今日5月8日は、ヨーロッパが欧州戦線終結を祝う日。明日5月9日はソ連圏でのビクトリーデー。
どうしてこの違いが生まれたかは、実のところ降伏のもっていきかたが既にして後に西側と言われることになる中心部である英米独がソ連を勝利の主役から外そうと画策していたからこうなった、と言えると思う。
でも、ともあれ、時差も絡んで欧州とソ連の勝利の日は1日ずれることとなり、その後もずっとそれできている。いずれにしても、両方ともナチスを倒したことを祝していることには変わりはなかった。少なくとも一般人レベルでは。
1945年5月8日午後22:43(欧州中央時)に降伏の署名が行われました、というロシア大使館さんのtweet。
#OTD 8 May 1945 at 22:43 CET: exact time when #WWII was over in Europe. German Instrument of Unconditional Surrender was signed by representatives of Wehrmacht, Supreme High Command of Red Army & Allied Expeditionary Force. Following day, #May9, was declared #VictoryDay in USSR pic.twitter.com/1HiO53ngtP
— Russia in RSA 🇷🇺 (@EmbassyofRussia) May 8, 2022
■ ナチ2.0
フランスでは、第二次世界大戦の終結から77周年を迎える記念行事が行われていた。
France to mark 77th anniversary of end of World War Two on Sunday
いつものように、ソ連/ロシアは関係ない。
だがしかし、この人たちは何を祝っているんだろう。世界を仕切る枠組みが出来て西側優位になったことを祝っているのだろうか?
結局のところ、ヨーロッパもアメリカもナチが好きで、ソビエトが嫌いだった。ヘイトも好きだし、ジェノサイドは18番、秘密の暴力組織も大好きだから、後にNATOを作り各国の政治を無茶苦茶にして、現在のような第四帝国の達成に尽力した。ヨーロッパが1945年に終わった戦争を、対ナチ戦争の終結という意味でかみしめることがなかったのはまさに当然だった。もし、ナチとの戦いこそ問題だったのだというのならソ連の人々に敬意を払えないわけもない。
戦後の体制はナチ2.0だったんだなと、毎週結論してる気がすると何度も書いてるけど、否定できない。
そして、何度も書いてますが、どうしてこんな事実関係すら認められないのだろうという不思議は、認めたくないからだ、という以外の理由はなかったなとも思う。
WW2の決定的な勝者はソ連だよと人々が言うの巻
ドイツとその仲間たちのほぼ75%は、東部戦線で、すなわちロシア攻めの失敗によって失われた。
ナチを破ったのはソ連だ、あるいは総称としてロシア人だ、と従軍した多くの人たちが言っているにもかかわらず、上の方はそうはせず、なんとかして、ソ連/ロシアを外して、アメリカまたは英米が成し遂げた何者かにしようとした。
その結果が、この認識。「あなたの意見では、1945年にドイツを破るにあたって最も貢献したのはどの国だと思いますか」という問いに対する、フランスのifop調べの結果。
■ ヨーロッパの日
5月9日は、ソ連圏の人にとっては「ビクトリー・デー」だが、ヨーロッパではこの日を「ヨーロッパの日」と定めている。
ヨーロッパの日は、60年代に定めた時には5月5日だった。しかし、1985年に、5月9日にした。
wikiにこの経緯が説明されていた。wiki
ところが欧州共同体の指導部は自らのヨーロッパの日を、シューマン宣言が発表された1950年の5月9日を記念するものとして定めた。シューマン宣言ではフランスと西ドイツの石炭と鉄鋼の共同管理をうたい、そのため最初のヨーロッパの共同体組織である欧州石炭鉄鋼共同体の創設につながった。この出来事が欧州共同体におけるヨーロッパの日として記念するべき日とされ、1985年のミラノ欧州理事会において5月9日を欧州連合の旗の日とされた。
ではその1950年の「シューマン宣言」とは何か。
1950年5月9日にフランス外相ロベール・シューマンが、フランスと西ドイツの石炭・鉄鋼産業を共同管理することをまとめた声明。ジャン・モネによる提唱と道徳再武装による調整に影響された。
道徳再武装(MRA)は、日本にも非常に関係がある。
1950年頃、一般人にはまったく知らされることもなく、各国のエリートおよびエリート予備軍みたいな人たちが集められて、MRAの世界会議みたいなことが行われ、後に西側となる各国が、和解して、一致団結してコミュニズムに勝たないとだわ、ということになる。これが結局、日本の片面講和に至る仕掛けの1つだろうと思われる。
香港とアンチ運動の限界
中曽根&戦後政治とMRA
だがしかし、冷静に考えれば誰でわかる通り、
これってつまり、日本の(当時の)過去として問題にされるべきなのはアメリカ以上に、中国であり、ロシアであり朝鮮でありといった国々のはず。あるいはドイツであればそれはソ連ということになる。しかし、そこを敵として、私たちだけで和解しましょうという仕切りなわけだから、この運動は、道徳どころか、不道徳の奨め大会のようなもの。
ということで、これは戦後秩序を一般人のあずかり知らぬところで作っちゃった秩序と言えましょう。当然のことながら、強い影響力を持った人たちがやってなければこんなものが成り立つわけもない。
そして単なるモラルの問題だけではないのは、これを表カンバンにしつつ、NATOが作られていくから。
このロベール・シューマンという、ルクセンブルク生まれでドイツで教育された、フランスの外相、首相である人が、欧州連合、欧州評議会、NATOの立役者となり、今日では、欧州連合の父などと呼ばれることもある。
ただ、シューマン宣言と言われるけど、構想はむしろジャン・モネという調整役みたいな人達によるものであるようにも見える。
そして、モネがやりたがっていたことは、要するに、ヨーロッパをUnited States of Europeにしようするものらしい。だから順番にいろんな委員会だのなんだのを作って権限移譲にならしていったって感じみたいだ。
だがしかし、そもそもその「ヨーロッパ」ってどこからどこまでなの?というのがとても問題でしょう。1950年代の西ヨーロッパのことならそれほど大きな問題にはならなかっただろうけれど、東に拡大していけば必然的にスラブ圏やドイツ支配を望まなかった人々のところに入り、ロシアにぶち当たる。
■ ナチな人々の復権
ということで、5月9日をヨーロッパの日にしようとした人々に、5月9日のビクトリーデーを打ち消そうという底意がなかったと考えることには無理があるように思われる。
そして、こういう赤裸々な発言をする人が現れる。昨日、偶然twitterで見つけた。オーストリアの人らしい。
5月8日はヨーロッパの解放の日、5月9日はヨーロッパの日
ヨーロッパにはソビエトのビクトリーデーの日なんかない!
