1か月ほど前、ロシアのラブロフ外相が、EUはロシアにとって信頼できないパートナーだと前提していかないと私たちはやっていけません、といったことを言った。
その後、ロシア国内のメディアでラブロフ外相が現状を縷々説明して、異口同音に、EU(ブリュッセル)が、自分たちを対等に扱う気はなく、EU加盟各国は個々に話し合う時にはそれぞれの国とロシアの利害についてプラクティカルなことを語るが、必ず一致したステートメントをもたされてきて、それを披歴する(つまり、上からの指示が行き届いている)、といったことをかなり細かく、丁寧に、しかし、あけすけに語っていた。
ロシア人はこういう具合に上が言い出したら、それは何らかの変動を示唆しているのだなと読む人々だと思われる。上もそれがわかっているから、事態を説明して、反応を見る。予想外に反発が強いのか、誤解はあるのか、認識のずれはどこなのか、etc.と分析して、修正して再提示したり、ゴーしたり、止めにしたりする。ロシア・ウォッチャーが、同意に基づく民主政体だな、といったりするのはここらへんの事情でしょう。
■ ロシア弱体化という願望
で、ロシアを西側の丁稚か何かみたいにしたいという強い欲望を持った西側についてはこれまで何度も書いたけど、プーチン率いるロシアはそれに対抗しているわけですね。
わざわざ、プーチンが思い出し怒りしながら述べていたことすら何度もある。
こんな一幕もあった。
最近も、毎年恒例のバルダイ会議で、凄いことを言っていた。この会議、毎年その先にとって振り返ってみて重要だったと思うようなことを言う会議になってる。
ロシアの最大の誤りは、アメリカを信じすぎたことだ、と。
Putin Slams US: "The Biggest Mistake Russia Ever Made Was To Trust You"
こう語った動画を見たけど、怖かった。怒りと侮蔑の感情が抑えきれずに湧き上がるという趣だった。格戦略、ミサイル戦略で、優位性を得るために、アメリカは本当にいい加減なことを言いまくって、世界中を騙して、いい子のふりして、その陰で恐ろしいことをしているというのが、相手になったロシアの大将から明言された格好。
また、EUとの関係の見直しは去年既にプーチンが示唆してた。
■ 西側外務省総出で乗っ取りを画策してる
で、こうしたことは別にロシアの思い過ごしでもなんでもなくて、実際、その昔CIAとその娼婦のジャーナリストとかメディアは、このままいくとロシアはバラバラになっていく懸念がある、みたいな「ご宣託」をしたものだった。
それは懸念ではなくて、そうしていこうというプランニングでしょう。日本人もここに入っていただろうと私は信じてる。極東はロシアの力じゃおさめられない、とかいう話を何十回も見た。底意は、だから解体されたら俺が取るだったんでしょう。また!!
前にも何度も書いたけど、アメリカの駐ロシア大使は、ロシア転覆をはかるための活動家。ウクライナ大使もそうだった。
元大使のMichael McFaulは、今もまだおめおめとtwitterで偉そうにプーチンを批判してる(つい最近)。そして、アホなアメリカ人は自分の国がどんなに卑屈で、極悪な存在になっているのかを全くわかってない。
これらの人たちは、プーチンさえいなければ、俺らはロシアを取れたのにと思ってる、強欲で不実な者ども。
これらの卑怯な者どもは、地獄で永遠に焼かれるしかないでしょう。一族郎党、ろくな死に方をしないことは確実だと私が「ご宣託」してやる。
前世紀には、トロツキーたちが西側の資金を背にロシアをめちゃくちゃに(あるいは彼らの理想の通りに)したがったが、今世紀は取り組みがグレードアップして、米国国務省および西側先進諸国の外務省が総出でロシア乗っ取りをやっていると考えるのが最適だと思う。
そして、当の本人たるロシアからもう無理だぜと何度言われても、このグレードアップして官僚機構にしちゃった野望集団は止められなくなってるっぽい。
■ まだ突っ張るEU
で、基本構想を書いているのは、アトランティック・カウンシル、ペンタゴンなどの集合体を代表して米国国務省なんだろうと思うけど、EUもまったく同様に行動してる。
ヨーロッパ人の商売やら生き方を犠牲にしてまで、このロシア奪取計画がやめられない。
そこで、今般は、ナワリヌイ事件という、壮絶にどうしようもない、作った事件をネタに、ロシア外務省の懸命な説明にもかかわらず、EU加盟27か国の大使が揃って対ロシア制裁に賛成するところまで来た。
Ambassadors of 27 EU nations impose anti-Russian sanctions over situation around Navalny
これはつまり、2018年のスクリパル親子事件の再来ですね。
どっちも意味不明な事件を西側が勝手に作って、それを基にロシアに、人権違反だのへちまだのという理屈から制裁をかける。
で、この人権違反の違反は文言の構成上何に由来するかというと、ロシアが 欧州評議会(Concil of Europe)の議会機構であるところの欧州評議会議員会議(PACE:Parliamentary Assembly of the Council of Europe)のメンバーだから。これで、欧州評議会が決めたことに従え、といえる仕組みがあるわけ。
だから、もうこのPACEを出たらいいという声がロシア内にある。
