前のエントリーで、陛下が新年のお言葉の中で満洲事変に言及された話を書いた。そういう言い方も不遜であると承知の上で言えば、陛下は本当に日本を守ることをお考えなんだなぁと思うのだった。
日本を守るというと、え、どこから? 中国から、ソ連からアメリカから・・・と考えがちだけど、そういうことじゃなくて日本が日本でなくなることを防止することも日本を守るということでしょう。
それは例えばどんなことか。それは例えば、戦前の満洲事変以降の行動などもそれにあたるのではないのか、というのが私の年来の考え。
ウチの陸軍は満洲事変以降、満洲国を守るためと称して、あるいは日本の権益を守るためと称して、華北に侵入していく。その間、NHKスペシャル『圓の戦争』(2011年8月14日放送)で一般に大っぴらになった通り、日本の軍(と、おそらく経済界だろうと思うけど)は、小さいな局地的な安定なんてことじゃなくて、もっと全然スケールの大きなことをやっていた。
もちろん、おそらくこの試みは早晩破綻していただろうとは思う。が、華北で欧米系とバッティングせず、あるいはそれにもかかわらず軍事的に押していって、アメリカが介入せず、あるいはその介入が小さく、中国の半分でも日本の支配下に置くような事態が発生していた可能性は否定できない。
これは一面では、明らかに日本の勝利となり、日本中は沸き返った・・・だろう、おそらく。
しかし、もしそうなった場合、その支配地域は日本なんだろうか?
当座、日本だっただろう。しかしいつまでそれが続くだろう? 経済力、軍事力が圧倒的であり続ける限りにおいて、でしかないのでないの? 日本が善政を敷いて支那の民も満洲の民も平穏に生活水準があがっていったその時、そこはどういうエリアとなるのか?
そこは、the area of Chinese civilization チャイニーズ文明地域になったのではあるまいか?
■ 日本
日本というのは列島だし都合よく陸地の主体が固まっているので、守っている分には海が味方してくれる。人々が群れをなして歩いて渡って来ることのできない地という意味で、自然に守られている。そしてその地上において自然環境に即した信心の体系を作って生きていた。その意味で独自だ。
しかし、文明的な要素の多くを古代から中世の支那の王朝から受けていることも否定できない。縄文文化からある日突然律令体制は生まれない。
倭国―東アジア世界の中で (中公新書 (482)) | |
岡田 英弘 | |
中央公論新社 |
(右派が大好きな宮脇淳子先生の旦那様、岡田先生のご本。30年も前の本だけど今でも非常に説得的な考察だと私は考えている)
そこから考えれば、歴代の日本の朝廷はチャイナ本体というなんでも飲み込む鵺のような場所との接近にずっと気を払って来たのではないかと愚考する。離れていてこそ日本は日本でいられるという考えは堅固だっただろうと思う。
ああそれなのに、うちの軍と来たら・・・じゃなかったのかなぁと思うわけです。
つまりね、日本の軍も日本の国民も明治維新以降の世界しか世界だと思ってないから、弱くてぐじゃぐじゃな支那しか念頭にないわけ。しかし、歴史はもっと長いわけで、多少なりとも秩序が戻った東アジアはどうなるのか、と考えると支那大陸に手を出すことは長期的には我が身を溶かしかねないわけね。
■ 秀吉時代を思い出す
思えば、近代までの日本の歴史で支那に進出しようとした人は豊臣秀吉しかいないわけだけど、この時も天皇は良い顔をしていない。
しようとしまいと秀吉の方が現実的な力があるし、その上上級公家というより皇室と半身一体みたいな近衛家の近衛信尹は朝鮮に行こうとしていたのだが、後陽成天皇がこれを諌めて信尹の渡海を妨害した。
これは通常、そんな無謀なことをするな、という意味として取られていると思うしそれはそれでそうなんだけど、でもそれ以上に、明を版図に収めるなどということの危険性を熟知している朝廷、という話なんじゃないかと思ったりする。
そこから350年経って、また近衛さんと陛下という話になるのが感慨深い。
武家と天皇―王権をめぐる相剋 (岩波新書) | |
今谷 明 | |
岩波書店 |
確かこの本の中に後陽成天皇と信尹のやり取りがあったような気がする・・・。こっちかな?
信長と天皇 中世的権威に挑む覇王 (講談社学術文庫) | |
今谷 明 | |
講談社 |
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