マーちゃんの数独日記

かっては数独解説。今はつれづれに旅行記や日常雑記など。

森鴎外著『ぢいさんばあさん』を読み、歌舞伎を観る(その1)

2021年12月24日 | 闘い

 確か8月の毎日新聞に載ったと思うが、作家・中島京子が副題を“意志的な女性の幸福な晩年”として、森鴎外の作品『ぢいさんばあさん』を紹介していた。副題が魅力的であったのみならず、作品名に漢字の入らない鴎外作品があることを初めて知って、『ぢいさんばあさん』を読んでみた。晩年を仲良く暮らした夫婦の物語で、読後感が爽やかで心地よかった。
 11月に入って、歌舞伎座の公演でこの作品が上演されることを知り、是非見物に行こうと思い、ネット予約をし、12月22日(水)に十二月大歌舞伎公演第二部を観劇してきた。
 歌舞伎座の舞台については次回にして、著作の方は高校の国語教材にも採用されていたので、内容を知っている方も多いかと思うが、今回は敢えて作品内容ついて綴ることとする。

 時は文化6(1809)年、麻布龍土町にある三河国奥殿の領主松平乗羨内の、修復された空き家に髪が真白な、姿が立派な爺さんが住み始めた。二三日立つと、そこへ婆さんが一人来て同居した。爺さんに負けず品格が好い。この翁媼二人の仲の好いことは無類で、あの二人は兄妹だろうか、夫婦だろうかと近所の噂になっていった。
 二人の噂をするものもなくなったころ、将軍家斉の命が伝えられた。「永年遠国に罷在候夫の為、貞節を尽候趣聞召され、厚き思召を以て褒美として銀十枚下し置かる」という口上であった。これがために翁媼二人は一時江戸で名高くなった。爺さんは美濃部伊織と云い、婆さんは伊織の妻るんと云った。
 (ここまで読んできて上手い導入だなと思う。どうして二人は日を違えて入居し、夫は遠国に在り、更に何故将軍から金十両など頂けたのかと、ご近所の人のみならず、読者の私も不思議に思うのである。その謎解きが後半部分である)

 長年女中奉公に上がっていたるんはその為婚期が遅れたが、人の紹介で会った、美形の伊織に惚れて嫁となり、幸せな生活が続いていた。ただ伊織にはひとつ癇癪持ちという欠点があった。京都在任中その欠点ゆえに人を殺めてしまった。
 判決によって知行地は召放され、伊織は有馬家へ、永の御預となった。残された妻るんは祖母と病の息子をみとった後、筑前国福岡の領主黒田家の女中として31年間勤め、四代の奥方に仕え、表使格にまで進んだ
 その後伊織は許されて江戸に帰ることになった。それを聞いたるんは喜んで安房から江戸え来て、二人はなんと37年ぶりに再会したのであった。るんが長き年を貞節に過ごしたことに褒美が与えられたのであった。

 読み終えて物語の起承転結を知り、再度物語の前半を読むと、改めて二人の幸福な老後にほのぼのとする。この物語は実際に起こったことをベースにして創作されたとのこと。るんはどんな思いで31年間を働き、過ごしたかは書かれていない。読者の想像に委ねられている。私は、るんは夫の帰りをただひたすら待つだけでなく、働くことが面白く生き甲斐さえ感じていたのだろうと想像している。


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