トルコで亡くなったロシアの大使の亡骸は、トルコの空港でお見送りの儀式が行われた後、モスクワに戻った。
トルコの空港でのお見送りの様子はこれ。
https://www.youtube.com/watch?v=RKSifRAnoAY
空港での式典にはトルコ政府や外務省関係の人と思しき人々が参列し、最後は正教会の司祭による短めの儀式があった。1時間ぐらいの録画のうち、多分20分か30分を見たけど、だらしない時間のない、丁寧で、参列者の心の痛みがよくわかるような式だった。
トルコ軍の儀仗部隊の動きもよく訓練されていて好感が持てる。ユニフォームはまったく私の好みではないが。
その後、大統領連隊というかクレムリン連隊というか、プレオブラジェンスキー連隊というか、つまりロシアの名高い儀仗隊の手によって大使はロシアの地を踏んだ。陸、海、空軍それぞれの旗も見えるからそこにいるのはそれぞれの儀仗部隊だと思う。
Russia: Remains of slain Russian ambassador arrive in Moscow
この映像で確認できるのは、ロシアのラブロフ外相だけでなく、トルコのチャブシオール外相が遺体を迎えている。前日に外相会談のためモスクワに来ていたからそこにいたからモスクワで、なのだろうが敬意が示されている。
で、エルドアンやこの外相はロシア、イラン、トルコが結束することでシリア問題を解決しようという姿勢を確認しているわけだけど、トルコは長い間、いわゆる西側の丁稚小僧的な扱いを受けている国なわけだから、NATO、CIA、あるいは英インテリジェンスの浸透は相当なレベルにあると考えるべきでしょう。クーデーター以降の恨みつらみよりずっと深いレベルで大変なことになっていると想像。もう、誰が敵かわからんような状態なんだろうと思う。
まぁ、これってつまり日本とだいたい同様の150年ですね。私は、トルコの変化を半信半疑的に見ているわけだけど、でも、現実問題、ムジャヒディーン、ジハード主義者等々のイスラム系の過激派のたまり場、集積地、訓練場としてのトルコ、アングロ・シオニスト覇権の楽屋裏としてのトルコをこのまま続けるのか続けないのかという選択を迫られれば、もし愛国者であるのならば、妥協できるところは妥協するが、楽屋裏をいつまでも続けるわけにはいかないという方向を選ばないわけにはいかないでしょう。しかし・・・。とても大変なことだと思う。
そういえば、第二次世界大戦の時、トルコは慎重な姿勢を崩さなかったんだなぁとかも思い出す。
■ テロリストに引っ張られてる人たち
一方で、
ニューヨークデイリーニュース記者、駐トルコロシア大使殺害に関する記事につき謝罪することを拒否
https://jp.sputniknews.com/incidents/201612223168527/
あんまり詳しく書きたくないんだけど、要するに、ロシアは残虐な国家でどうしたこうしたなんだから、大使が殺されたって自業自得だ、正義はテロリストの方にあるのだという署名記事をニューヨーク・デイリーが載せ、それに対して、ロシア外務省ザハロワ報道官が謝罪を求めたが、何をぉ~みたいな記事をさらに掲載した、という話。
まぁ、半分釣りなんだと思うけど、この手の意見を現在のアメリカのメディアは否定できない状態にある。このへんが新しいアメリカなんだろうか。
いやそんなことを言ってる場合ではない。一国の大使を殺したテロリストが正しい、とかいう世の中にはまだなっていないはずなんです(というか、そのテロリストが誰だかわかってるんだろうかこの著者は?)。
が、既に妄想上そうなってる人たちがかなりいる。そして、昨日書いた通り、これはつまり、ジハード主義者の戯言をそれがどんなにおかしくてもそのまま流したことのツケだと思う。
そして、米のケリーも、英のボリス・ジョンソンもこうした手合いに「示し」を付けられていない。両方とも大使の死について言葉上はなんか適当なことを言ったが、その文言も完璧ではなく、全体としてかなり半端な、かなりいい加減で軽い対応をしている。
よしんばこれはCIAの犯行であるとしても、そう疑惑されているとしても、あるいは逆にそんなことはないと断定する材料があるとしても、そんなことが問題なのではない。国家を代表する立場にある人たちが、テロリストと同じメンタリティーになって、他国の大使殺害にほくそ笑む、あまたの事件と同じように反ロシアの風潮として流すというのは常軌を逸していると私は思う。
トランプは、大使を殺害するなんて許されるわけないだろう、こういうのは国際ルール違反だ、といった点を指摘していた。おそらく多くのアメリカ人たちが、これは安心材料と思ったことだろう。
