3月17日(月)、新宿ピカデリーで『あなたを抱きしめる日まで』を観てきた。東京新聞金曜日の夕刊には毎週、”シネマガイド”として6本ほどの作品が紹介される。先週の”今週の注目”がこの映画だった。
評の冒頭に「この監督で、この脚本家で、このキャストで、本当に良かった」と書かれていたが、残念ながらと言おうか、恥かしながらと言おうか、イギリス映画に詳しくない私は、監督も主演女優のジュディー・デンチも知らない。「50年前に生き別れた息子を捜すため、愛だけを胸に母は国境を越えた---」の謳い文句に惹かれ、衝動的にこの映画を観たくなったのだ。ミステリーでも映画でも、突然消えてしまった人捜しの物語が好きなのだ。(写真:左がジュディ・デンチと右がスティーヴ・クーガン)
新宿ピカデリーへは実に10数年振りに出掛けた。自宅スタートが8時40分。9時15分には座席に座っていたが、もはや、私の知っているピカデリーではなかった。2008年に建て替えられ、10数の映画館の入る、映画のデパートだった。
着席すると直ぐ、9時10分の部は予告編なしで、映像が流れ始めた。
10代で未婚のまま妊娠し、修道院で出産の世話を受ける代わりに、長年の過酷な労働を担わされてきた過去を持つ老女フィロミナをデンチが演じる。息子が3歳の時、教会によって母の手から奪われ、強制的に養子にと出されていた。彼女は50年たった今、秘密にして来た事実を娘に打ち明ける。娘はジャーナリスト(役:スティーヴ・クーガン)に依頼して、老いた母と記者のふたりは息子捜しの旅に出るのであった。
このアイルランド女性の実話は、まずイギリスで出版されてベストセラーとなった後、映画化された。
片や80歳の女性。片や現役ばりばりの壮年エリート記者。二人の会話は噛み合わないことが多い。しかしこの会話が実に面白い。ユーモアたっぷりで何度も笑ってしまった。息子捜しの旅は、アイルランドからアメリカへと飛ぶ。次第に明らかになる息子の消息と、人権を無視したカトリック教会の、闇の歴史たる養子斡旋制度。報道を躊躇う老女と、社会的怒りを禁じえない記者の葛藤。
最後には衝撃的な結末を迎えるが、彼女は報道を決意する。
”あなたを捜し出し抱きしめる日まで”決して諦めない母の勇気と強き想い。胸ふさがれる思いでスクリーンを見続けた。時が短く感じられる98分。この映画に出会えて良かった。
映画と同じ題名の翻訳本が集英社文庫から出版されていた。観る⇒読むと、普段とは順序が逆だが、これから書を手にしたい。
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