日本のオーディエンスを見ていて心配になるのは、なにか、トランプさんが解決してくれる、これはすべての出来レースみたいに思ってる人がかなり多いように見えること。
全体的にトランプがこれまでの路線を否定しようとしているのは本当でしょう。しかし問題は、大きなプレーヤーたちが言うことを聞かない、聞くにしても条件が、というところから西側の内部の利害の調整がつかないこと。ここから思いもかけない暴発があり得る。
この暴発を防ぐために現在一番便りになるのは、ロシアが引かない、やったらやり返すと言い張っていること。これは無論健全な方法ではない。最終的な被害が大きすぎるから、ほらあなたもやれないでしょ、に持っていくしか方法がなくなっちゃったという事態だからこれしかないということ。それでもまぁ可能性としてイギリスが潜水艦一隻沈められるぐらいのことはあるかもしれないな、って感じ。
というところで、今日の櫻井さんの記事。今問題となっている東グータのあたりは、CIAだけでなく英仏が深く入れ込んでいる地域だろう、と。
東グータを政府軍は制圧、侵略勢力はWHOというタグを使って軍事介入を狙う
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201804120000/
(略)
東グータはCIAの影響力が強かったが、ジャイシュ・アル・イスラムを指揮していたのはイギリスの特殊部隊SASやフランスの情報機関DGSEのメンバーで、MSF(国境なき医師団)が隠れ蓑として使われてきたとも報告されている。
今回、WHOは化学兵器の使用で多くの犠牲者が出ているとする声明を出したが、情報源が怪しい。WHOがパートナーと呼ぶ団体の中にはMSFが含まれているのだが、このMSFはアル・カイダ系武装勢力と一心同体の関係にある「白いヘルメット」を訓練している。西側は「白いヘルメット」を善玉として売り出しているが、その主張が事実に反していることは本ブログでも指摘してきた。東グータが解放された後、こうしたグループの宣伝用映像の撮影現場も見つかっている。
東グータをシリア国軍が攻めて解放した、という2月の出来事の話ですね。ここから3月になってイギリスがスクリパル親子の事件から凶暴化していった。
で、ここで、ここ何週間か出回っている、この解放時にイギリスのオフィサーがシリア政府にとらえられたという説が俄然、ほんとうかもな、と思わないわけにはいかない説に見えて来たと思ってる。
いろんな説というよりいろんな物語があるんだが(中東情報はいろいろ尾ひれがつくから読むのは楽しいが、読み解くのが難しいものが多い)、東グータで10人か11人の英オフィサーが捉えられ、英はシリアと直接交渉するのはイヤで(できなくて?)、ロシアに頼んで戻してもらうよう画策したが、シリア国軍の問題だからとロシアに断られた、というのが、骨格としていかにもありそうじゃないの、と私は思ってた。
いろいろのうちのいくつはネット上の有名サイトにも真偽不明だが今も載ってる。
Syrian Army Captures British Military Men in Eastern Ghouta. Failed US-Israeli Plot to Launch Ground Assault on Damascus
陥落時に将校が捉えられるというのはよくある話だが、今回の場合、シリアという他国に、英米仏+サウジ、トルコ、カタールあたりは勝手に入り込んで、しかも、その主たる戦闘員の手配はアルカイダ系(要するに英米の手ごま)でしたというそもそも異常極まる話なので、ここで現場将校が捕まるというのは、出した側からすればとてつもなく大きな出来事。そりゃやっぱりイヤなんでしょう、英米仏+の侵略軍としても、と普通に思う。
リビアから持ち越してる武装兵力もあるし、武器調達先とか資金源とか怪しいことの集積場みたいなもの。で、兵が捕まっても兵は一般に自分の周りしか知らないから漏れる問題も小さいと考えられるけど、将校10人となるとこれはやっぱり大変。
ということなので、仮に10人説は「もった」話だとしても、陥落した場で非常にしばしば起こることが起きている可能性はとても大きい。
アサドを「懲らしめろ」とか、ロシアの behavior 振る舞い(メイが言った)、といった語彙も何か示しているものがあるとも思う。
櫻井さんの記事でもう一つ重要な指摘だと思ったのはここ。
MSFは1971年12月に設立されたが、創設者のひとりであるベルナー・クシュネは2011年3月にリビアへの内政干渉を肯定する意見をガーディアン紙に寄稿した人物。リビアへの軍事侵略はその前月に始まった。シリアでもMSFは軍事侵略を支援する偽情報を発信したことを本ブログでも伝えたことがある。
イギリスのガーディアン紙は、シリアへの侵略戦争のマジの重大な加担者筆頭だと思う。シリアの人権団体なるものを隠れ蓑に偽情報を世界中に発信している。ピーター・ヒッチンズは、ガーディアンなんて名前をやめてwarmongers gazette(戦争扇動者ガゼット)と名前を変えろと言っていたが、マジでそんな感じ。
■ オマケ
そう考えてくると、どうしてスェーデンが真剣になって国連でOPCW(化学兵器禁止機関)の調査報告をもとにしましょうというロシアと同じ軌道を取ってるのかと言えば、ロシア提案ではイギリスが降りられないので、スェーデンが仲介の労を取ってます、みたいな恰好にして話を着陸させようということじゃなかろうか。
だから英米の顔を立てて、化学兵器の使用は誰であれいけません、みたいな話をメインにしていく、みたいな。
しかし、こじれてくればこれもできなくなる。