どうしてこんなに野蛮な世界になっているのか。その一つのキーとして中央銀行システムの保全の話をする人は多いのだが、ウィリアム・イングダールはその先駆者のひとりだったんじゃないかと思う。
特に、ニクソン時代の金とドルの交換の停止からペトロダラーに推移する過程にあったオイルショックなるものについて筋の通った説明をしたことで名をあげたと言っていいんじゃないかと思う。
でその人の2年前のレクチャー。
F. William Engdahl - What is happening in the world?
で、1939年から話を説き起こしているところが私にとってはとりわけ興味深いんだが、そこのインパクトは置くとしても、1945年に終わった戦争の後一貫してアメリカを中心としたところが何をやっていたのかというと、中央銀行システムを使った経済のコントロールなんだよな、という話。
ところが、1945年までにため込んだ金は欧州側への還流が著しく、このままではこのシステムは持たないというのでブレトンウッズを壊してというか、システムの形態は残して金ドル停止で、ドルは流通させることにその意味がある、みたいな恰好に変更。この無理こそ、西側が宗教化した遠因かもなぁとか思ったりもする。なぜなら、経済合理性では説明できないことをしようとする体制になっちゃったから。
で、これを聞きながら思ったのだが、こういう具合にコントロール下された中にあっての、A国は強いB国は弱い、といった競合は偽の競合にすぎない、というのが今日的にはわけても問題だわなぁとかも思う。
優先グループとターゲットグループ(いつか崩してやると狙われてるグループ)の競争じゃ競争って言わないだろう、みたいな。
つまり、ロシアを、日本人などは特に、経済が劣った国なのだといって貶めるわけだが、あれだけもこれだけも妨害され、何度もぶち壊されながらそれでもこれなのかよと思うと、ロシアの強さがむしろ際立ってる、など私などは思う。
イランはアメリカからの度重なる難癖のせいで、売り物の石油を自由に売れず、かつ、外国からの投資も進まないためにインフラ整備が進まず、それが故に経済をポテンシャルいっぱいに拡張できなかった。
それでも倒れてはいないわけで、ここも地力あるよなとか思うし、今ロシアがせっせと鉄道整備に力を貸して、インドが自分の中央アジアへの影響力拡大という目的のためにイランとの関係を強化している状況を重ねると、結局ここも発展軌道に乗る目が出て来た。
中国は自前の決済システムを持ってるし、ロシアは、SWIFTから外されることを想定して対応してますからねと公言してる。
アメ、NATO、日本といったところが、中国はロシアは秩序を壊そうとしているぅうう、というのは、要するにこの戦後のステルス経済支配であって、別に本当の意味での「国際秩序」ではないので、そこを聞き分けることは重要ですね。
ウィリアム・イングダールの本は中国語やペルシャ語にも訳されているし、英語圏でももちろん一貫して読まれてる。
ロシアはイングダール的な解釈は間に合ってるでしょう。自前の歴史家にこの手の人はいるから。だけど、西側に影響を受けて、どこかソ連に一義的に不信感を抱いているが故に西側の聞こえの良い説明に屈していた(信じたがった)人たちが、この手の言説によってしゃきっとする契機にはなったかもしれない。
日本ではこのタイプの人のかわりに、ここ20年ぐらいユダヤ陰謀論が流行ってたわけだなと考えると、ガラパゴスランドのガラパゴス度がさらに悪化するのも無理はなかったというべきだろうと思う。
ユダヤ陰謀論って、確かに聞くべきところはあるから流行るんだろうけど、しかし全体としてみれば、基本的に、システム全体を理解させないために、前線で偽のバトルをさせるために存在してると思う。