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「戦後秩序からの脱却」と「満蒙は日本の生命線」

2015-01-15 22:51:16 | 参考資料-昭和(前期)

「戦後秩序からの脱却」なるスローガンを掲げていた(今もいる?)安倍政権だが最近めっきりそんなことは言わない。

でも応援団であるチャンネル桜回りでは今もこのスローガンは健在で、最近はヤルタ・ポツダム体制打破、とかいう表現も聞かれる。

さてしかし、私はだんだん、なんだかこのスローガンが「満蒙は日本の生命線」並になってきたかも、と思うようになってたりする。

戦後秩序からの脱却が何を意味しているのか第一次安倍政権時代からいろいろと疑問を持たれていた。当時、宮崎哲也さんが、戦後秩序ってアメリカの覇権の秩序なんだからそこからの脱却っていったら相当大きな話になるわけで、安倍さんはわかっておっしゃっているんだろうかという疑念を持ちます、みたいなことを言われていたのを聞いた覚えがある。まさしくその通り。

で、私としては、2014年にウクライナ問題で、なんの異論もなく「G8の一員として~」とか西側とか欧米諸国と足並みを揃え~と繰り返した時から、戦後秩序からの脱却プロジェクトは終了いたしました、と思ってる。

中露の急接近、共同歩調という事態が一番好ましくないと考えるのは日本だろうと誰だって思うから日本の出方には注目が集まっていたのだけど、そこで安倍政権が選択したのは、オバマ国賓待遇、尖閣問題についてアメリカの言質を取りました騒動だった。これはつまり、日本はアメリカのスカートにすがりつきましたってことだと私は認識してる。

 

■ 「満蒙は日本の生命線」

「満蒙は日本の生命線」は、松岡洋祐が1931年1月に言いだしたと言われている。wikiにはこうある。

満州事変以降よく使われたスローガンである「満蒙は日本の生命線」という標語は、1931年1月(満州事変が始まるのはこの年9月)の第59回帝国議会で、野党政友会の議員であった松岡が、当時政権にあった濱口内閣の幣原喜重郎外務大臣による協調外交を批判する演説で利用したのが最初。大ヒットして、龍角散のキャッチコピーに引用されたりもした。「咽喉は身体の生命線、咳や痰には龍角散」がそうである。

で、これが流行って、その後満洲事変が発生し、6か月ぐらいかかって満洲全土を軍事力によって制圧した時日本人は万歳!と思った、と。

しかし、なぜ「満蒙は日本の生命線」であるか現実的にきちんと討議されていたわけではない。このスローガンが流行った時そこは日本のものではない。日本はその一部に権益を有していたにすぎない。小田急線をもらったからといって神奈川県全土に権利が発生するわけもない。ところが人々は、このスローガン(だけではないだろうけど)をあっさり受け入れてしまう。つまり、気分として満蒙は私のものなんだ、になっちゃってる、と。

満洲事変は関東軍の暴走には違いないけど、メディアが作った妄想を国民が猛烈な勢いで盲信してがっちり後戻りさせなくした顕著な例だと思う。南京陥落、三国同盟もそう。

NHKスペシャルの『日本人はなぜ戦争へと向かったのか』/第3回「”熱狂”はこうして作られた」の中に当時のラジオの音声、録画映像がいくつか収録されているが、確かに乗せられそうな昂揚感がある。というか、乗せようと思って作ってる。軍部監修による戦場報告とか、今と変わらないといえば変わらないが、今より朴訥でそれが故におかしいような、しかしよく考えると怖い。こんな簡単に嘘がつけちゃうんだものな、と。

日本人はなぜ戦争へと向かったのか "熱狂”はこうして作られた [DVD]
ドキュメンタリー
NHKエンタープライズ


柳条湖事件が関東軍の謀略だと知っていたジャーナリストは当時から存在していたがそれはオフレコだった。一般人は太平洋戦争終結までほぼ知らされいない。山本七平の「ある異常体験者の偏見」によれば、終戦直後のマニラの収容所の中で早くも将兵らが柳条湖は謀略だったと語っている記述があった(軍の中では噂があったのか)。また、その同じ収容所であった体験として、中村大尉事件(一般住民が広く満洲での関東軍の行動を支持し、幣原の弱腰をなじるきっかけとなった事件)さえ軍の謀略なんじゃないかと疑ってる人がいたという記述もあった。

自分が信じていたものの多くが嘘だったとしった後、つまるところ夢から覚めた後、ありとあらゆるものが信じられなくなる状態にいた人は多数いらしたんだろうと改めて思う。

(右派の人が好む、戦後日本人はNHK他の左翼に洗脳されて戦前はすべて悪いと思ってる、ってのは半分正しいけど半分は嘘ですよ。戦争に行った人たちは一体何が起ったのかを知りたくて、あるいは知りたくなくて、いくばくかの時間過去の政権に対して不信感を抱いていた、これが根本的な理由だと思います。)

ある異常体験者の偏見 (文春文庫)
山本 七平
文藝春秋

 

それはそれとして。

■ 「戦後秩序からの脱却」と「満蒙は日本の生命線」

「戦後秩序からの脱却」と「満蒙は日本の生命線」、2つのスローガンの共通点はこんな感じか。

  1. 内容の具体性はよくわからない
  2. 実行に移そうとしたら非常な困難がともなう
  3. その困難は回避可能なのか、可能でなければどうするのか不明
  4. 困難を伴ってもやるだけのメリットはあるのか不明
  5. 両者の場合において、発話者は上記の件について詳述しない
  6. 従って、聞き手は内容を精査できない

そう、内容が精査できないから、命題を実行に移した場合のメリット、デメリット、可能、不可能が考えられない。そうすると、是非で判断するしかない。

「戦後秩序からの脱却」なんてなんだか嫌な感じよ、などと言おうものなら、反日扱いされる、みたいなムードが確かにあるけど、要するに精査すべき、実行可能性を検討すべき仕様になっていないので、議論にならず、反発するか賛成するかしかなくなるという仕立てなわけですね。

で、なんだかわからないから反対しとくわ、みたいに言えば、戦後史観から抜け出てないんだわ、あの人、みたいなことになりがち、と。

考えれば考えるほど、なんだかなぁなわけですよ。1931年において、「満蒙は日本の生命線」の一つの表現であるところの満洲事変が発生すると既にスローガンを受け入れた国民は、よーし、などと反応してしまう。しかし、実際には何が「よーし」なのか、この帰結がどうなるのか誰もちゃんと精査していない。

「戦後秩序からの脱却」は、でもまぁ少なくとも世間は特に熱狂ということはないので大丈夫かなと思ってみたり、しかし、あらゆる革命は少数の極端な人間が完成させるものだ、らしいので、注意は必要でしょう。

どうもチャンネル桜あたりを見えいると、安倍政権は長期政権が決まりだ、選挙で信任された、信任されたとホクホクしているような感じがあって、何か画策があるんじゃないだろうかと不安視してる。

私の安倍政権に対する現在の気持ちは、積極的なことは何もしなくてもいい、へんなことしないでくれ、という気分が優勢。

 

■ 参考記事

黒船の世紀―ガイアツと日米未来戦記/猪瀬直樹

 


 


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