一昨日の28日、都立城北高校の卒業生ヒロコさんのリサイタルを「和光大学ポプリホール鶴川」へ聴きに行って来た。素晴らしいリサイタルだった。高校時代の友人たちも私も彼女のことを愛称の”キョン”とか”キョンさん”と呼んでいた。ここでも愛称の方で呼ぶことにする。 このリサイタルの題名はフランス語で「LA VITA FERICE」(~平和って すてき~)。案内状をもらった時に、聴きに行きますとの返信メールを出したものの案内状を詳しく見てはいなかったので、うかつにも彼女の独演のリサイタルとは会場で初めて知った。殆ど、彼女の歌とピアノ演奏に終始した。このリサイタルの企画も彼女の発案で、ここまでの道のりの中心にもいたらしい。
司会の北川鉄子さんに紹介されたキョンは、華やかなロングドレスで登場し、増永千採子さんのピアノ演奏で立て続けに3曲(マリタの祈り、アメイジング・グレイス、私と小鳥と鈴と)を歌った。ソプラノの澄んだ声がホールに響いた。私はその声量豊かな歌唱を初めて聴いた。300人収容のホールのほぼ全席を埋める聴衆から割れんばかりの拍手。4曲目「夢見たものは」は彼女の歌の先生miwaさんと二人で歌った。
歌のあいまの語りにキョンらしさが漂っていた。前向きで、ひたむきで、芯の通ったキョンらしさが。小学校教員を退職後、自らの意志で始めたリサイタルはこれが3回目だった。5曲目の歌と朗読「むらさき花だいこん」に彼女の想いと人柄が良く表れていた。会場の一角にスクリーンが置かれ、パワーポイントで、同名の童話の絵が写しだされ、北川さんの朗読と彼女のピアノ演奏。この著者の大門高子さんも来場していて紹介された。 絵本『むらさき花だいこん』は、戦争に駆り出された少年兵が中国に咲いていた紫色の菜の花の種を持って帰国し、帰国後その花を咲かせ、種を播いて、日本の至る所に紫の花を拡める物語。戦争を憎み平和を希求する物語・・・。この物語に感動した彼女は音楽教員として児童に聞かせたそうな。(写真:右は絵本。下はむらさき花だいこんの花)
第2部はピアノ演奏で幕を開けた後、琉球の時代から伝わる目出度い曲の「龍落(たちうとぅし)」。沖縄伝統の楽器を演奏した二人はなんと彼女の息子さんと娘さん。家族総出の演奏にキョンのしあわせが溢れていた。
沖縄への想いが伝わって来たのは「島唄」。会場全員への”歌唱指導”の後聴衆も一緒に歌った。
最後の曲「ぼくたちの希望」に、このリサイタルのタイトル「平和」へのメッセージが込められていた。「むらさき花だいこん」の種が日本全国へ広まっていったように平和が日本全土に広まって欲しいとの彼女のメッセージ。
最後に、彼女と初めて会ったときのことを記しておきたい。私がワンゲル部の顧問をしていた時の女性部長に”ゴンチャン”がいた。そのゴンチャンの結婚式が新潟市の「ホテルオークラ新潟」で行われたときのこと。待合室の私の前にひとりの若い女性が近づいてきて「川口先生ですか。私、ゴンチャンの親友です」と話し掛けられた。城北高校時代、先生・生徒として3年間を過ごしたのだが、教えたことは1度も無かったし、私の認識に上らない生徒だった。この時が初対面。その後何度か会ったときの彼女の言葉を今でもはっきり覚えている。「何があっても定年まで教員を勤めます」との。退職後にも大きな花を咲かせていた。
帰り際、ロビーで聴衆を見送るキョンの前に立つて、「私が誰だか分かりますか?」と冗談交じりに声を掛けた。「教育基本法改悪反対」時の国会前以来の再会だから13年になるか。さっと私の名前で応えてくれた。