トランプは年次の演説もさせてもらえないし、いろいろ手詰まりなのか、わざとなのかよくわからない混乱状態にあるわけですが、ベネズエラも面白いことをしている。
この政変はまったくのアメリカ主導で、ようするにサーカシュビリを付けてうぉーとか言ってる状態と同じなわけで、またいつもの奴かと呆れている人たちが多数いる中、トランプ政権は、エリオット・アダムスというおじいさんをベネズエラ問題の特別公使に指名。
イラン・コントラ、ニカラグアetc.と、他国の政権のひっくり返し事件の主要なアーキテクトの一人として名高い人なわけで、えええ???という反応しかない。
ついに惨い政変劇の本職を投入してきた格好。
Trump-bashing Iraq war architect Elliott Abrams to lead US regime change in Venezuela
https://www.rt.com/usa/449756-abrams-pompeo-venezuela-iran-contra/
どうなるのか全然わかりませんが、「いいか、アメリカは帝国なんかじゃない」の意味を、「そうだわ私たちは正しい共和国よ」と思ってトランプを支持したある種ウブな人々に、「そうだ、帝国じゃない。アメリカはマフィアなのだ」と教えてくれたみたいな恰好。あははは。
実際問題、中南米のあの様を見ずにアメリカを語るのは間違いですね。中東のドンパチは規模が大きいので注目されてきたけど、汚さ、惨さ、絶望的なマフィア感という意味では米大陸を見ないと話にならない。
そういうアメリカの姿を追い続けたウィリアム・ブルムは昨年12月に亡くなったが、この人の著作は読み継がれるでしょうし、今こそ予習、復習にぴったりよといったところ。
Killing Hope: Us Military and CIA Interventions Since World War II | |
William Blum | |
Zed Books |
Killing Hope:バックラッシュ論の先に進めるのだろうか
■ ロシア、中国、イラン、トルコ、変化なし
ベネズエラの政変の周辺は現在のところその後大きな変化は見られないようだ。
ロシア外務省は、ラブロフ外相が、丁寧に、おかしいです、これはと言ってまわっていて、あちこちで引用されまくってる。
プーチンは一昨日ベネズエラのマドゥロ大統領と電話して、ロシアとベネズエラは「様々な分野」で引き続き協力すると確認した。
Telephone conversation with President of Venezuela Nicolas Maduro
http://en.kremlin.ru/events/president/news/59724
その中でプーチンは、次のようにいったとクレムリン公式の記事にある。
- 外部からの破壊的な介入は、国際法の基本の規範に対する大きな違反である
- 憲法秩序の中で解決を模索し、平和的な対話を通じてベネズエラ社会の中の差異を克服することを支援する
He emphasised that destructive external interference is a gross violation of the fundamental norms of international law. He spoke in favour of searching for solutions within the constitutional framework and overcoming differences in Venezuelan society through peaceful dialogue.
これがほぼそのまま新華社に出ていた。
Putin supports legitimate Venezuelan authorities
http://www.xinhuanet.com/english/2019-01/25/c_137772086.htm
戦線を整えているっぽいが、実際問題、これ以上何を言う必要があるだろう?と言ったところでしょう。
でもって、これに対してアメリカのメディアがかみつけばかみつくほど、自分たちがマフィアに落ちる。
それでも、ベネズエラは社会主義者の政治が悪かったんだわ、汚職の天国よ、能力が低いのよ、これでベネズエラ市民はすくわれるのよ、とかなんとか書けば書くほど、愚かな人以外は、まぁアメリカは中南米じゃマフィアだからなと納得するという展開にならざるを得ない。
別の趣としては、ロシアと中国が大きく投資してる!! ってのもあるが、他人が大きく投資しているので、では政変かけて盗もうってのもどうなの?といったところ。
どこをどうつついても笑える仕様でどうしたもんか。
■ イラン
ベネズエラに対する制裁は、トランプ政権になって極端になってこうなったが、それはイランと同期している。同じようにSWIFTから放り投げたからね。
というところで、イランの動向が気になるところ。
ザリフ外相はベネズエラの外相と話している模様で、イランはベネズエラの人々と政権を支持すると明確に表明している。
Zarif: Iran Will Support Venezuelan Government and People Against Conspiracies
https://sputniknews.com/middleeast/201901261071835135-zarif-iran-venezuela-government/
さらに、スプートニクの言い方だと、ベネズエラ政府と野党グループ(複数いる)の対話を促そうという提案が、メキシコとウルグアイ政府から出ているらしい。
They have also discussed proposals from the Mexican and Uruguayan governments to reinforce local dialogue and the use of diplomatic means to settle disputes between the Venezuelan government and the opposition groups.