Russia must be ready to leave PACE if trilateral mechanism is launched, lawmaker says
出ることと、出ないことの便益を現在検討中ってところでしょうか。
さらに、ノードストリーム2も、自分たちの利益になるからここまでやってきたのに、欧州側では、アメリカからの中止を求める声(オバマ、トランプ、バイデンで何も変わってない)に合わせて、再びパイプラインは中止すべきだといった論調が出来てる。
ロシアは、お前が止めるならそれでもいいぜ、という恰好を見せ始めてる。
事業主体であるガスプロムは、上場企業だから株主向けにこのパイプラインの中止は排除しない、と既に言ってる(言わないでおくことは株主への背信行為になる)。
これは、EU側にはかなりショックだったんじゃないかと思う。この人たちは、自分たちがさんざんいじめても、ロシアは金が欲しいから天然ガスを売るに決まってると決め込んでる。
だがしかし、度重なる制裁のせいでロシアとEU間の取引高は、2013年との比較で半減し、逆に、同時期ロシアと中国の取引高は倍増してる。
つまり、EUという市場は、ロシアにとってもちろんあった方が望ましいに決まってるが、2010年ごろにEUが謳歌していたほどEUの価値は唯一絶対でもなくなってる。また、各国の利害とEUの利害も違う(例:東欧側でロシアからエネルギーを入れなかったら、どこから入るわけ?大変な負担になるんだが、という国)。
もとより、クリミアとバーターになるほど重要かというと、ロシア人はEUの金を捨てる方を取るだろうというオッズは常に高いわけだが。
ロシアにとっては金の問題だが、EU、とりわけドイツにとってはエネルギー&産業政策の問題。私は後者の方が深刻だと思うが、ドイツ人はそうは考えないらしい。
■ 見直し
というところで、今日はゴルバチョフがお誕生日だとかで出てきて、何やらいろいろ言っているようなので、マジで、ソ連崩壊のあたりの事情整理に向かうのかもしれない。
ゴルバチョフ宛てに各国首脳から送られた文書を公開する模様。
Book of letters addressed to Mikhail Gorbachev about to be released in Russia
何度も書いてるけど、こここそ話の核心ですからね。
- ベイカーは、シュワルナゼに、「NATOの範囲または戦力は東には動かないという厳格な(iron-clad)保証」を約束した。
- そして、同日、モスクワで、ゴルバチョフに対してあの有名な一言が来る。この同盟(NATO)は「東には1インチ」も動かないという、それ。
- 1990年2月、ドイツのヘルムート・コールも、同じことをゴルバチョフに語る。
ソ連崩壊当時、世界中の多くの人は危機的な対立構造がなくなったと思って喜んだのに、実際には、東ドイツをつぶしてナチが復活したのにすぎなかった話にしちゃったのは西側。
アメリカが汚いのは論を待たないが、ドイツは卑劣だ。
そして、これらすべての舞台を貫く一本の嘘の柱は、これでしょう。
そもそも、ソ連に苦労してもらってナチを倒して、日本を倒して、その果実を盗んだアメリカ。
アメリカ覇権とは、ソ連の人2700万人の死体の上に乗っかって、知らん顔しているようなもの。
いずれにしても、どんな結果となるのか、まったくわからない。
■ オマケ
この話は、しかし過去の正邪問題、歴史見直し問題だけではすまない。
すまないからこそ、アホみたいに活動家の大使を使ってでも、ロシアをつぶす必要に迫られていたのではないのか、と思ってる。
それは何かというとエネルギー問題。
一極支配とは、ソ連がもっていた資産のすべてを西側が勝手に使えるようになること、だったんでしょう。だが、ロシア人は死なず、したがって資産の最終的な所有者は健在だった。
石油、ウラン資源あたりはもちろんだけど、多分、原子力まわりの技術やその開発を可能にする知識&経験、マンパワー、場所も、西側が欲しかったものだったんじゃないですかね。あと、ロケットエンジン、チタンあたりもそうか。
マケインやオバマが、ロシアはガソリンスタンドが国やってるだけの存在だ~とかアホなことを言ってましたが、これがむしろ「真実」をネガティブに暴露していたのかもしれない。ソ連/ロシアは、実は盗みたいほどの技術持ち、あるいは技術者を生み出し育てられる国だった。
私が不思議で仕方がなくて、いろいろほじくった話からは、そのように見えます。
ということは、過去30年間の意味不明な「温暖化」プロパガンダ作戦も、この線と表裏で考えていくべきなんじゃないかなと思ってる。これもエネルギー問題だから。いずれ整理したい。
ナワリヌイも然り。彼らの「人権祭り」はどうせ失敗します。
制裁だなんて、笑わせちゃいけません。脅しにもなっちゃいない。痛手を負うのは、自分たちの方なのだから。どうせたいしたことはできない。
うるさい蠅みたいなモンです。
ロシアのような大国は、悠然を構えて、時々バチっとうるさい蠅を叩いてやりゃ、いいんです。
EU/USAが誰を承認しようとベネズエラの大統領はグアイドではないです。ラテンの人たちはちゃんとしてます。
また、ロシアは弱い者いじめはしないですが、ヨーロッパ(EU)は強くて悪い奴らなのでいじめるかもしれません。ガスは止まるかもしれないと思います。