オウム問題で、宮台さんがあちこちに登場している。
強調している論点の中で最も重要だろうと思うのは、いわゆる心理操作の話だろうと思う。
アベプラ 前代未聞!オウム麻原彰晃など7人の死刑執行/宮台真司が出演 2018年7月6日
【宮台真司×田原総一郎×木村晋介】麻原『死刑執行』が意味するもの《デイキャッチ》
氏はこの話を前から言っていると思うけど、でも多分、心理操作という語をあえて使わないのは、マインドコントロールにせよ心理操作にせよ、そうすると全部がある特定の見方にされてしまう、といったわりと単調な感じを想起する人が多いだろうことを懸念してのことかと思う。
そういうことじゃなくて、もっと怖いのはあるトリガーを引くと恐怖感情やパニック感情を起こして何等かの条件づけられた方向に向かう、みたいな非常にアドホックなんだが効果は必ず出るみたいなやり方だからなのかなと拝察する。感情にフックさせる、とかいう言い方を氏はよく使っているが多分それはこの操作の変奏の1つだとの認識なのかも。
で、こういう心理操作の「開発」は、映画の話だけじゃなくて、実際にCIAがやっていた。例えば、MKウルトラ計画など。
この作戦を導入したのが、またでましたアレン・ダレス。このあたりの人の悪質さというのは一体なんなんだろうかと何度でも不思議だ。操作されずにこれだけ悪質な人間がいるということの方がよほど研究価値があるんじゃないかとさえ思う(笑)。
そして、これに限らず、CIAという対外関係の諜報機関(又は工作機関)行動があまりにもマズイだろう、というのが70年代アメリカの国内で問題になってチャーチ委員会などが立ち上げられ、それをきっかけにこのあたりの心理操作プログラムの資料は廃棄されたのだが、残っていて、その後まとまって明らかになったというのが経緯。
さてしかしその後それは終わったのか。それはわからない。
■ 「テロリスト」に苦しむ
で、オウムの件は、そうするとすわCIAの作戦だ~とか見たくなったりもするわけだが、しかし、そうとも限らないかもしれない。つまり、そういうのを知ったローカルや別組織が結託したという話もあるかもしれない。
それはつまり、当初自分たちが作った「テロリスト」(例:アルカイダ)とかフリーダムなんちゃらという人たちが、それぞれ独自に変容を遂げて続いてしまうのと似てるかもしれない。
根元の資金源を断てばいいだろう、とはいうものの、別の資金源が出てきたらどうする、とか、捨て鉢になってコントロールの効かないテロリストになったらどうするんだ、という問題は残る。
これはつまり、プーチンが、名高い、あれはみんな傭兵ですよ発言の中で、傭兵を雇うには金がかかる、しかし、傭兵を解除するにはもっと金がかかる、と言ったことの極限版のような話だと思う。
そして、総じていうのなら、世の中の「テロリスト」問題というのは、これら前世紀の向こう見ずな行いのツケなのではなかろうか。
■ 忖度問題
宮台氏は、心理操作の問題と忖度が重なってオウムが凶暴化していった、という構図で話していた。
つまり、どういう事情であれなんらかの組織に入ってしまうとその中で、忠誠心を競いだし、上が命令しそうなことを勝手に忖度することによって、組織が過激化し、目的を失うという構造ね。
これは、宮台も言及していたが、日本が昔大陸に持っていた軍などがまさにこの例として考察の価値がある。この例は、組織の合目的性が失われ、組織の存続または組織内での自己もしくは自グループの立場の強化が目的化された時、どんなに愚かしい状態がもたらされるのかのサンプルとして整理され、共有されるべきだとさえ思う。
しかしそういういかにも権力を持った集団だけが問題なのではなくて、オウムの場合は、妙にサブカル的な、妙にポップな、あるいは流行の何かのように扱ったメディア業界こそ、当代の関東軍だったというべきなんじゃなかろうかと思う。
宗純さんがどこかから写真をもってきてくださったが、麻原はテレビに出てもてはやされていた。
https://blog.goo.ne.jp/syokunin-2008/e/13203f6ecfe3c0aa7166906f7a4f995c
そして、オウム集団は当時全員必須アイテムにはなっていなかったパソコン売りのお店の人たちとして若年層にとっては、へんだけど面白そうな人たちだったと言って差し支えない。
ショーコー、ショーコー、あさはらショーコーとか歌いながら笑ってみている対象だった。
1990年1月(CNN)
これはなぜ成立したのか。
オウム教団が利口だったからだけでは話はすまないでしょう。私が思うに、いくつかのアイテムが象徴的に埋め込まれていることによって、この団体は大丈夫だ、という安心感をこれらメディア業界の人間にもたらしていたからだろう、と考えている。
他にも私が知らないだけでいろいろあるんだろうけど、ダライ・ラマの存在もその一つだと私は思うなぁ。
その意味、あるいは機能は2つある。一つは、言わずとしれた宗教的権威らしいという世評。
もう一つは、ダライラマはCIAに使われてる人、という一般ではないが知る人ぞ知る影の情報。日本の親米こそ我らが努め的な業界人にとっては、なんだか知らないがこれは大丈夫だろ、と安心材料となってたんじゃなかろうか。
CIAチベット計画
https://ja.wikipedia.org/wiki/CIA%E3%83%81%E3%83%99%E3%83%83%E3%83%88%E8%A8%88%E7%94%BB
そこに中沢新一が加わり権威付けも行われる。
ということなので、オウムがなぜ広がり、放置されてきたかの理由は、当局者あるいは統治権力機構側の都合ももちろん大きいんだろうが、メディア、アカデミズム業界の業界人たちによる忖度問題とよぶべき問題がここにあると考えるべきでしょう。
大丈夫だ、と思わなきゃこの人たちは動かない、乗らない。
そしてこの様子は、戦前には意味不明なまでに皇軍最強を訴えたこととか、過去20年ぐらいのこれまた意味不明なまでの情熱と共に書きまくって、番組作りまくった中国崩壊、韓国崩壊、ロシア崩壊のブームと重ね合わせることもできるような気がする。
宮台は「オウム化している日本」と現状に警告を発しているんだろうと思うんだが、もう少し長期スパンで見ると、オウム現象を呼び込みやすい日本、というテーマで追及するべきなんだろうなとも思う。
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