聖徳太子はいなかった (新潮新書) | |
谷沢 永一 | |
新潮社 |
この本が発売された頃、書評だったのか新聞の広告だったかとにかくタイトルがセンセーショナルな感じで扱われていた記憶がある。
それから幾星霜、偶然手に取ったので読んだ。大変面白かった。書誌学者の人が書いた本でエッセイ仕立てなので、新書で出ている本としては特筆すべき読みにくさがあるとも思うが、一方でこんなに詰まった本もまたとないとも思う。
へんな言い方だがこれはじいさん、ばあさんになって、氏が扱ったテーマやら出来事やらのほとんどにとりあえず行き逢って、そういえば、ああそれか、いやしかし、と何かしらバックグラウンド知識があってこそはじめて面白いという本ではないかと思った。
今、Amazonのレビューを見たらコテンパンに面白くない、悪文だと書いている方が複数おられて、さもありなんと思った。
しかし、これは書物とは、書き物とはどうやって成り立つものなのか、そして歴史がもしそれらに依存して残るものならば、後世に見えるものとは何なのかを示唆してくれるという点で非常に優れた一冊だったというべきだろうと私は思う。読んでよかった。
ゆかしいなぁ日本と今日も思うのだった。