NHKの国際ニュースの判断基準というのはよくわからないものがあるけど、トルコについてはフォローすることにしてるらしくはある。意味不明なまでに出してくる。
関係正常化をアピールってそれはもう半年前の話だと思うのだが、こんなタイトルの記事がサイトにあった。
ロシアとトルコ 両首脳が会談 関係正常化をアピール
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170311/k10010906991000.html
ロシアのプーチン大統領とトルコのエルドアン大統領は10日、モスクワで首脳会談を行いました。
会談のあとの記者会見で、プーチン大統領は、シリア情勢をめぐり、「ロシアとトルコの仲介で停戦が達成されただけでなく、政権側と反政府勢力の直接対話が始まった」と述べ、政治解決に向けた両国の役割を評価しました。
この他、
一方、エルドアン大統領は、ロシアから天然ガスを輸入するためのパイプラインの建設計画が進んでいることを歓迎したうえで、ロシアの支援によってトルコに原子力発電所を建設する計画についても、後押しをしていく考えを示しました。
ということで何も新しいことがない。
むしろこの会談は、「それにもかかわらず」関係正常化を壊しませんアピールだろうと私は思う。
何がいいたいかというと、トルコはシリア内で先月からまたほとんどまったくの侵略者状態になっていたから。それにもかかわらずトルコ、イラン、ロシアの協力体制は続いていると対話を行っている中でもこうなのね。で、結果的に、ロシアとアメリカは双方の軍がクルドを挟んで事実上協力しているような恰好になっている。といってそれが良い方向なのか否かはまだ帰趨は読めないところがあるのだが。
で、どこで失敗しても失脚したりしないエルドアンってのももはや特異点みたいな人だと思う。
エルドアンのモスクワ訪問が10日で、その前日には、ドイツ外相ガブリエルさんがモスクワ訪問をしてラブロフ外相、プーチン大統領と会っていた。
と、これはニューズウィークが伝えている。なんでロシアに軍備強化をけん制するんだよ、ってな妙な書き方ではあるのだが。
ドイツ外相、新たな軍拡の可能性を警告 米ロの軍備強化をけん制
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/03/post-7142.php
誰がどう考えてもまぁわざわざモスクワに行って、お前のせいで危険だ、と牽制することが主要な話題のわけもなく(記事書く人も頭使えば?)、ドイツの外相は、その前の外相と同様、モスクワとの調整をする方向が現在のタスクだろうと思う。今回も外相はSPD(社会民主党)の人。
で、クレムリンのサイトの文言を確認しても、ガブリエルさんは、両国間には難しい問題がさまざまありますが、私たちは欧州の平和と安定を確保するというタスクを引き受ける必要があるのです、みたいなことを言っている。私たち、ですからね。お前だけ、じゃないですからね。
http://en.kremlin.ru/events/president/news/54018
そして、ついこの間までドイツの外相だったシュタインマイヤー氏が新しく大統領に選ばれたので、氏はモスクワ訪問を計画していますよ、と現外相が言及しているというのは、ニューズウィークの記事とは正反対に、むしろ、私たちの関係は悪くありませんアピールである可能性が高いでしょう。
このシュタインマイヤー大統領は、2015年5月にスターリングラードを訪問し、かなりエモーショナルな謝罪をした人。
私は、ドイツがここに、この都市に、全ロシアに、今日ウクライナ、ベラルーシと呼ばれるソビエト連邦のあらゆる場所に、そして全欧州大陸にもたらした計り知れないほどの苦痛に対し、ドイツを代表して謝罪を届けるためにやってきました。
と戦後70周年を記念した2015年に言明した人。
ドイツ、ロシア外相スターリングラード訪問
と、その同じ9日にはもう一人モスクワでプーチンに会っていた。イスラエルのネタニヤフ首相。
共同会見では、ネタニヤフがイランがどんなに悪い国かを語り、大昔ペルシャがユダヤ人を崩壊させようとしたのなんのというと、プーチンが、
「それは紀元前5世紀に起こりました。」「私たちは現在異なった世界に生きています」
と言って、話をうっちゃったというので話題になっていた。あはははは。
Putin to Netanyahu: Don’t judge Iran by 5th century BC, we live in a different world
https://www.rt.com/news/380061-putin-netanyahu-iran-israel-syria/
言ってやってよ、って感じですね。この時間を無視した態度こそハルマゲドン幻想持ちの特異性だよなぁとか私はしばしば思う。
で、それに対して、イスラエルは特殊枠だからとばかりに、その通りその通りという態度じゃなくて、お前何言ってんだよ的に言い返せるリーダーは世界にはとても少ないと思う。
ネタニヤフは自身はイスラエル生まれだけど、おとーちゃんはワルシャワの人なので、100年前は要するにロシア帝国内の人だったわけで(ポーランドのワルシャワ側がロシア支配地域)、そういう意味ではプーチンを含むロシア人にとってこの人のような多くの東欧系のユダヤ人は、多くの場合完全に敵であるとはいえ、それでもフォーリン(見知らぬ)ではないというのも奇妙な影響があるだろうな、としばしば思う。
考え方、ロジック、リーズニングが直ちにわかっちゃうし、比喩やエピソードにも共有のものがあろうだろう。そして、プーチンレベルの人たちはその上に、何がどうなってどうしてこれら東欧ユダヤ人が発生していったかも知ってるし、どのへんの奴らが集団になって、それを煽ったのがあのへんで、その残党がこうなってああなってみたいなのも単なる知識としてだけでなく、具体的に感情の届く地理的範囲の出来事として知っているわけだからなぁとか思ってみていると面白い。100年後、なんでお前は黒海の向こうにいるんだよ、みたいな。
というわけで、別に目立った事件があったわけではないのだが、この集まり方は何でしょうと気になる。まったく関係ないってことはないでしょう。
で、やっぱりこう、CIAの盗聴ネットワークがより届きにくい(完璧ではないにせよ)、ネットワーク圏外でしか話せないことを話したんだろうかと想像してみたいくもなる。こんな世の中だし。
ウィキリークス、CIAの「ハッキング技術」文書公開