なにしろFIFAランキングが出場国中最も低いチームではあるわけで、トーナメント戦に残っただけでもう誰にも文句は言われないだろう、というのがロシアチームだと言って差し支えないと思うのだが、しかし、スペインに勝った!
いやほんといい試合だった。チームと応援が一体になって、いわゆるスタンドが12人目の選手になった試合というやつでしょう。
とはいえ、私としてはこれはミラクルという感じのものではなくて、この試合はあの元スパルタクの監督さんチェルチェソフが、考えに考えた末のゲームプランの中にあった展開なんじゃないのかななど思った。
スペインのボール支配率が約8割と、一般的な考えではスペイン支配のゲームが90+延長続いたわけだけど、それは裏を返せば、ロシアはそれにもかかわらず得点を取らせないという体制を作って維持していたということ。というか、そうやって守らないと、自分から突っ込んでいってもスペインからゴールまで持ち込むチャンスは非常に少ないから勝てないし、試合を壊して大敗する可能性が高まる。
事実、シュート数はスペイン24本、ロシア7本なので、ロシアからすると文字通り猛攻をしのいで、闘志を切らさず守り切った。
守り切るとどうなるのかというとPKになる確率が高くなる。それならそれでいい、というのが今回のゲームプランの1つとしてあって、実際そうなったということなんだろうと思う。
なんでそんなことを考えることができるのか。それはロシアチームで最も信頼のあるプレーヤーの一人がゴールキーパーのアキンフェエフだから、じゃなかろうか。
アキンフェエフは、本田くん(と呼びたいような感じだった頃)がCSKAにいた時に仲間だった人。元神童とか言われてた、ずば抜けて身体能力の高い人で、ロシアのサッカーの中ではずっと有名な人。欧州でも有名な選手と言っていいと思うけど、誘われても外に出なくて、32歳になる今日までずっとCSKAにいるモスクワを離れない選手なのでロシア以外での知名度が低いんだと思う。
前回のWCでポカをして一躍へんに有名になったりしたけど。
とかとか言いながらあちこち見回していい動画ないかななど思っていたら、本人が、後半はずっと守りっぱなしですごい消耗した、でも正直PK戦を期待してたんだ、って言ってる。NHKグッドジョブだわ、このインタビュー。
「正直PK戦を期待していた」アキンフェーフ(ロシア)【試合後インタビュー】
まぁPK戦を楽しみにするゴールキーパーって世の中そんなにいないわけで、これだけでもこの選手のなんというか個性がわかるというもの。
ということで、これはチェルチェソフおじさんの作戦の中で、選手もみんなそれにこたえてとにもかくにも、120分間走り通して、集中が切れて試合が台無しなるようなこともなかった。大したもん。
観客の方は防戦一方だったのでハラハラしてて面白かったんじゃないかと思うので、ダレることはなかったでしょう。それどころから地鳴りのような大歓声みたいだったし。
スペインは支配率は高いけど、これってつまり、持たされてるだけの展開だからさぞや苦痛だったでしょう。イエニスタが後半出てきてボレーをアキンフェエフにパンチングされたところで、なんとなく、スペインの運が尽きた感じもちょっとした。
最後のPK戦は、アキンフェエフは、1、2本まではスペインにかなり素直に打たせて、3本目に小さくフェイントかけて止めたと思う。ベテランだな、と。そして、5本目の左足で裁いたのは、あれこそこの身体能力に恵まれた元神童であればこういう可能性はあるとチームが思っていた一幕だと思う。
ということなので、ロシアがスペインに勝ったことは驚きで、いやもう、おおおお、と唸るようなものではあるけど、勝てるならこれだと狙いを定めて戦って勝った、その意味でこの勝ちに不思議なし、といったところではあるまいかとも思った。
とても良い瞬間を捉えてる。
ファインセーブの動画。ロシアいじめの総元締め、UKのBBCがこの写真を前面にした動画をあげてた。
Watch Akinfeev's penalty saves as Russia beat Spain
https://www.bbc.com/sport/football/44675696
UKではなくてイングランド代表だが、彼らは現在、スペイン、ドイツ、アルゼンチン、ポルトガルといった強豪が去ったとなると、優勝に一歩近づいてると考えてる模様なので、サッカーに関してはBBCもあんまりロシアいじめしてられなくなってるのかもしない(笑)。だって、ホームを敵に回すって賢いことじゃないわけで、そんなことをすれば自国民に苦情を言われるから。
ロシアチームには大変失礼ながら、決勝トーナメント第1回戦の組み合わせを見たとき、私は「ロシアが開催国として迎えたW杯はベスト16で終わりか」と思ってしましましたが…眠っている間にこんな奇跡が起きていたとは、今でも信じられないほどです。
今大会はスペインをはじめ、いわゆる強豪チームの調子があまり良くなかったのもありますが、それを差し引いても、開幕から(GL最終戦を除き)勝利を重ねてきたロシアの大躍進ぶりには目を見張るものがありましたね。
相手がボール支配やパスなど、攻撃力で圧倒的に勝っていても、鉄壁のガードを築き上げてゴールを守り抜き、今大会初の延長戦に持ち越し、そして最後にスペインのキックを止めて2010年の王者にまさかの大金星!こんなドラマが待っているとは、メディアや一般サポーターは勿論、スペイン戦の直前に監督を激励したプーチン大統領だって予想していなかったのではないかと思います!
そして、また例によってドーピングがどうのこうのと見苦しいロシア叩きをしている人もいますが、特に誰かを悪く言いたいなら、ゲームの内容をしっかり分析してからにしていただきたいものです。
ところで、ジャーナリストの木村正人氏が今大会を現地で観戦されたそうですが、ロシアのホスピタリティはとても良かったそうですね。
【W杯現地報告】無敵艦隊スペインを撃破したロシア 最大の勝者はプーチン大統領だ
ttps://news.yahoo.co.jp/byline/kimuramasato/20180702-00087895/
最後になりましたが、ロシアチーム、本当にПоздравляю! 次の試合も頑張ってください!