天皇と原爆 | |
新潮社 |
タイトルが刺激的だけど、このタイトルは本の中のほんの一章にしか関係なく、それがちょっとがっかり。カッコいいフレーズなので編集か出版の方が使いたくなったとしても不思議ではない。
内容は、CSテレビでお話になったものをまとめたもの。そういうことだからなのだろうけど、全体のまとまりが、書下ろしと比べると浅い。
とはいえ、大事なことばかりが書かれている。提出されているテーマはすべて、大東亜戦争とは何であったのか、戦後日本とはどう構築され、され続けているのかを考える際に重要。
それはそれとして、この本の終わりに付録としてついている「帝国政府声明」が非常に貴重。いや、どこかで手持ちのある方はいいとして、私としては、手元にこの活字(活字じゃないんだけど)があることが喜ばしい。
帝国政府声明は、昭和16年12月8日午前0時20分に発せられた開戦にあたっての声明文。
恭シク宣戦ノ 大詔ヲ奉戴シ茲に中外ニ宣明ス。抑々東亜ノ安定ヲ確保シ、世界平和ニ貢献スルハ、帝国不動ノ国是ニシテ、列国トノ友誼ヲ敦クシ、此ノ国是ノ完遂ヲ図ルハ、帝国ガ以テ国交ノ要義ト為ス所ナリ。
然ルニ・・・
という構成が胸を打つ。
書きにくいからカタカナをひらがなにするけど、ここも胸をうつ。
而して、今次帝国が南方諸地域に対し、新たに行動を起すの已むを得ざるに至る、何等その住民に対し敵意を有するにあらず、只米英の暴政を排除して東亜を明朗本然の姿に復し、相携へて共栄の楽を頒たんと冀念するに外ならず、帝國は之等住民が、我が真意を諒解し、帝国と共に、東亜の新天地に新たなる発足を期す べきを信じて疑わざるものなり、
南方に出ていくことになったけど、そこの住民に敵意あるわけではなく、私たちが戦うのは英米なんだ、その暴政を排除し東亜を本来の姿にしようとしてるんです、という宣明。
昭和16年12月8日にこれを読んだ日本人は、共に起つことを決意したのに相違ないが、今読んだ私も深く頷かされるものがある。
東亜の安定を確保することが日本の近代にとってどれだけ大事だったか、西欧だのアメリカだのと遠いところから出てきてちょっかいを出す人たちにはわからんやろ、と。
70年たとうが、それは今もそうだ。アメリカにとっては尖閣も竹島もただの覇権維持のための道具にすぎない。しかし私たちにとってはそこをネタに紛争を起こされることは、自分たちの運命にとって重大な影響をもたらすことになる。
であるならば、実のところ考えるべきものはいっぱいあるんですよ。そこが問題。