サウスストリームファンの皆様、長らくお楽しみいただきましたが、サウスストリームはもう終わった話だぜ、ということらしいわけですよ。
バルバロッサ作戦 v2: サウスストリームやめました、トルコに行きます
バルバロッサ作戦: サウス・ストリーム計画停止発言の余波
■ これまでのお話
簡単にいえば、ロシアから欧州への天然ガスは、ソ連時代からポーランド、ウクライナを通して流れていた。次に、ウクライナが様々な意味から焦点となってきたため、ドイツがバルト海を通してパイプラインを施設(ノードストリーム)
現在は、ドイツ、ポーランドで約6割、ウクライナ経由で約4割という感じでロシアから欧州に流れている。下図参照。
しかしウクライナは今後も揉めることが予想されたので、そうなったらバルカン方面の欧州諸国は困るでしょ、ってんでサウスストリームをロシアが提案。普通に考えて、これはロシアにとってもいいし、バルカンの小国にとっても通過料は入るし仕事も増えるから両方にとって良い話だった。しかし、EUはこれを嫌い、話がまとまった頃にロシアが呑むことはないであろう法律を作って対抗。要するに、各国の思惑はどうあれ、EUは盛大にサウスストリームに反対してきた。ウクライナ危機が発生した時など、サウスストリームは中止だ、わははは、みたいな、なんだか勝ったかのような態度だった。
バルカン諸国にとっては全然いいことはないので、ブルガリア、ハンガリー、オーストリア等々の各国が頑張ってパイプライン続行を希望する意志を示していたのだが、アメリカのあのマケイン氏やらドイツのメルケルおばさんが各国を回ったりして、EUを取るかロシアを取るかで各国を脅しまくったりなんだりで、どこも動けなくなった(ハンガリーあたりは最後まで抵抗していたが)。
2014年12月になって、ロシア側が、サウスストリームはもうやめました、トルコに向かってパイプライン敷きますから欧州はそこからお買い求めください、と宣言。
■ 冗談じゃないからな by ガスプロム
とはいえ、そんなバカな、ロシアは欧州に売りたいはずよ、お~ほほ、とEU側は言っていたのだが、年が明けて行われたEUエネルギー委員会との会合でも歩みよりなし。ガスプロムのミレル社長が、ほんとのほんとに終わりだぜ、と再度を念を押した。
Gazprom announces final nail in the South Stream coffin
http://rt.com/business/222619-bulgaria-south-stream-gazprom/
とはいえ、そんなバカな、ロシアは欧州に売りたいはずよ、お~ほほ、とEU側は言っていたのだが、年が明けて行われたEUエネルギー委員会との会合でも歩みよりなし。ガスプロムのミレル社長が、ほんとのほんとに終わりだぜ、と再度を念を押した。
Gazprom announces final nail in the South Stream coffin
http://rt.com/business/222619-bulgaria-south-stream-gazprom/
その上で、ウクライナ経由のリスクは残り、ロシアはウクライナ経由じゃなくてトルコに持っていくことに集中する。
つまり、EUは、ロシア産ガスをバルカン諸国に供給するなら、トルコからのパイプラインをEUが自分で敷くか、でなければ他から持ってくる話を考えないとならない、という話。
(ウクライナの状況が改善されるならそこのパイプラインを残せることになるだろうが、ウクライナ状況が悪化すれば、トルコ経由しか残らなくなる)
(ウクライナの状況が改善されるならそこのパイプラインを残せることになるだろうが、ウクライナ状況が悪化すれば、トルコ経由しか残らなくなる)
露産ガスをトルコを通してひく場合、EUに残されたのは数年
http://japanese.ruvr.ru/news/2015_01_15/282140308/
http://japanese.ruvr.ru/news/2015_01_15/282140308/
■ まったくわからないのはEU