まぁ、なんてか、2017年10月にはケネディ暗殺の残された資料が開示されるそうだけど、アメリカはやっぱり「やばい」ことに慣れ過ぎる、恐怖支配のトラウマがある社会なのかもなとかも思う。
もう一つ思い出した。ニューヨークタイムスに載ってた大使の遺体のロシア帰還についての記事。その写真ときたら!!!! 上で書いたトルコの儀仗部隊は本当に丁寧にちゃんとした仕事をしたんですよ。しかし、ほんの一瞬、棺を担ぎ上げる際に兵隊さんたちの呼吸が合わないかして、棺がちょっと傾いた。あ、と思ったので私は覚えている。ニューヨークタイムスに乗っていたその写真はその一瞬を撮ったものだった。
普通の人はそれは見逃す。なぜなら、弔意という純粋な気持ちがどうしても先に立つから。記者がそれを選んでもデスク、上級のエディターはそれを選ばない。が、彼らは違うんだなと、あらためて恐ろしい人たちがいるもんだと思った。
■ 国家には3つの要素がある
2年前に、西部邁さんと伊藤貫さんが、こんなことを言っていた。
国家には3つの要素が必要だ。それは、経済力、軍事力、価値観。
価値観とまとめて書くけど、dignity、integry、independece、つまり尊厳、一貫性(誠実性)、独立自尊の風、といったことだ、と。つまり、国家としての態度、気概の問題ですね。
そこから考えた時、ロシアはこれらの要素を満たし、トルコもその風を取り戻そうとしているように見える。
そして、アメリカは、経済、軍事にかかずらわっている間に、dignity(尊厳)を落としていると私は断ぜざるを得ない。
どうすんのよ。といっても、まぁもうテロ支援国家どころかテロリストを仲間にして世界制覇しようとしてました、ってのは国内でもバレてる始末ですからね。ここをどうやって乗り切るの?
ハワイ選出の民主党上院議員トゥルシーさんのクリアな発言でも貼っておきましょう。
アメリカ人の大半は、私やあなたがもしアルカイダやISのようなテロリストグループにお金をわたすとか、武器を渡す、なんらかのサポートをすれば、直ちに刑務所行きです。しかしながら、米国政府はCIAを通して、直接に、それらのグループと、それらアルカイダやISと一緒に活動している、そしてその支部であるグループにお金、武器、インテリジェンス支援、その他のサポートをしているのです。
宴の始末(23) アレッポ人道支援と政治的是正知識体制の解体
■ 捕捉
ボスポラス海峡2本目の海底トンネル完成 トルコ
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM21H5A_R21C16A2FF2000/
20日開いた開通記念式典にはエルドアン大統領やユルドゥルム首相が参加した。首都アンカラでは19日にロシア大使が暗殺される事件が起きたばかりだったが、「テロに我々の課題を乗っ取らせない」(エルドアン氏)として予定通り出席した。
一本目は日本の大成、二本目は韓国のSK建設が担当。
■ 捕捉2
カルロフ大使のお葬式。
Funeral ceremony for Russia's ambassador to Turkey
http://tass.com/politics/921381
グローバリズム以後 アメリカ帝国の失墜と日本の運命 (朝日新書) | |
エマニュエル・トッド | |
朝日新聞出版 |
帝国以後 〔アメリカ・システムの崩壊〕 | |
エマニュエル・トッド 石崎 晴己 | |
藤原書店 |
このクンツマンという人、何者ですか?ウィキで調べたけれど、この人のバックグラウンド、もっと詳しく知りたい。こんな幼稚な発想(悪者は罰があたって当然)による記事をマスメディアは恥ずかしげもなく掲載できるのですね。
疑問2
なんか、こう、この大使殺害事件、映像的に上手くできすぎてる気がしてならないのですが。あんなに事件が始まる前の様子から、事件後まで映像に残せるって、単独ではできないことだと思うのですが。ロシアを明確にターゲットにしたこの事件、アレッポ奪還に対する報復といった単純な動機?あの映像は、誰の誰に対するアピール?
こういう国家行事は公式の記録が録画され、報道、関係者等々多くの人が録画するからである。
バナという女の子がアレッポからシリア軍の残虐非道無差別爆撃をツイートしていたのだが、過激派戦闘員の娘だった、このバナがなんとエルドアンに歓迎を受けている写真が公開されている、エルドアンはもう狂っているとしか思えん。
この事件、結果的にトルコ、ロシアの結束を改めて印象付けることになったわけで、それがトルコのメッセージだった?誰に対する?アメリカ?EU?それとも、トルコ国民?何か、釈然としない。
エルドアンは狂っているのではなく、タヌキおやじなのだと思う。いう事、やること、全てに裏がある。