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「歴史がわからないアメリカ」、そして日本

2015-08-23 20:58:51 | 太平洋情勢乱雑怪奇

1か月ぐらい前、ウクライナはもう収拾に向かってるんじゃないか、みたいなことを書いたけど、

なんとなく忘れられてるけどウクライナ危機雑報

またぞろウクライナ軍という名の誰だかわからん集合体がドンバスを包囲するかのような動きに出ている模様。まぁいつでもやってるっちゃそれまでだけど。もちろん、何かあれば、自分で仕掛けてそれをキエフ発でニュース記事にして、それを西側メディアが「ウクライナ政府高官によれば」とかいう書き出しで記事にして、嘘八百をあたかも真実にする完璧に近い情報ロンダリングができているので、使いたくなるのかもしれない。本当に砲弾が飛び交って、誰が死のうがウクライナ人が生きようが苦しもうがそんなの関係ないわけだし、それによって、家族、親族、友人知人がウクライナにいるロシア人たちがどれだけ苦しもうがそんなことはさらに関係がない。

これを仕掛けている人々にとってウクライナはロシアを釣り上げる、釣り出すための単なる道具に過ぎない。

ああ、いやだ。でも、日本もこっちの、人を人として見られなくなってる組ですのでそれは忘れるべきではないですね。嫌だけど。

■ 歴史に無頓着なアメリカ、そして日本

で、久しぶりにそんなことを書き出したのは、久しぶりにキッシンジャーがまたまたアメリカ・メディアに登場していたから。The Nationの編集者が7月に行ったインタビューである由。

去年書いている通りあいかわらずキッシンジャーはアメリカの現政権が取っているウクライナ政策に批判的。バカでバカでどうしよーもねー、っていうニュアンスが垣間見える。

いや、垣間見えるどころか非常に重要な指摘をしていた。

The Interview: Henry Kissinger
http://nationalinterest.org/feature/the-interview-henry-kissinger-13615

 

ウクライナ問題の対処というよりロシアとの関係に関するバカな想定にあきれ果て、ギリシャでもそう、といろいろ言った後、インタビュアーが、どうしてこうなるのかと尋ねる。

するとキッシンジャーは、

なぜなら私たちは経験から学ぼうとしないからです。まず基本的に無・歴史的な人々がやってるんです。学校では、彼らはもはや歴史を出来事の連なりとしては教えません。文脈を外してテーマとして取り扱うのです

Kissinger: Because we refuse to learn from experience. Because it’s essentially done by an ahistorical people. In schools now, they don’t teach history anymore as a sequence of events. They deal with it in terms of themes without context.

と語っていた。

いや~、これこそまさに今起こっている人々、今表に立って偉そうにしている人々、権力を持っている人々のことじゃまいかーと思った。そして表面的な投票の決着は抑えているものの実のところ多くの一般人からは、尊敬されることもなく、むしろ奇妙な存在として反感を買ったり、侮蔑されてたりしている、そういう裸の大王みたいな人々の群れの姿だと思う。

ahistorical 、無・歴史的、まさにそれ。

■ 「無・歴史」と主権

これは、はからずも、伊藤貫さんが1年ちょっと前だかにも同じことを言っていた。西部先生の番組で、アメリカという文明はまったく困るよ、的な話の中でそうおっしゃっていた。

しかし、どうもそれはアメリカ人だけではないわけですよ。

例えば、そう、まさしく我が国の首相および外務大臣のような姿勢こそがahistoricalなわけですよ。

北方領土とクリミアの事情は非常に違う。にもかかわらず、北方領土とクリミアで起こっていることは同じです、とわざわざ国際社会に出張って行って語ったのは我が方の岸田外務大臣。

この意味はおそらく、「力による現状変更」というテーマから見た時同様だ、ということなんでしょう。

しかしそれって、教室で先生が今日はこのテーマで扱います、では例を挙げてくださいと尋ねて生徒が手をあげる、みたいな話ならわからんでもないけど、具体的な解決策にはなんら寄与しない。

