歌舞伎座や新橋演舞場のチケットが回ってくることは終わったと思っていたが、少し事情が変わり、その可能性が延びたらしい。16日には妻が、17日には私が、新橋演舞場で『NARUTO』を観る幸運に恵まれた。
原作漫画は著者岸本斉史が15年の歳月をかけて完結した全72巻の超大作で、G2が脚本を書き、演出したそうな。漫画に疎い私は殆ど知らない世界。
3年前に猿之助主演のスーパー歌舞伎『ワンピース』を観たことがあり、伝統的な歌舞伎と違い、些か違和感を覚えたが、そのスケールの大きな活劇は面白かった。それに近いものが演じられるのだろうとの思いで出掛けていった。
プログラムは当日購入し、ストーリーを慌てて読み、筋書を追ったが詳細は呑み込めなかった。しかし、細かいところは分からなくても、主演の坂東巳之助と中村隼人の活力ある大立ち回り、満足・満足でした。
舞台は、国を守る忍びの里・木の葉隠れの里。そこに設立された忍者学校の生徒に、うずまきナルト(坂東巳之助)・うちはサスケ(中村隼人)・春野サクラ(中村梅丸)がいた。主人公のナルトとサスケは親しき友でもありライバルでもあった。ナルトは落ちこぼれながら辛うじて卒業。サクラに気があるがサクラはサスケに惹かれている。その3人も含め里人たちは、木の葉の里を滅ぼそうとする大蛇丸(市川笑三郎)に、助け合いながら立ち向かって勝利する。
しかし、最後には、木の葉の里を壊滅しようとするサスケと守ろうとするナルトの敵味方に分かれてしまう。藤沢周平の青春ものなどによく登場するストーリー展開。
その二人の決戦の前に立ちはだかるのが黒幕の、うちはマダラ(猿之助と愛之助のダブルキャスト。この日は愛之助)。マダラとの、壮絶な戦いにサスケとナルトは助け合い辛うじて勝利する。愛之助の最期は、顔面から地面に倒れ落ちる。その瞬間に、『源平布引滝』で義賢役の愛之助が7段もある階段を俯せに転げ落ちる場面を思い出した。
その後に待っていたのがナルトとサスケの対決。滝中での大活劇・乱闘。若いが故に演じられるだろう壮絶な決闘劇。
今まで観て来た歌舞伎の立ち回りのテンポを遥かに超えた、スピーディーで激しい殺陣。時折爆発する忍術。和楽器のバンド音。これが歌舞伎かと思える世界。いや歌舞伎はこんな舞台も作れるという世界。ただただ面白かった。 当然ながら若い観客が多かった。それを意識してか竹本連中の語りには字幕が流れた。浅草歌舞伎で活躍していた巳之助と隼人が演舞場でも主役を張るようになってきた。妻とは別々に観た芝居だったが、巳之助軽快、隼人哀愁、梅丸可憐が共通の感想。