ロシアの駐トルコ大使の殺害は、プーチンの第一声が誰がこの殺人の影にいるのかしっかり調査するというあたりだったので、とりあえずロシアとトルコが共同捜査を開始した。
ロシア大使殺害事件 トルコとロシアが共同捜査開始
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20161220/k10010814091000.html
トルコの首都アンカラで、現地駐在のロシア大使が警察官の男に銃で殺害された事件は、隣国シリアの内戦に、軍事介入しているロシアへの報復として大使を襲ったとの見方が出ています。現地には、ロシアの捜査チームが先ほど到着し、両政府は、事件の全容解明に向けて、共同で捜査を始めました。
しかし、非情なようだけど重要なのは、それにもかかわらず、そこから半日の後、ロシア、イラン、トルコの外相が予定を壊さずモスクワに集まって、アレッポの解放手順について共同であたることにした、そのフォーマットを樹立したということでしょう。
Russian, Turkish, Iranian FMs speak after Moscow meeting on Syria (Streamed live)
つまり、ロシアの大使の死によって、この3国の協力フォーマットは覆しづらいものとなった。
トルコは過去数年、イスラム国の大義を言い立てる風の人が多数いたし、アサド打倒の急先鋒のひとつでもあった。だから、ロシアと協力するなどというのは絶対許さないという人は当然多かった。もちろん、それは国内事情だけでなく外国勢力の侵入による部分も大きい。
そこでエルドアンは方針を大きく変えるわけだから、実際とても難しく、トルコ国内は不穏だったし今もそう。
が、ここでロシアの大使が殺されたことで、3国は共同してテロリスト、ジハードを非難するという姿勢を確立することができた。(だからこそ、ロシア外務省は大使殺害を嘆くよりも前に、これはテロであると断定したんだと思う。やるべきことをよく読んでると思った。)
ロシアの大使の死はまったく無駄でないどころか、トルコを後戻りさせないための漆喰となった。大使は間違いなく、これでいいと言うでしょう。
アンカラのロシア大使館のある通りは、亡くなった大使の名前を付けることになったそうだ。
アンカラの通り、ロシア大使の名に改称へ
https://jp.sputniknews.com/incidents/201612203158843/
ロシア外相ラブロフは、ロシア・イラン・トルコのフォーマットは、シリア危機解決にとって最も有効なフォーマットだと説明し、3国で作られる声明は国連に持って行って、誰でもアクセスできるようにする旨も報じられている。
Lavrov says Russia-Iran-Turkey format most effective for settling Syrian crisis
http://tass.com/politics/920987
http://tass.com/world/920995
■ この次の世界
とういわけで、ひとつづつ世の中変わっていくということでしょう。
おおざっぱに言えば、アメリカが世界中のどの地域にも口を出すワシントン万能主義時代は、妄想万能主義であったことが今日明らかにになり失敗に終わったので、次に進むんだと思う。
多分、問題ごとに、地域ごとにで解決のフォーマットを作り、それを各地で秘密にしないで透明性をもたせるために、あるいは、他国の意見を反映させ、協力が必要なら協力するために、会議として国連を活用する、みたいな感じになるのでは?
ウクライナのノルマンディーフォーマットというのが考えてみればこの端緒だったかも。全然機能してる風もないですし、あっちはEU・ロシア間の揉め事が解決するまでどうにもならないんだろうとも思いますが。
そこから考えた時、東アジア地域で、日本はアメリカのスカートの影に隠れている場合ではない、ってことになるんでしょう。
■ オバマはゴルフ
これについてトランプは正式に文書を出して、ロシア大使の暗殺を非難していた。
また、ベルリンでの車両突っ込み事故というかテロというかという事件に対しても同様に非難の声明を出している。
オバマはどうした、と思ったらハワイに行ってしまってゴルフをしている模様。この人これが初めてではないわけだよね、危険なことが起こっている時にゴルフに行くっての。これはつまり、俺はその件についてタッチしないと、むしろ内部に言っているんだと思う。いずれにしてもすごい政権だった。
しかし、この無責任体制は、つまり次の体制に向けてできるだけアメリカを外していくという意味ではあったんだろうと、そこはそう思う。
■ オマケ 1
暗殺事件についていろいろと陰謀論めいたものを考えたくなるし、そう考えたくなる節も実際ある。私も2種類、4通り考えた。考えたけど、どっちから行っても最後は同じになった。カルロフ大使は自分がここでトルコ人に殺されるのなら、それはそれでいいと覚悟されていたのだろうと私は理解してる。
トルコ政府が迅速に決定した通りの名称変更はこの想像が正しいと示してくれているような気がしてる。
■ オマケ 2
ムジャヒディーンあるいはジハード投入作戦を止めさせるためにトルコがどれだけ大事かという話は1年3カ月前にも書いていた。
適当にまとめてみるに、まずグランドデザインは、イスラムを原理主義に作り変えてテロリストにしてそれらを撃つと称してユーラシア中央部を攻撃するという、アメリカ(というか西側)が1970年代から取ってきた方針、要するにムジャヒディーン投入作戦の崩壊機会を誘導し、それを止めさせる、ってことじゃないでしょうか。
で、シリア危機はこの長い動きの中の結節点みたいなものなので、ここを解くことで上記目標を達成する機会と捉えている、という感じではなかろうかと思う。
そうなると、実は問題となっているのはこのムジャヒディーン投入作戦において中心的役割を担ってきた(その意味においてムスリムの裏切り者でもある)トルコの身の振り方が非常に重要になるのだろう。しかし、エルドアンはそれ以前の大統領たちと違ってムスリムの大義を復興させた方なので、既にこの方針を半分内諾しているようなものだった、というところもあるのかもしれない。
ロシアのやろうとしていることはシリア危機より大きかった
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私は、今、あなたがやったことで、一つ位国民のため、世界平和のためになったことがあったのではと必死に思いをめぐらすのですが、何一つ思い浮かびません。憎しみをかきたて、対立をあおった結果、何が起きていますか。あなたはパペットだから、責任ないということですね。あなたにこのカオスに終止符を打つ意思もなければ、能力もない。世界平和のために、今のあなたができる最善のことは、悪あがきはやめて、毎日ゴルフでもして、表にでてこないことです。もう、アンタの説教を聞きたい人は誰もいませんから。
NATOがこれまでに4回ほどエルドアン暗殺を試みたことがある、と言う不穏な話も出ています。