個々の主体には個々の過去があって、現状がある。揉めた過去から現在とて変容する。だから、勝手に誰かが決めたテーマでは話はまとまらない。

結局、ほとんどすべての問題は、関係している人間も異なれば歴史的事情も異なるのだから、それに応じて、関係者が納得する対応を見つけないとならない。個別の似ていない案件の共通点を見つけても参考になるかどうかさえおぼつかない。

実際問題、どの紛争だって、紛争の大小を問わず、最終的には当事者双方が納得して、争いがない状態になることが目標なわけでしょ。民事訴訟だって、法の適用とは異なるが双方が納得したら訴訟を取り下げて和解できるし、やってもいいし、また逆に完全にきれいな訴訟上の解決がなっても、どうしても紛争を持ちこすケースだってある。

ここで、いや刑事なら法は厳格に適用されなければ、と考えるのは間違っている。なぜなら世の中には未だかつて世界連邦政府はないから。つまり、誰も世界連邦政府の司法権に服する義務を負っていない。

と考えると、逆にいえば、これらahistoricalな人々は、すべての出来事があたかも国家内の出来事であるかのごとく、あらゆる警察権を自分たちが握っている=世界の支配者は俺、と思ってるとも読めるんだなぁ。アメリカのネオコン+介入主義者ならあり得るが、岸田さんがそんなに根性のある人だとは到底思えないので、要するに彼はその丁稚みたいな感じだろうね。先生(ネオコン)がそういうんだからそうなんだ、みたいな。情けない。

まとめると、無・歴史の姿勢というのは、個別の当事者の過去の蓄積、すなわち個人そのものの独自性を認めないという意味において征服者のメンタリティーなんでしょう。しかし、これって、実際にはできるわけもない。やるとすれば、人類の半分ぐらいを殺しまくって平定するぐらいのスケールでしか成立しない、というかそれだって長期的にいえば反乱する人類は残るでしょう。つまり、これは妄想だ、ってことにしかならんでしょう。ハルマゲドンなんてない。

ということで、これは、去年ミアシャイマー氏が語っていたこの話と直接につながる。

一国スーパーパワーになってからのアメリカの政府、政策決定者たち、つまりワシントンにいる人たちは、自分たちはbenign hegemon(善意の、または良性の、覇権国)だと頭っから信じ切っており、自分たちが他国に言うことは、彼らが従うに決まってると思ってる。世界には 問題がある、それは彼らが従わないこと、みたいな調子だと。

世界をアメリカが見る通りに見るのが当然だという幻想が本当に広がっているんですよ、とミアシャイマー氏が真顔で語り思わず笑いを誘う。

ミアシャイマー氏、コーエン氏、ロシア・トゥデイに出演

 

■ 妄想の人々をなんとかできるのかアメリカ

恐ろしい世の中なんだよなぁほんと、と思いつつThe Nationの画面を見ていたらこの号のトップ記事のリードが目に入った。

「アメリカが今日世界という場で直面している複雑な問題と国際問題に関する私たちのまったくもって不適切な会話の間には明らかなギャップがある」

There is a conspicuous gap between the complex challenges America confronts in the world arena today and our wholly inadequate conversation about international affairs.

だそうだ。

つまり、このリアリスト系の雑誌は、現在アメリカで行われている議論がバカすぎて話にならん、ってところまでは来たんだなぁ、おめでとう、でしょうかね(笑)。

まぁねぇもともとネオコンが跋扈して以来調子がくるってる人が多くなっていたところに来て、去年1年間ウクライナ問題でバカにバカをさらし、バカに化粧させて、素っ裸にして通りで躍らせるぐらいのことはやったからねぇ、アメリカの言論状況は。

いずれにしても、彼らは、妄想の人々をなんとかできるのかアメリカ、というフェーズにいて、日本や欧州諸国といった属国グループはその彼らの動向に振り回されるというスキームにいるという意味において、彼らの動向に深く関係しちゃう。


 

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大田 直子,鍛原 多惠子,梶山 あゆみ,高橋 璃子,吉田 三知世
早川書房

 

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角川書店

 


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