3月19日(水)、下北沢・本多劇場で、加藤健一事務所の公演『あとにさきだつうたかたの』を妻と観て来た。本多劇場に出掛けるのは、2年半前の、同じくカトケン事務所の作品『滝沢家の内乱』以来である。
私には、よく理解できない構成の劇だった。だから感想文にもなりえていないことを承知で駄文を綴ると、
演じられる時制は4つ。時制その1は現在。時制その2は昭和63年(1988年)。時制その3は昭和21年。時制その4は昭和20年5月。例えば、時制1から時制4に移るのに、場面転換もなければ、同じ登場人物の衣装やメイクの変化もない。加藤健一演じる藤崎静雄は75歳から7歳へと”突然変異”する。要するに時空が捩れた“実験劇”なのだ。観終わって妻は「面白かった。良く理解出来た」とヌカシた。
私は、購入したパンフレットを見ながら、後追いで粗筋を整理してみる。
時制1。歴史博物館に毎日現れる一人の老人・藤崎静雄。受付嬢は、この老人は何者で、何の為に毎日ここに現れるのだろうと訝しがる。その謎がこの劇のメインテーマだ。
時制2。大学で原子力を学び物理学者になった静雄は、原子力発電の安全性に関する展示を任され、市議会議員から、安全性を強調するよう求められ続けている。
時制3は、新宿の闇市。静雄の伯母は、戦地から帰国した長男と飲み屋をやりながら、次男の帰りを待っている。ある日、静雄は闇市で、お洒落な姿の女性と出会う。
時制4は、静岡の砂丘。7歳の静雄は両親とウミガメの卵を見つける。卵からコガメが生まれるころ、また3人で見に来ようと固い約束をするのだが・・・。
やはり、この4つの時制を統一的にはまとめられない。大筋としての理解は、現時点から振り返る”中過去”で、原子力開発に協力してしまったことへの悔いと、結局は両親と共にウミガメ産卵を眺められなかった”大過去”への郷愁。
底流として流れていたのは親子の情。親が子を案じ、子が親を思う。彼が子供のころの場面では、母の魂が人物として登場している、この劇はそれもありなのだ。
静雄が毎日やって来て視る映像は、彼の父が制作したニュース映画だった。
最後の場面で、生れ出たばかりのコガメが大海へ向かって進んでいく姿を見て、静雄が「頑張れ~。頑張れ~」と大きな声で叫ぶ。その声はいつしか、ウミガメへではなく、日本人への、あるいは弱きものへの声援と聞こえてきた。静雄は次第に加藤健一として立ち現れる。
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