スターリンとプーチンのフェイクな日なんか祝わないように!
フェイクはお前やろ、って話なわけですよ。では、そのヨーロッパの解放はどうやって成り立ったんだか言ってみやがれ、でしょう。
この人は下品だけど、しかし率直に「ヨーロッパ」なるものが目指している方向性を述べているとも言えると思う。
こうやって、あるいは、こうまでしてソビエトがヨーロッパをナチから解放したことを否定したい強い強い水脈があるんだなと、改めて理解する。狂ってる。
私は、ソビエトの体制がどうあれ、ヘイトをまき散らしたファシズム体制の量産とその後の産業的大規模殺人の敢行としかいいようのないあのナチの動きを止められたことを喜ばなかったヨーロッパの一般人が多数派だったとは到底思えない。そして、倒すべきじゃなかったなどとはまったく思わない。
ドイツ、ソ連軍捕虜の記録をロシアに渡す&産業的大規模殺人
https://blog.goo.ne.jp/deeplyjapan/e/527a2dd9fa847f6009b945590bcee377
https://blog.goo.ne.jp/deeplyjapan/e/527a2dd9fa847f6009b945590bcee377
1945年4月11日:ブーヘンヴァルト強制収容所解放
ヨーロッパは本当にこのままでいいのだろうか。
というか、ヨーロッパだけじゃなくてMRA以降のナチ組の行方はどうなるのだろう、と考えるのが適切か。
一体全体、西側諸国って誰の言うことを聞いて運営しているものなの?
■ オマケ
ナチ2.0の犠牲者は1.0と同様に多い。
He is correct. pic.twitter.com/2iSHaW0uvn
— Tara Reade 🐎 (@ReadeAlexandra) May 8, 2022
■ オマケ
5月9日の黒海沿岸のヘルソン。
ヘルソン。ナチ支配下で何年もこれができなかった。 https://t.co/AGSqus2AgB
— DEEPLY JAPAN (@DTJTakumi) May 9, 2022
その記事は読んでないけどわかります。その線は冷戦期から一貫して日本の中で語られてる。
軍オタだけじゃないですよ。
アメリカはソ連が嫌いだったんだから本当は日本と組めばよかったのだ、
それをさせなかったのはルーズベルトが共産主義者だから
みたいな展開が続く。
日本には欧州戦線の本はあまり入ってきてないので、適当なことが言えたとも言えますね。
また、そもそもロシアは帝国時代から軍事に優れた国で、技術力もあって重化学工業もあって、近代のどの時代も兵器はいいものもってる、将軍も優秀という基礎がないことも問題。
逆に、アメリカは陸上の大きな戦争を指揮したことがないので実はいろいろ欠陥がある、という知識がない(欧州史知らないから)のも問題。
そう簡単に一部日本人の妄想が終わるとは思えないので、じいさんは放置して若い人に伝搬しないよう頑張りましょう!
『ロシアの「対独戦勝記念日に勝利宣言」はナンセンスの極み!そもそもロシアはドイツに勝っていない。』
箇条書きするとこんな内容。
・アメリカのレンドリースなしにはソ連の戦争遂行は不可能だった
・一大転回点となったスターリングラード戦すら、インド洋~イラン経由の補給ルートをもし日本海軍が妨害していれば、ソ連は勝てなかった
・結局WW2において、欧州・太平洋の戦線に膨大な物資装備を供給・展開しえたアメリカこそが真の勝者
・アメリカは欧州の終戦時、すかさずソ連を攻撃するべきだった(中国の国共内戦終結時も同様)。独裁者スターリンと毛沢東に対して慈悲はなし
・世界はアメリカを頂点とした民主主義陣営が主導する世界秩序のもとでこそ平和・自由・安定が実現する
…まあ、軍事オタク的な筆者の個人的願望と政治イデオロギーが煮込まれて凝ったような戯言の類いです。
しかしある意味驚きなのは、ナチと大日本帝国の枢軸コンビに対して、前提となる批判的な視点をさほど向けていないことです。字数の都合があったのかもしれませんが、にしても「あわよくば勝てたのに」的な願望の方が行間から強くにおうのが、なんとも気持ち悪いです。