沖縄の玉城デニーさんが希望の党には加わらないと立場を鮮明にしていた。その他何人かの自由党、民進党の議員も、憲法と安保法制を踏み絵とした希望の党に加わらないとしたようだ。
共産党の志位さんは当日から、こういう事態にもかかわらず野党共闘で合意したことの線を守る候補との共闘は続けると発言していた。腸煮えくり返っているだろうが。
市民連合も1日ぐらい放心状態だったようだが、立場をはっきりさせた。
市民連合、希望との共闘否定「安保法制肯定ありえない」
http://www.asahi.com/articles/ASK9Y5D7MK9YUTIL02T.html
政党に関していえば、福島さんがうまくまとめていた。
福島みずほ認証済みアカウント @mizuhofukushima 9月28日
政党には、党員がいて、その党を支持したり、支えてくれる人たちがいる。もっと言えば、国民のために、みんなのためにある。重要なことは、せめて党員で、しっかり議論し、合意形成を図るべき。トップダウンで、党の命運、進路を決めることには違和感がある。党は議員のためのものではない。
要するに、前原は政党のなんたるかもわかってない、ただのジャパンハンドラーの現地工作員でしたって話だと思うんですよね。だから、むしろ、この人を党首になんかした時点で民進党はバカを晒した。宮台、神保両氏、および一部ジャーナリストはこのあたりを多少読んでいたように思う。何かが不穏だったわけでしょう。
潰すために党首になった前原と不毛な20年
■ 自民党は深い
というところで、では一体この「偽の希望事件」(と私が名づける)とは何だったのか。
2つの側面が考えられるのではないか。
1つは、安倍ちゃん内閣が国会も開けないほど弱っているその状況に至るにあたって、重要な役割を果たしたのはいわゆる野党4党の連合+市民各団体の連合だった。
つまり、この構図だと、仮に安倍が総選挙で勝ったとしても、いわゆるリベラル左派の存在感が増す。
もう1つは、選挙後のこと。前にも書いた通り、リベラル左派が結集しても自民党が負けるところまで追い込むことはできなかったでしょう。1/3狙いがせいぜい。
だから、総選挙は、モリカケ疑惑回避解散であっても、ともあれ自民党は勝ったでしょう。すると、
- 総選挙は安倍ちゃんが勝ち、11月の日程をこなす。しかし、そこから通常国会までは2月あまりなので、まだまだ安倍疑惑は忘れられず国会紛糾。→ ?
- 総選挙の勝ち方がギリギリだったため安倍ちゃん首班になれず→ ?
いずれの場合も、次の誰かが自民党の顔になる。誰? 岸田ってどうでしょう? 岸田一回休みの理由はこのへんだったりしてな、など思ってみたり。
要するに、岸がかき混ぜた混乱を宏池会が収集するという、自民党的には別に不思議でもないやり方が見えなくもない。自民党と安倍一派は同じではない。
そうなると、現在の憲法論議も北朝鮮問題も、方向が変わる可能性がある。
となると、今回希望の会なる何がなんだかわからない会に引き寄せられていった、中山夫妻やら松原やら長島だとか前原といった、過去十数年の妙な動きのキーパーソンたちは存在の意味を失う可能性がある。
そこで、折からの「安倍を倒せ」スローガンを換骨奪回して、民進党を乗っ取って、リベラル派を振るい落として、極右というよりジャパンハンドラーズ直営店みたいな感じの党を作ろうとした、ってことではなかろうか。
うまくすれば、こうなる、と。
いま起きていることは「2012年・野田自爆解散」の再演。野田が前原、日本維新が希望へと役者が変わっただけ。2度の自爆選挙で、共産党以外の反自民勢力は壊滅し、対米(軍)従属を競い合う極右二大政党制が完成する。次の目的は核の地上配備による中国・北朝鮮との撃ち合い体制の確立=米軍の安全
■ 直営店は上手くいくのか
ジャパンハンドラーズ直営店(略称ジャパ直)は、平生からメディアを抱き込んでいるので、今回も主流メディアが、いつの間にか安倍ではなく百合子こそテーマみたいに話を作ってきている。しかし、誰が代表者なのかもわからず、もし選挙に勝ったら誰を首班指名するかもしれたものではない政党に、一体誰が投票できるのだろう? まぁ選挙民が利口でないから流れる人はいるだろうがそれにしたって仕立てが悪い。
また、テーマは安倍を倒せなのだ、と言いつくろっているが、日本人はすべて、安倍を倒しても改憲と安保法制(そして多分アベノミクスなる出口なしの無責任戦略)がそのままなら意味ないだろうとは考えられない人間なのか、というとそうでもない。
私は過激なリバタリアンで、社会主義には反対だが、次の選挙では、少なくとも、比例は共産党に投票するしか選択肢はない。小池のポピュリズムは全体主義への道だ。安倍と野合して憲法改悪を目指すだろう。国家は国民の道具だということは、繰り返し強調しなければ、国民は政権の奴隷になってしまう。
さらに、そもそも民進党で個人的、地盤的に選挙に強いのは右派ではなく左派分類の人であるように思う。そうなると、偽の希望は強弱まちまちのタマをかき集めて選挙戦を戦うことになる。
対して、今回偽の希望にふるい落とされた人たちは、冒頭で書いたように、むしろ支持者との信頼関係を強めたので、無所属で出ても、あるいはまだ公党民進党は存在するんだからその名で出ても通る可能性が高まっのではなかろうか。野党共闘もサポートするでしょう。
志位和夫認証済みアカウント @shiikazuo 9月28日
安倍政権を退場に追い込む歴史的チャンスの選挙。政治姿勢、北朝鮮、消費税、憲法、核禁条約―争点を堂々と提示し、安倍自民党と正面対決の論戦を行っていきたい。民進党の希望への合流は共闘への重大な背信行為だが、この状況下でも共闘の立場に立つ政党、議員、候補者とはしっかり協力を強めたい!
