不必要だった二つの大戦: チャーチルとヒトラー | |
国書刊行会 |
昨日、パット・ブキャナンの
Churchill, Hitler, and "The Unnecessary War": How Britain Lost Its Empire and the West Lost the World
は非常に興味深く、影響力も小さくないだろう(地味ではあるだろうけど、なんせメインストリームメディアとは対極を行くから)と書いて、ふと翻訳はあったのだったか?と思って調べたら翻訳が出ていた。
それはそれで喜ばしい。喜ばしいのだが、出版が実に今年のはじめだったというのはちょっと驚き。そして、見ると何か感じが違う本に見えてしまうのはなぜ?
チャーチルとヒットラー、そして不必要な戦争、というタイトルはだいたいあってるけど、この表紙だと第二次世界大戦の欧州方面についての再評価、みたいな風に見えてしまうのが惜しいと思う。
この本は、原文のサブタイトルが語るとおり、
あの戦争はつまり大英帝国が帝国を失った
→アメリカが覇権を握った
でもって、その過程で西洋が没落していくルートが決まったも同然でした
→大英帝国はアジアを手放すことになっちゃったんだもん、
という構図が見えることだと思う。その意味で、欧州方面を語るだけの本ではないです。ただ、アメリカでの読まれ方は、まずは欧州方面から人々は読み出し語りだすんでそこに目が言ってしまうんだけど、だけど、この本のエッセンスは大英帝国が、あの大きな帝国が失われていく意味を西洋の没落と捉えていることだと思う。
ブキャナンは、あちこちでこの本を語っていて、何度もそれを言っている。あの大きな帝国をなくしたんですよ、と。でも、アメリカ人はそれが西洋の没落(アジアの勃興)のきかっけになっているといころまではなかなか読み込めない。アメリカ覇権パラダイム内で生きてるから。
で、この意味は、つまるところ日本がアジアで独立を誘発するような動きをしていった結果、と示唆されているともいえるわけで(そういう書き方はされてないにしても)、つまりつまり、日本の保守派が語っていることと軌道があってる。
そういう意図を読まれた方たちがおそらくこの本を翻訳に持ち込まれたんでしょうね、とも想像します。ご努力ありがとうございます。
しかし、であればなおのこと、
「大英帝国はどうやって自帝国を失い、西洋はどうやって世界を失ったか」
というサブタイトルを表紙に入れてほしかった。