サウジの国王が史上初めてモスクワを訪問したというのが静かに、しかし大きな話題になっている。
これは国際関係の様々な要因に影響を与えるだろうと誰もが思うわけだが、記事によってはとてもけち臭いというか矮小化というかに熱心なものもあってちょっと面白く思えた。
日本語で出てる記事はひたすら、原油、原油、原油のようだが、それだけでは全然ない。言うまでもない。
目につくところでは、サウジアラビアがS-400ミサイルシステムの購入に興味を見せている、ロスアトム(原発屋さん)がサウジアラビア発の原子力発電所構築を計画する、みたいなものもある。どっちもお金だけの問題ではないブツだが、とりあえず調印された取引額は全体で40billion(4兆円)ぐらいらしい。
このサウジの「大人買い」的な動きは、ロシアの前には、中国との間で行われた。物凄い金額(確か13兆円ぐらい)だった。3月には日本を訪問して、爆買いとか言われたものだった。
Putin Is Filling the Middle East Power Vacuum
Russia & Saudi Arabia to set up $1bn energy fund
https://www.rt.com/business/405403-russia-saudi-energy-fund/
サウジは、こうするうちに体制を整理している、ってことなんでしょうね。まずは、石油しかない体制をもうちょっと多様化しようと計画し、さらに、最近では、女性に運転免許を与えるというので話題になった(こういうレベルなわけですが)。
サウジアラビア、女性の自動車運転を許可する国王令
http://www.bbc.com/japanese/41410207
要するに、国内は、守旧派的な人々と、もちょっと近代化すべしという人々が闘争しているらしい。
で、過去何十年か問題だったワッハーブ派その他の、過激主義を振りまいていたグループはまぁその守旧派的な人々ということなんでしょう。多分、国王グループの一部の若い皇太子が改革派の旗頭で、法学者グループみたいな人たちが守旧派ってところ。で、これらイスラム世界混乱の一翼を担っていた人々は、要するに負けてる、ってところなんじゃないでしょうか。
ということから考えると、今回のサルマン国王のモスクワ訪問によって示唆するものの中には、当然、ジハード主義者暗躍の時代の終焉というテーマが埋め込まれていると言っていいのではなかろうか。
状況からすると、もうやめだ、というところではないの?
少なくとも、シリアの盤面でみると、
シリアでアサドを倒すとかいうおバカなプロジェクトを開始した時の主要メンバー、カタール、トルコはモスクワに通ってそれぞれ外交方針を立てなおした。
そこでサウジ国王、モスクワにお出まし。
以上のことから、「アサドを倒してシリアを強盗しよう」運動のスポンサー一群は考えを変えたと言っていいでしょう。
そこで、残るイスラエルとその用心棒になり果てた米・中央軍は、クルドを使って、まだまだ、まだまだだぁとかやっている。
(ISもまだいますよ。でもって、アルヌスラ他のアルカイダもまだいる。だもんで、ロシア国防省が機会をとらえて、アメリカ軍はアルカイダを支援してる、してる、してる、まただほらこれも、とガンガン広報してる。)
と、こんな感じですかね。この話はまだ終わったわけではない。
しかし、トルコのクーデーターの時に考えた通り、いかにクルドが独立を願っていたのは嘘ではないにせよ、外国勢力が入り込んで適当な戦乱を起こした果てにその外国勢力の傀儡のクルド独立国を、周辺各国(つまり一般住民を含む)の許諾なくやられるなんてたまったものではない。
「新中東」マップ再び+都議選
ということなので、クルドを使って第二のイスラエルを作って、そこから中東全域を誰かにとって好ましい状態に書き換える、なんて話はあまりうまく行く気配はないっす。
イスラエル+米・中央軍のやってることって、傀儡としての満洲を作っているようなものだと考えるとわかりやすい。普通に周辺はいやがりますがな。
だから、今後の焦点はイスラエルなんだけど、その前にサウジ国王がモスクワを訪問したことに直接的に影響を受けて、出方が注目されるのはイラン。イラン国民が、サウジ(またはイスラエル)がまき散らすであろう、ロシアはイランを裏切った、みたいな言説に振り回されないことが重要じゃないですかね。
現在起こっていることは、divide and rule(分断統治)政策とジハード主義者の跋扈で戦乱の巷と化した中東を落ち着かせる取り組みで、その主たる仲裁者は、スーパーなバランサー、モスクワ幕府って感じ。
■ オマケ
上でリンクした2016年の新中東マップがらみの記事を読み返したら、こんなことを書いていた。
さてここで、ブッシュに使いまわされていたライス国務長官と並んで、あなたと私は姉妹よ、みたいなことを言って気持ち悪い時代を象徴していたマダム寿司が今ごろのこのこ出て来るのはなんででしょう?
マダム寿司で検索したら、2007年のことを映像付きでログしてるページが見つかったのでリンクさせていただきます。
原爆投下の8月9日に、小池百合子はライスと会って「私と貴女は姉妹です、私は日本のライス、マダム寿司と呼んで」って、アホ。
http://soba.txt-nifty.com/zatudan/2007/08/post_2a6f.html
百合子ちゃんのお話。でさ、ネオコンのお友だちだったことを覚えている人は多いのに、どうして平気で、なんか新しい改革の旗手みたいな持ち上げ方をできるもんだか、なんというか呆れる。これは人々もそうだが、もってマスコミのせい。
http://blog.livedoor.jp/dendrodium/archives/73018455.html
というのを書きました。
もうお読みでしょうが、矢部宏治さんの記事
「誰が首相になっても、総選挙後に必ず起こる「2つの重大な出来事」
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53127
を或方から教えていただいて、上記記事を書いたのでした。
小池百合子という人は、心底ネオコンの傀儡なのですね。
矢部さんの記事、リンクしてくださってありがとうございます。
基本的に私も矢部さんに同意です。要するに現在行われていることは、憲法を改正することで、最後に日本国民に残されていた、憲法を根拠に、我々の軍は我々が差配するという権利を事実上剥奪することだと思います。
ここで書いた通り。
http://blog.goo.ne.jp/deeplyjapan/e/83058a5d186a5bb177d6cedee3deba3f