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保守の怒り (天皇・戦争・国家の行方)/西尾幹二

2013-07-31 18:00:34 | 太平洋情勢乱雑怪奇
保守の怒り (天皇・戦争・国家の行方)
 
草思社
 
「保守の星」と呼ばれながらも2007年に不可解かつ、どう表現しようとも芳しくない退陣を余儀なくされた安倍首相が昨年12月に帰って来て以来、いわゆる保守陣営では安倍政権の磐石化のために「参議院選までは」との態度を堅持した。仲間割れをすることによって再び民主党政権を許していいのか、でもあるだろうし、それよりももっと自民党内での「保守の星」降板を阻止するためでもあっただろう。もとより民主党以下野党の中に自民党に抗する力のある党はないのだから。

しかし、では「保守の星」たる安倍首相がいわゆる保守陣営が望む施策を遂行できるのかといえばこれは未知数というほかない。

さらに、このいわゆる保守陣営というのが曲者で、この内部には考え方も目標も異なった人々が含まれるというのが実はその実体だ。え、それではここで内紛なのか、それでは左翼と変わらぬではないか、といった人が既にネット上でも散見できる。そして、それを阻止するために、差異を言う人を左翼の回し者、利敵行為と捉える、といった試みもみえる。

しかし、保守陣営が一枚岩でないことは別に新しい話ではない。それは実際戦後ずっとそうだったといっていいと思う。それがたまに一枚に見えることがあるとすれば、それは例えば今回のように「民主党」とういう敵が見えやすい形で存在する場合であり、70年代、80年代は総体としての左翼陣営がしっかり見えた時代だろう。。

しかし、民主党という敵は粉砕された。しかして保守陣営という統一なき統一体の割れ目が問題となる。さらに、民主党という敵を倒すために、反民主党を契機として自分を保守だと名乗る人たちの数は過去50年ぐらいで考えたら飛躍的に増えた。しかし、しかし、まだ割れ目には何の解決もない。その割れ目に大胆に切り込んでいるのは、例えば本書。

保守の怒り (天皇・戦争・国家の行方)
西尾幹二

長年保守論壇の代表人として活躍されている氏ならではの発言といえると思う。もし氏以外の方がこの本の中身を言挙げされたのならば、おそらくいわゆる「コミンテルンの陰謀」などといわれて葬り去れた可能性も多いにあるのではないかと思う。

個人的には、保守アマチュアの人にはあまり薦められない。刺激が強い。一通り我が国の歴史、なかんずく大東亜戦争前史にある程度理解があり、そこと現代の議論が結びつけられる人とっては、膝を打つものである議論や、あるいは胸が締め付けられるような思いを抱く部分も多々あるものと思う。もちろん、そうとは思わないという反論も当然あってしかるべきだ。
 
ようするに、戦後史とは、実際のところ、非常に迂闊に、我が国の歴史、our historyをきちんと検証することなく、どうしたわけだか振って沸いた 「日本の歴史」に固められ、人々はそれを所与の土俵としてものごとを論じる、ある意味で仮の土台みたいなものなのだろう。
 
であるから、一旦、本来あるべくしてあった言論の数々を読みこなした後に物事を論じれば(つまり歴史の読み取り方に不誠実でなければ)、そこにはこれだけの起こりえるべくして起こる議論があり、それ故に今後への大きな懸念が存在する。
 
自らの歴史を掘り起こした後にしか、未来への展望は開かれ得ず、そうれであるならばその対応策もまた講ずることなどできはしないだろう。あたり前といえばあたり前だが、その当たり前のことを確認させてくれる貴重な一冊。
 
『保守の怒り』の目次 (西尾幹二先生の日録)
http://www.nishiokanji.jp/blog/?p=891

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