昨日、ドイツの与党CDU(CSU)内で異変が起きていると書いたら、直後にドイツ政府が国境に検問を復活させて大騒ぎになっていた。
ドイツ 難民流入で混乱 国境での検問導入
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150914/k10010233291000.html
中東などからの難民や移民の流入が続くドイツでは、この週末も1万人以上が南部の町に到着し、政府は、到着する難民の数を抑えるため、国境での検問の導入に急きょ踏み切りました。
で、急遽国境での検問の導入に踏み切って、その上で、
ドイツが国境検問を導入 EU各国に難民受け入れ圧力
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM14H04_U5A910C1MM0000/
欧州各国が平等に受け入れないなら、ドイツだけでは対応できない、とか言うから、欧州各国(ついでに米国民も)から反発を食らっている。
どういうことかというと、ドイツが移民を歓迎するなんて言うからさらに増加傾向になったのに、それをもともと移民を制限するべきとしていた国々にまで公平に分担を課す、なんておかしいだろう、ってこと。
みんなでお食事会している時に、一人だけ非常に高価なものを注文して、お会計になったらみんな公平ね、っておかしいだろう、とNYTのコメント欄に書いてた人がいたけど、上手い比喩だと思う。
さらに、この措置を、
EU欧州委員会は「現在のドイツの状況を考えればルールに合致するとみられる」との声明を発表し、入国審査の導入に理解を示した。(上の日経から引用)
と欧州委員会が言いだして、誰も公的機関めいたいところがとがめない。
しかし、金持ちのドイツがこうなら、今までさんざん苦労してて今でも大変な、移民の入口になってるギリシャとかイタリアとかどうなのよ、というのもあるでしょう。また、ハンガリー以下東欧諸国は、ドイツ以西の国との比較でいえば、圧倒的に貧乏で移民のためにいろんなことする余裕がないのに、ただただ非難していただけじゃないか、もある。
つまり、ドイツだけ特別、ドイツは法の上にいるのかよ、という話。
ドイツって一体何がしたくてこんなことをしたんだろう?
■ ドイツの国内問題でもある
そもそも、ドイツ東部の反移民モードはただ事ではなかった。だから、まずドイツ国内で議論すべき話なんだよね、これ。しかし、それをすっとばして、移民反対は悪いやつら、排外主義者だと決めつけて中央のメディアが糾弾して、メルケルおばちゃんが、移民は大歓迎です、なんてパフォーマンスをするもんだから、移民歓迎派が喜び、移民もみんなドイツに行こうぜ~になる確率がさらに上昇する。
そこで、昨日書いたドイツ国内の、今度は南部の大きくてお金持ちの州バイエルンのCSUが声を上げるという事態に至り、その後、国境に検問復活が来る、と。
つまりですね、ドイツ国内の混乱を外の人に払わせているような恰好だとも言えると思う。
ドイツは国内で合意を得るプロセスが整備されていない、または機能していない社会なんだろうなぁと前から思ってたけど再度そう思う。
で、それができないから、中央に強い権力を持たせたがる。というかそれしかなくなる。
しかしそうすると中央機関の情報統制の方向に行き、一定程度には成功するが、最終的には国内に中央に裏切られたという人々が出てきて反発される。(ドイツ国民がメルケルに反発してきている傾向はだんだん顕著になりつつあるように見える。)
そこでメディアを使って統制しようとする。
で、今回も、そもそも概ね二大政党制のその二つが連立してしまった時点で、国内議論を圧殺したも同然なわけですね。政府に反対する人たちが少数野党になってしまって、それでは多くの国民の異論が吸収できなくなる。すると人々は沈黙して皮肉に走るか、通りに出る。統制が効かなくなる。
大連立する必要のないところで大連立を選択したことは、後々考察の対象となるでしょう。
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