マーちゃんの数独日記

かっては数独解説。今はつれづれに旅行記や日常雑記など。

『太宰治の辞書』(著:北村薫 出版:新潮社)を読む

2015年06月02日 | 読書

 5月19日(火)に書類作成の為荒川5中に出向いた折に、予てから貸して頂くことになっていた『太宰治の辞書』を、O先生からお借りし、読み終えた。
 北村薫作の『円紫さん』シリーズ第6作目で、物語の主人公は≪私≫。このシリーズ第1作が『空飛ぶ馬』で、大学で日本文学を学ぶ≪私≫は、恩師が同じという縁から噺家・春桜亭円紫師匠と知り合う。≪私≫が身の回りで起こった謎や疑問を示すと、円紫師匠は自らそれを解決し、時には≪私≫にヒントを示し、≪私≫はそのヒントを頼りに謎を解決していく。血腥い事件が起こる訳ではない。ソフトなミステリー小説で、人間模様の綾なす巧妙な伏線と、主人公二人の会話が味わい深く、そこに惹かれて私は北村薫の熱心な愛読者となった。
 『空飛ぶ馬』に続いて『夜の蝉』・『秋の花』・『六の宮の姫君』・『朝霧』と発表されてきた。特に『夜の蝉』では第44回日本推理作家協会賞を受賞。著者は男性か女性か不明だったが、受賞に際し、遂に覆面を脱ぐこととなり、素顔から男性作家であることが判明した記念碑的作品。『朝霧』がシリーズ最終作と思っていたから、『太宰治の辞書』の登場は、20年振りに旧友と再会したような感じがして、懐かしかった。

 ≪私≫は、女子大学を卒業後、出版社「みさき書房」に就職し、編集者として社会人の第一歩を記していたが、そこから20年近くの歳月は流れ、この作品では中堅どころの編集者となり、既に結婚し一児の母となっていた。夫を「連れ合い」と呼び、中学生の息子は野球部の部活に忙しい。・・・・≪私≫の成長小説と言われる由縁だ。
 円紫師匠は「鈴本演芸場」の夜の部のトリをとるまでになっていた。独演会のチケットなどすぐに売り切れてしまうほどの人気で、今日の噺は『佐々木政談』。舞台が跳ねて二人は久しぶりの乾杯をする。その席で師匠は「・・・ほら、≪ロココ料理≫のところで、(太宰が)辞書をひいたーーと書いてあったでしょう?。あれはどういう辞書なのでしょう?」と語ったのだ。

 その言葉に導かれて≪私≫の”辞書探しの旅”が始まる。辞書探しは辞書や本を巡るだけではなく、太宰に纏わる周辺を駆け巡ることになり、実際に「群馬県立図書館」への旅ともなる。≪私≫に著者の北村薫が重なり、私は、彼の、本や文学の薀蓄を聞いているよう感じとなり、読みたくなる本が多数登場した。
 最終場面で≪私≫は遂に太宰治が使っていたと同じ辞書へと辿りつくのだが・・・。

今日の一葉:スイカズラの花かサンゴシトウか(?)(Sport Club「オアシス」前で撮影)

 


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