誰が考えても分かる通り、まったくわからない話をしているのはEU≒ドイツ。
ロシアのガスを買うのもいや、でもロシアに近い側はみんな買ってる。だってそれが安いんだもの。そこでウクライナで揉め事を起こす。ロシアざまー、みたいな。するとバルカン諸国は困る。
だったらサウスストリームを敷いてウクライナ経由のリスクを減らそう by ロシア。
いやだよ by EU。
こうやって考えて来ると、EUはバルカン諸国を振い落していっているってことなのか?と陰謀的なことを考えたくなる。
特に、ギリシャはユーロから出るんじゃないかとさえ言われている今日この頃。
■ パーセンテージ協定
なんかこう、いつの間にかバルバロッサ作戦(ドイツによるソ連侵攻作戦)どころじゃなくて、バグラチオン作戦(ソ連によるドイツ側への反攻作戦)に移っていた風。大方の目はソ連すげー、とポーランドからドイツの平面に釘付なんだけど、結構問題だったのはバルカン側で、ギリシャあたりをどうするのかにイギリス&アメリカが苦闘し始める。
バルカン側は、ハンガリー王国、ブルガリア王国、ルーマニア王国が枢軸国側、つまり私たちと同じ側だった。だからナチと一緒にソ連を攻めに行っていたんだけど、まぁそのドイツ軍にとっては自軍内に弱い部分を持ったも同然なわけで悩ましいところもありましたね、はい。
1944年8月ルーマニア、9月にはブルガリアで政変が起き、親独政権は崩壊、すなわちソビエトに降伏して枢軸側から離脱。
(右派の人たちは通常ここだけを捉えて、スターリンは東欧を占領したというんだけど、だけどその前のドイツによる支配も別に健全なものではない。また、ルーマニア、ブルガリアにしてみたら、結果的には敗戦国から戦勝国側に入ったわけで、負けが明らかになったドイツに付いて行く選択はなかったでしょう。また、ソ連に軍を出してスターリングラード侵攻に参加してるんだから、負けたら逆に軍事侵攻されることは想定内でしょう。)
10月、こりゃマズイってんで、チャーチルとイーデンはモスクワに行ってスターリンと談判して、勢力配分しよーぜ、と提案。これがパーセンテージ協定と呼ばれる。多少揺らぎがあるけど、だいたいこんな感じで影響力を保持しよう、となる。
UK/USA ソ連
ルーマニア 10% 90%
ギリシャ 90% 10%
ユーゴスラビア 50% 50%
ハンガリー 50% 50%
ブルガリア 25% 75%
ルーマニア 10% 90%
ギリシャ 90% 10%
ユーゴスラビア 50% 50%
ハンガリー 50% 50%
ブルガリア 25% 75%
簡単にいえば、イギリスはなんとしても地中海側を保持したいので、黒海側を捨てて、ギリシャを取ったってことですね。
この時点ではこれで取引成立って感じでそのまま冷戦に突っ込んでいくんだけど、その後EUになってギリシャもブルガリアもみんな仲良し、ってなことになっている・・・。
しかし歴史的経緯およびその記憶に基づく好悪でいえば、ギリシャは、ナチに恨みがあり、そのナチの子分になって荒れまわっていたブルガリアにも恨みがある。ブルガリアは、顔はロシアの親戚みたいなのに、常にドイツの手先となってロシアを襲うってな役回りになっている。ということで、ここの仕切りは、ギリシャが親ロシアで、ブルガリアが親ドイツ。
と、現在の局面を感えると、なんだかまた似た感じになっている気がする。ギリシャのドイツ(ナチ)からの解放はまたロシア(ソ連)によるのか?!
しかしそんなことをイギリス&アメリカが許すわけないじゃん、NATOあるんだし、なんだけど、今回はトルコが西に背中を向けて、いや俺は忙しいし、みたいな態度になってる。
やっぱり焦点はトルコだすよ、トルコ。
■ おまけ ヤッシー=キシニョフ攻勢
バグラチオン作戦による反攻の中ではマイナーな戦線扱いされていると思うけど、いやしかし、ウクライナ南部からモルドバを取り戻しにいった赤軍と守るドイツ軍の戦いはなかなか凄い。沿ドニエステル&モルドバのあたり、やっぱりこのへんこそが、オーストリアでもドイツ帝国でも、ナチスドイツでも、そして現在も、西側によるロシア世界またはその他世界への侵入にとっての前線なんだろうなぁとか思う。