大人ですよ。共産党は歴史認識において私の天敵だが(ソ連、ロシア革命、スターリンの評価問題)、志位さんは国軍にとって大義がどれほど重要なことなのかを理解している(血中陸軍濃度の高い)数少ない議会人というのが私の評価なので、ここもまた、ああ、関東軍の将校の中にも後で考えてみて、歯噛みする思いの人はいただろうなぁとかそっちの方を想像してしまう。
■ まだまだ
というわけで、まだ今後波乱はあるかもしれないが、私には今のところ「偽の希望事件」によって偽の希望が現実の選挙結果を大きく左右するような飛躍を見せる図が想像できない。
あと、この程度のことは、立憲野党の連合をひっさげたグループは読んでいたのではないかという気がする。立憲野党の連合は、表面的には共産党、社会党が主体に見えるけど、成立過程を見ても、法律家集団、学者集団等々が多数この周辺にいると思う。
なぜなら、彼らは現在の政権(およびそれより危ないジャパ直)がやろうとしていることが法律の改変とそれに至る発言の変化から、どれほど危険で無謀なことか十二分に見えているわけでしょ。
「憲法改正」の真実 (集英社新書) | |
樋口 陽一,小林 節 | |
集英社 |
だからこそ、どうしてもこの動きを止めなければならないと思い定めて、まとまった票を持ってぶれそうにない共産党を反撃キャンプに選んだって感じじゃなかろうか(小林節さんと赤い小池さんが一緒に動画に出るとか、普通に考えると驚くべき事態だが、あえてやったのはむしろ学者さんたちの側だと思う)。
ただ、それを全面に出すと反共でやられてしまう。これは戦前の歴史を見れば明らかでしょう。あれは共産主義者だから当局から睨まれたのではなくて、捕まったので共産主義者とされた、というべき事態が多数含まれている。
また、学者さんたちが今まで考えられないような動きをしている。過去2、3年間、図書館で論文書きしていた人たちが表に出て様々なところで講演してる。つまり、これは一過性の問題ではないとこれらの頭脳は判断しているということ。
20170503 石川健治
で、頭脳系の人たちというのは見た目は孤独な人でも、国家機構を動かすような仕事についている人々たちが同級生なわけでしょ。だから、その人たちが地道に、すまして動いているとしたら、通常の社共の支持だけでないものが水面下にたまっているということになる。
逆にいえば、ジャパ直が恐怖したのはこれらの動きなのかもしれない。
■ オマケ1
このブログの通常のおっかけ範囲からすると、岸ポンの一回休みというのは注目せざるを得ない。個人的には岸ポン好かんのやけど。
■ オマケ2
憲法学者はみんな左翼だ~とか言っているおバカな人たちがいますが、現在表に出て精力的に活動されている人たちはむしろ自民党政権と協力的だった方たちが多いのでは? が、なぜこうなったか。その一つのエピソードとして、東大の石川先生が中野晃一先生との対話の中で、あるエライ先生が現在の憲法改正案に大反対の立場を取ったきっかけはアベノミクスだとおっしゃっていた。つまり、財政こそ軍事国家のために突破しなければならない何か。財政こそ国家意思なわけですね。安倍はここを突破する気なんだとお考えになったということらしいかった。そりゃもう切迫しますがな、って感じ。
やっぱり、頭のいい人たちはマスコミが作った日本史じゃない日本史を抑えているんだなと、今回の騒動を機会によくわかった。喜ばしい。
20170428 UPLAN 石川健治「天皇と主権 信仰と規範のあいだ」
■ オマケ3
頭のいい人たちは、法律行為が事実行為よりよほど大きな波及効果を持つのを知っている。なぜなら、憲法の文言に従って法が制定され、その下位法令が出来、さらに行政官僚を動かすのもそれらの法だから。
志位委員長が歴史認識(ソ連、ロシア革命、スターリン評価)において天敵というのは、とても興味深いですね。
できれば簡単にでも論じていただきたいものです。ぜひ、ぜひ。こんなこと言える人、日本に珍しいですよね?
志位さんがというのではなくて日本共産党がということです。あと、そうはいっても別にここだけでなく、おそらく日本全体が私が天敵とする史観でものを見てる、と思ってます。
いろいろ書いてると思いますが、そのうちまた書きます。
どっちみちどんづまりだと思うので、うわっついた希望を持ってもしようがないですよね。
前にも書きましたが、今の状況は2度目敗戦なんだと思うんですよね。いや、ようやく来た敗戦、かも(ずっと終戦にしていたから)。
日本という環境が厳しいことはわかりますが、残念です。