そこにおいては、GE、ウェスチン、アレバしかメーカーはない、日本企業はそのすべてのメーカーと協力している、最強だ、とか言えちゃう。

GE、ウェスチン、アレバが不調です→ 世界では原発は退潮です

みたいない冗談のような言明が本当に行われている。

 

■ ホントはとっても野心的だったのに

しかし、実際退潮なのは西側コア世界であってロシアを含むその他世界ではなかったってのがこの話のホントのところなんだろうと思う。

最近のブルームバーグの記事がはしなくもこんなことを書いていた。

  東芝は06年に原子力事業の将来性に賭け、54億ドル(約6100億円)でウェスチングハウスの株式を取得。ウェスチングハウスの開発した第三世代プラスの加圧水型原子炉「AP1000」をてこに、中国やロシアを中心に原子炉の受注を目指していた。AP1000は中国と米国で計8基に採用されている。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-02-03/OK4FFZ6TTDS201

 

ロシアに、は、ロシア連邦に、なのだろうか。信じられませんが。ロシア周辺またはロシアと懇意にしているところ(ベトナム、インド)を西側製に取り込もう、って話だったというのならわかる。(いやいやしかし、クリミアをNATO基地にしてプーチンを蹴落として、ロシアを再び解体しようとしていた、という線も捨てがたいが)

で、これが日本が原発を海外に輸出しようとした主たる動機、でしょうね。つまり西側さん共同の戦略で、資金的に余裕のあった日本が世界中に金をばらまいて、その上3つのコア技術を持った原発メーカーを支える、というプログラム。

日本にとって何かいいことがあるというより、西側世界保持のために日本は働いていたし、今もいる、ってところ。ま、NATOの東方拡大と基本発想は同じですね。

 

ベトナムについては、原発着工を止めたというので、日本ではベトナムはこの危険なテクノロジーを採用しない、エライエライとか言われているようですが、一方で、ベトナム人28人、ロシアのNational Research Nuclear Universityを卒業、とかいうニュースがあったりする。

Vietnamese students complete Russian training
http://www.world-nuclear-news.org/NN-Vietnamese-students-complete-Russian-nuclear-training-2302174.html

これはつまり、ロシア式の核の学習を6年制の大学で基礎から学ばせたという話ですね。ということから示唆されるのは、ベトナムが将来的に原発をとなったらつまりそっちに行くということじゃなかろうか。

ということは、日本は、また何かベトナムに金持っていく話が出てくるのだろうか。

ハンガリーもきっと、ホントはとっても親日、知られざるハンガリーと日本の絆とかいうタイトルの記事がそのうち来るかもしれない。

 

■ オマケ

そのうちまとめたいと思うけど、日本の多くの人、つまり私たちは認識的な不調和に生きている、というのが問題だろうなぁとか思う。

日本の記事や国際関係の話の話し方は、日本とアメリカ、日本と中国、日本とどこそこ、と常に日本を中心に、あたかも日本にイニシアチブがあるように語る。枠、プラットフォームを見せない。

しかし、現実の政治、経済においては、日本は the West を支える一つの極として行動していると考えた方が整合的。三極委員会とかいうのもそういえばあるわけだし。

で、多くの日本人は、この三極の中の一つであることを好んでいる。だって、G7の一つとしての日本にプライド持ってるらしいんだもん(私じゃないです)。

にもかかわらず、日本は日本だ、と言いたい心情が当然あり、さらに、実のところ欧米をそれほど好ましいと思っているかというといろいろ怪しいところがあり、かつ、日本人が知っている欧米というのは実に日本にしかない(つまり誤った)欧米だったりすることもしばしばある。

これはもう明治からこっちずっと引っ張ってる問題ですね。

 

■ 関連記事

「嵌められた」東芝、で、誰に?

 


 

現人神の創作者たち〈上〉 (ちくま文庫)
山本 七平
筑摩書房

 

一下級将校の見た帝国陸軍 (文春文庫)
山本 七平
文藝春秋

 

 


コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ウィキリークス、CIAの「ハッ... | トップ | 空っぽの国体明徴運動と日本... »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
『ロシア式原子炉の優越』 (ローレライ)
2017-03-08 09:23:09
『デカイ燃料棒』を使った『アメリカ式原子炉』の『技術的限界』がハッキリして来てチェルノブイリの暴走を制圧できた『ロシア式原子炉の優越』が浸透して来た。
返信する
何かがホントにおかしい (ブログ主)
2017-03-08 13:00:55
ローレライさん、

確かに型の問題はありそうな気はしますが、それだけでもないような。というか、どうして西側の原発産業はそんなにうまくいかないのか、が今一わからない。

何かがホントにおかしいのでないのなら、もっとフェアに言えるはずなのに、なぜこんなへんな状況なのだろうというのが私の疑問です。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

欧州情勢複雑怪奇」カテゴリの最新記事