3月29日をもって、日本は出そうと思えば地球の反対側まで、事実上なんの根拠もなく、日本にとっての安全なんかおかまいなしに自衛隊という日本の唯一の軍事組織を派兵できるようになった。
このへんは、
Everyone says I love you ! さんが上手にまとめてらしたので、リンクをさせていただきます。
安保法施行。「イスラム国」攻撃支援も、第二次朝鮮戦争参戦も可能に。しかし、市民は負けない。
http://blog.goo.ne.jp/raymiyatake/e/ae172f434b6939de6af9eca2d5f2aa66
この状態は当然危険なテリトリーに足を突っ込んでるという状態。これはまぁ変わらないわけだけど、イスラム国に突っ込まされるんじゃないかという懸念はとりあえずロシア軍とイラン軍の踏ん張りによって緩和されたと言っていいんじゃないのか、ってのが私の考え。
トルコの大統領が核サミットの前にオバマ大統領と会談するらしいけど、ここでオバマが、もう一回突っ込めとは言わんでしょ(笑)。
そういうわけで、私としては、当面「10月にはダマスカスにISの旗」作戦は崩壊したと見ます。
ここで書いた通り、
去年10月にはダマスカスにISの旗が翻っているはずだった?
日本の安倍政権とか外務省だか防衛省だか知らないけどなんせ日本政府は、この作戦にあわせてどうでもいいから夏までに参陣させたかったんでしょうね、と私は考えてる。
でもって、一昨日のパルミラ奪還は、その成り行きにとって大きなシンボルとなって、このことによって世界中にどうやらシリア情勢は変わってきたみたいだ、という感触が広がった。
シリア、パルミラ奪還
パルミラというネームバリューも役に立ちますからね。シリア国民がISから奪還したという話を聞いて、よくない、という人はIS側の人しかいないでしょう(笑)。
で、そうであるのにもかかわらず、パルミラがアサド政権に取られても別にいいことじゃない、みたいなことを言ってしまったオバマ政権の報道官はバカだよなぁと思う以外にない。あはは。
そこらへんを鋭く読んでるなぁと思ったのは、イギリス。すっかりトリックスター的になってるロンドン市場のボリス・ジョンソンが、Telegraphにわざわざ寄稿してる。
Bravo for Assad – he is a vile tyrant but he has saved Palmyra from Isil
いや~めでたい、よかったよかった、俺は心からよかったと感じてる。いや、ほんとにともろ手をあげて喜び、その理由を次のように述べる。
なんでかっていうと、アサドも酷い男だ、それは間違いない、しかしISはそれを超えてるだろ、あんなのよりアサドはまだましだ(アサドは酷い、という印象を埋め込んでるともいう)。
さらに、アサドは酷い男だ、しかしそれ以上にISはきちがいだ。考古学的に重要な遺跡を破壊しようとするような奴は許せないだろう?
だから、タイトル通り、アサドよかったよかった、彼は悪い奴だがパルミラをISから救った、という判断になる、と。米国務省より利口。
しかし、よく考えれば今更何を言うんだよ、って話なのね。それにもかかわらず、アルカイダと組んでアサドを倒そうとしたのは、主に英仏+米ネオコン+米介入主義者、なわけですね。リビアからずっと。「穏健な」テロリストだの、「穏健な」反反乱者だの分けのわからないことをいいつつここまで引っ張ってきたのはあんたらやん、なんです。
が、パルミラ奪還のポジティブ効果に正面切って反対すれば、自陣営がほとんど反・人道みたいになっちゃうので(そうなんだが ^^;)、ここはちょっと大げさに喜んで目くらまししようとしてるんでしょう。
で、その間に、実は西側は常に反テロリストなのだという論調にしようって腹づもり。本当はずっと反ISで戦ってきた、とか言い出すのね、きっと。
だから、ここでISを叩く軍事行動に西側全体が入っていく、みたいな可能性は一応ある。
しかし、去年と違ってロシアと米(全部じゃないが)がシリア全域を見張ってるような状況になったので、嘘をかまして騒動を起こして、あられもない方向に引っ張っていくという英仏の得意な特殊作戦を入れかき混ぜて、メディアで話を作っちゃう、ってな戦術はとれないんじゃないかと想像する。
そこから日本を考えると、とりあえずあんたらは今のところこっちでは用事ないですから、でしょう。
で、北朝鮮がぐだぐだやっているという状況で、自軍を遥か遠くに出すなんていうのは愚の骨頂なので、この意味からも海外派兵とか言ってる場合じゃない。
田母神さんに味噌がついたのは、何か不穏なことをやってるグループが無効化されてるって意味かなぁとか思ってみたりもする。そういえばこの間トルコで日本のおにいちゃんが捕まったけど、ああいうのも表面の話と違う可能性あるんじゃないの、とか思ってたりもする。
でもまぁ、途中まで、米ソを共に仮想敵国にしていることに何の躊躇もなかった大日本帝国を愛好している人たちが政権をやってるっつーのは不気味なので用心にこしたことはない。
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派遣一時停止の裁判となり,白黒がつくまで,派遣ができなくなると,お池に嵌まってさあ,大変だと思います。
さて本題に入りますが,パルミラは単なる軍事的拠点ではありません。ラッカやデリゾールではありません。世界的な規模の遺跡群をもつ都市です。
米国には紀元前の遺跡はありません。文字もなかったはずです。そういう移民の国の人々にとって,伝統と呼ばれる遺跡や古典文学はありません。
したがって軍事的拠点としてみると,アメリカ政府にとって重要ですが,古代遺跡,文化遺産としての価値はその重要性が分からないのです。また,彼ら政府の人間は,政治学などに興味があるだけで,考古学に興味はありません。
ところがイギリスは,伝統の国であり,遺跡もたくさんあります。したがってパルミラを見る時,軍事的拠点と
古代遺跡という観点から見ることができる人が,アメリカより多いわけです。
シェークスピアを読んだことのない政府高官がパルミラを尊重しないのは当たり前です。ゆえにバクダッドの国立博物館も,パルミラ城も破壊され,略奪の憂き目に遭っても,意に介さないのが歴史の浅い国です。
もし政治家や日本政府の高官が源氏物語54帖を読んでいたら,海外派兵に反対するはずです。これは米国と日本のちがいです。
そういうことも言えるかもしれませんが、今般に関しては、もっとずっと単純に、アメリカ人の方が現在の政府の発言に忠実にしないと、という正直成分が、その場しのぎのイギリス人支配者層よりも若干多かった、ってことかと思ってみたりもします。
でもって、多少平和的になってきたところで、結局、白人が悪い、白人の植民地主義が悪いのだとか語って快哉をあげ、やっぱり戦争は悪い、とか言い出すんでしょうね。空爆なし、武器なしでどうやってISから奪還できるのか考えることもなしに。辛い話です。