日本の方言 (講談社現代新書 160) | |
平山 輝男 | |
講談社 |
昨日たまたま付いていたテレビで料理の番組を見るともなしに見ていた(というか聞いていた)ら、料理の先生はどこからどう聞いても関西(多分京都)の人で、鮭も炊く、野菜も炊くと一貫してずっと炊く、炊くを連発し、お弟子さん役の進行係りのおねえさんは共通語を話し、その間ずっと、煮ると炊くを使い分けて話していた。どちらかが譲歩するのだろうかと思っていたが、どちらもずっと同じ事象を別の言葉で話していていた。
多分たいていの人はどちらにしてもこの行為が何を意味するのか理解しているだろうからそれでいいのだが、とても興味深い一例を見た気がしたので、思い出してアップ。上記の本の中には、炊くと煮るの分布図が載っている。
日本語で、いわゆる共通語といわれる東京地区では野菜やお米に水を入れて調理することを言い表す場合、お米は「ご飯を炊く」、野菜は「大根を煮る」と使い分ける。しかし、西日本では、両方とも炊くというのが標準…
と思っていたのだが、今あらためて本を見てみると、ご飯を炊く+大根を炊く、の地域は近畿地方から岡山の一部、四国の松山、香川、九州の熊本、宮崎、長崎の一部が含まれるらしい。つまり中心は近畿というより瀬戸内海沿岸に分布しているといえそうだが、しかしでは九州はどう考えればよいのやら? 何かの交流圏の後なのかしら?
この本の中の地域別の言語の使用例はなかなか面白い。しかしいかんせん本としてはちょっと古い。しかし、いやしかし、多分こういう基礎語みたいなものはそう簡単には変わらない。だからこそこうやって差異が残る、と考えることもできそう。
一時代の記録としても非常に優れた本だと思う。