最近読んだ本のなかでは出色の、面白さ溢れる本だった。
辞書は三省堂と言われて久しい。「辞書界」の老舗三省堂。その三省堂から小型辞書として売り出された辞書のうち、『明解国語辞典』(以下明解と略記)、『三省堂国語辞典』(以下三国と略記)、『新明解国語辞典』(以下新明解と略記)が特に有名で、発行部数が凄い。
『明解』は1943(昭和18)年に初版発行で 「文学博士 金田一京助編」とあるが、これは”名義貸し”で、実質的には、金田一の東京大学での教え子である見坊豪紀(見出しと本文ではケンボウ先生として登場)がほぼ独力で編纂し、山田忠雄(山田先生として登場)が”助手”を務めた。二人は東京帝国大学文学部に同時入学。国語学を専攻したのは、この2人を含めて僅か3名という同級生。その縁もあり、『明解』はこの二人の、主と従の関係のもとに編集され完成した。
しかし、その後二人は別々の道を歩むこととなる。ケンボウ先生を中心にして、1960(昭和35)年に『三国』が作られ、戦前に作られた『明解』は、山田先生によって、1972(昭和47)年に『新明解』へと生まれ変わった。驚かされることは、この二つの辞書は、現在までの売り上げ部数が合計で4000万部に迫るという、”隠れた大ベストセラー”なのだ。
一冊の辞書『明解』をともに作ってきた二人は、なぜ決別し、『三国』と『新明解』に分かれたのか? この謎を解こうとして、ディレクター佐々木は特別番組を作成し、2013年にNHKBSプレミアム番組『・・・辞書に人生を捧げた二人の男~』として放送された。本書はその番組を基にして、新たな証言や検証を加えて構成された。
今日は、『三国』と『新明解』の具体的相違を単語一例で見ておくに留め、詳しい内容は次回ブログで。
【恋愛】男女の間の、恋しいしたう愛情(に、恋いしたう愛情がはたらくこと)。恋 {『三国』三版)
【恋愛】特定の異性に特別の愛情をいだいて、二人だけで一緒に居たい、出来るなら合体したいという気持ちを持ちながら、それが、常にはかなえられないで、ひどく心を苦しめる・(まれにはかなえられて歓喜する)状態。(『新明解』三版)