いいんじゃないか。中南米グループの中で話し合いを設定できるようになるのはいいこと。
ある種のアスタナ会議みたいなのができると、「モンロードクトリン」なる俺様宣言を破ることに繋がっていく。
このへんはお楽しみ。
■ コロンビア、基地は貸さないよ
隣国のコロンビアが、ベネズエラ侵略のために基地は貸さないからね、と言っている模様。
Colombia Won't Provide US With Bases Needed for Invasion in Venezuela
https://sputniknews.com/latam/201901261071833500-colombia-usa-venezuela-invasion/
これはグッドニュース。
とはいえコロンビアとベネズエラの国境は長いのでそこから出入りが簡単だってところが非常に問題なので、ぬか喜びはできない。でもグッドよ、コロンビア!!
これは、トルコがイラク侵略のために基地は貸さないと言い出して大騒ぎになったことを思い出させる。
そういえば、NATOのセルビア攻撃の時にも、ハンガリーが嫌がり、ギリシャが大抗議しまくって騒ぎになった。
これができて初めて独立的な人間たちだってことですよね、ほんと。もちろん、日本人こそ考えるべきテーマですよ、これは。
■ オマケ
振り返ってみるに、12月中旬にロシア軍がTu-160をベネズエラに飛ばしたというので大騒ぎになったことがあった。あの時、米国務長官というかCIAの悪い奴というかのポンペオは、ロシアとベネズエラを糞みそに言っていた。
ベネズエラにロシアのTu-160他が飛んで行って、ベネズエラ軍と交流した。それがイヤだといって米国務長官というかCIAのおじさんであるポンペオは、2つの腐敗した政府(ロシアとベネズエラ)が公金を使って無駄なことをしている、と憤激してみせた。
バカみたいとアメリカ人でさえ思うだろう。公金使ってアメリカを無茶苦茶な国にして、世界中を混乱させているのはあんたらでしょうが。
中国月の裏側へ &文明的選択
この時、Tu-160という目立つものに焦点があたったわけだが、同行していたのはアントノフという巨大な飛行機とイリューシンの普通の旅客機。
誰が乗っているんだろう?という疑問はわいたもののそのままになっていた。ひょっとして、セキュリティーの専門家とか軍人とか、いわゆるアドバイザー系の人たちとか装置とかが荷物だったのではなかろうか?
カラー革命型で来る場合、中東のすぐに戦場になるパターンとは異なり、問題は市街での悶着。
これをうまくマネージできないとマイダンのようなことになる。あれはもう、ヤヌコビッチ大統領が軍を投入して制圧していい事態なのに、だってそんなことしたらアメに怒られる、惨いじゃんそれみたいなぬるぬるを決め込み、かつ、オバマが、自国民に銃を向けるのは文明的じゃないだったかなんだったか適当なことを抜かして事実上ヤヌコビッチに圧力をかけた。これが、崩壊へのトリガーだったと私は考えてる。だからオバマが呪わしい。
だからスキルのある人たちが必要だし、どういう情勢なのか正確な情報がアメリカを介さずに出て来ることも重要。つまり通信設備も重要。
ということで、そういうものを持っていっていたのではなかろうかと想像してみる。そうでした、とは誰も言わないと思うが。
であるなら、まぁ一石二鳥ではあるけど、Tu-160の派手さの方はカバーでしょう。こっちも本職の投入ですね。
アメリカのベネズエラを含む中南米工作は昨日今日始まったものではなく、万般やりおおせているほどなんですよ。
ただ、昔のようにいかない。なぜなら、対抗者が組んで存在し、そしてメディアの信頼が薄れ、人々は目が覚めているから。
別の言い方をするなら、トランプを含むアメリカの関係者たちの頭は古いんです。トランプも例外じゃない。しょせんはブーマー。
最後に着手すべき難関ですから、今はそっとしておきたいのがトランプの本音じゃないですかね。それを前倒しされると困っちゃうわけですが、困ったときはドンドンやらせるのが流儀。
裏でロシアと中国とその他が足を引っ張って介入を頓挫させれば、潰すチャンスが早まるって計算もトランプにはあるような気が。
トラさんの動機ですが、私はこれだと思っています。
「我は我がとがを知る。我が罪は常に我が前にあるからなり(旧約聖書詩篇第51篇3節、ダビデ王の懺悔の歌)」
信者さんには重要なテーマらしいです。例えば、この本。
https://www.amazon.co.jp/ebook/dp/B00IN7Y1MU
甘すぎかもしれませんが・・・。
カリブ海は「ディープステート」なるもののじゃなくて米+欧州の過去何百年かの人々全体の金城湯池でしょう。
石油+ドルによる支配構造を守りたいというのは、トランプでもオバマでも一緒。
だから、ベネズエラの石油の流れを支配できなくなるとしたら、それはとてつもなく大きなことになります。だから、そんな気はない。が、本当にできなくなるかもしれない、というのが現状だと思います。
おっしゃる通りだとは思いますが、でも悪あがきは止まらないと思います。
問題は経済というよりものの考え方じゃないですかね。個々のアメリカ人という意味ではなくて集団として、共存するとか、互いに相手を尊重するという考え方が根底からなくなって蹴落とそうとしすぎ。それで自分の良さを自分で破壊しているようなもの。