いやしかし、混乱の時代ですね、ほんと。
ベネズエラ情勢はまだ安心できるものはないけど、昨日のイタリアの正論などを見ても邪悪さへ一直線とはならないような感じもあって一安心。
こういうのをまた、田中宇的論法だと、これもまたトランプの対米自立路線への導きなのだという話になるのかもしれないけど、どう考えても違いますよ。
何十回も書いてますが、トランプはもし邪悪さの側の人間でないのだとしたら、彼は敗戦処理すべきところを繋ぎ直して米の優位性を保とうとして混乱している、といった状況でしょう。
で、ベネズエラが心配なのは、ブラジルの政権が非常に不安だから。いやもう、ヒトラーを生み出す時のドイツみたいに大混乱ってか、大インチキってかの手法で現職をスキャンダルで検察が逮捕する、みたいなことをやった上で引きずり倒して、福音派的、イスラエル的、反共右翼的な人が大統領になったから。
イスラエルのネタニヤフがブラジルの大統領就任式に行ってたりするマブダチ。
で、前の、ルーラ、ルセフ路線のブラジルならブラジル側がベネズエラ侵略プロジェクトに加わらないことが予想されるので一安心なのだが、現在は、ああいう手法で付けた大統領がいるというのはそれはそれなりに何かしようとしてやっているんだと思えるので、不安なわけです。
ルーラ、ルセフは労働者党の政権だから、それだけ見ると、トンチキなまでに右傾化した日本の人の中には、倒されるべきだ、社会主義が失敗であることはソ連を見ればわかる、みたいな御託を並べる人もいるのかもしれないが、中南米は、ユーラシアと違って、古豪がいない。安定秩序のモデルもないし、ユニティーもない。オリガーキと貧乏人の差が異常なところをなんとかしたいというあくなき取り組みをず~っとやってて、その結果として労働者政権が出来たという成り行きなので、先進国の左右というより、もっとずっと植民地解放運動的要素が濃い。主権をオリガーキではなく国民に運動とでもいうのか。
ルーラ大統領は、極東でいえばちょっと金大中みたいな感じかもしれない。つまり、民主化を求めて虐められて、投獄されて、ようやく大統領になったという成り行きの人。
で、ルーラ、ルセフとベネズエラのチャベスは同時代なわけで、これが可能だった一つの要素は、皮肉なことだがアメリカがイラクをぶち壊す運動を盛大にやっていて、米大陸への関わり方が軽かったことも非常に大きかったんでしょう。今から考えてみれば。
そこで、このまま落ち着いたら大変だ、よーし、米大陸から国民目線の政権なんてものを放逐しよう、という奴らが騒いでる感じに見えるわけですよ。ピノチェよもう一度的な何かが強く示唆される中南米なわけで、恐い。
■ 強制MADされたんだもの
で、ふと考えると、これってやっぱり、アングロ・シオニスト・アメリカ機構の絶望が見えるというところもあるよなとか思う。
従来そういう視点はあまりなかったと思うけど、要するに、冷戦時代というのは、ユーラシアの北側にどっしりソ連が赤軍従えて控えているので英米が暴れようにも暴れられなかった時代と考えてみることもできる気がする。
アメリカは強かった、絶対的だった、スーパーだった、帝国だったって、みたいな言説というのは、実は程度問題で、結構ハリウッドが作った「あめりかていこく神話」みたいなところがある。
だからこそ、ブレジンスキーみたいな名誉のない男が出てきて、そうだ、非正規軍でテロ行為させりゃいいじゃないかとなって、ムジャヒディーンをこしらえて後のアルカイダ騒ぎへと発展する。
ところが、お前らいい加減にしろと、ソ連という着物を脱いでむしろさっぱりしたロシアが復活して、おまけに中国と手を結んだ。しかも、さっぱりしたロシアと生き延びた中国は、片方はエネルギーで、片方は市場で、俺らと商売するとあなたも得しますというモデルを持って来やがる(笑)。だもんで、周辺各国が俺の言うことを聞かない。ドイツはパイプライン敷きやがるし、イラン、トルコという古豪も復活しやがる。こいつらみんな元本物の帝国だ!(笑)
その上、SCO(上海協力機構)がS-400を標準装備しやがるおかげで、俺が勝手に入り込める空域が少なくなってる。うぜーよ、露助!
ということで、中南米は絶対俺のものだと見せてやる、みたいな感じになっているのが米、英、ユの付く人々を横断的に存在している何者かなのではなかろうか。
しかし、60年代、70年代と異なるのは、
- ユーラシアの古豪が揃って復活していることと(冷戦期はソ連以外は強くなかった)
- 各国民が、欧州NATO+極東NATO(日米安保など)というのは、防衛でもなんでもない、ただの侵略構想なんだなと気づいたこと(多分、日本は最後まで気づかない)
- 技術的優位性がほぼない(制度的優位性はまだ大きい)
ってところだろうか。
2は軍事的だけでなく、自己の認識にとっても大事ですね。倒錯させられてるわけですよ、私たちは。
ロシアも中国もアメリカを侵略してこないことを前提として、そしてそれは高い確率でそうだと思っているからこそ、アメリカをからっぽにしてせっせと中東に出かけていけるんです。このことがつまり、防衛などしていないことを物語っている。
強制MADその2:習近平、PLAに戦争準備強化を命令
■ 今後の課題
で、今後の課題は、結局アメリカの認識改革になると思うわけですよ、と書きたいところだけど、もはやそのフェーズを過ぎたのではあるまいか?
つまり、アメとEUの一部が基地外のままでも、ユーラシアの残りの部分は相応に、必要な紛争解決メカニズムを自分たちで作っていけばいい。ロシアや中国のような情報機関の充実した国がそこを補いつつセンターになって、貸座敷よろしく安全なところであちこちで会議開いて考えれば足りる。後は、不必要にアメの手先を入れないことが重要、みたいな感じ。これがつまり、上海協力機構の空間でしょ?
この空間は、多分、パキスタン&インドに及ぶ。そうなると、アフガンは必然的に解決されざるを得ず、英米が営々と拵えて来たアルカイダネットワークも効果的に使えなくなる。
あとは自由に、アメリカと是々非々で付き合えばいい、と、時間はかかるだろうがそうなっていくだろうと思うな。
逆に、アメリカにとっては、世界はどうなるのかなどというのがあなたの問ではなく、問われるべき問いは、アメリカ合衆国はユーラシアとどう関わっていくのか、という問いになるでしょう。これって、1945年以前にはアメリカは既に巨大な資本家集団ではあったとしても、ユーラシアにさしたるプレゼンスはなかったという話を考えれば、別に不思議ではない。
そして、答えは多分一つしかない。レジームチェンジ・ビジネスをやめて、普通に交易しろ、でしょう。
さてそうなると、冒頭のアメリカ大陸の不穏化が、実に実にアメリカにとって馬鹿なことをしているというのが私の考えですね。共存化できる枠組みを作るべきでしょう。それなのに時代遅れの反共・ユダヤ右派とか使って、どんな将来があるっていうの?などと思う。
そして、アメリカ様こそこの世の真理といわんばかりの体制で70年を過ごしてしまった日本は、まず知識レベルでそのカルト体制を解放しないと、ほんとにアメリカの基地の島になると思う。だって脳みそがないんだもの。