5月13日(月)、有楽町スバル座で『轢き逃げ』を観て来た。
東京新聞夕刊には毎週金曜日に「シネマガイド」が掲載され、”今週の注目”は『轢き逃げー最高の最悪な日ー』だった。水谷豊の監督2作目で、テーマに関心がある一方、展開に意外性があるとの記述に惹かれ、有楽町まで出掛けて行った。スバル座はJR有楽町駅日比谷口を出て目の前のところにあり、その前は何度も通ったが映画館へは初めて。残念なことにこの10月に閉館するそうだ。
ストーリの概略と感想。
「地方都市の大手ゼネコンのエリート社員秀一(中山麻聖)は会社副社長の1人娘早苗との結婚式を数日後に控えていた。自動車を停め、式の最終打ち合わせに向かうため、親友で司会役の輝(石田法嗣)を待っていた。輝の到着は20分も遅れ、車を急ぐあまり慣れない脇道に入り、時山望をひいてしまう。助手席の輝の”誰も見ていない”の言葉に、その場から逃げ去ってしまう。
時山望の死亡が報じられ動揺する2人には事件を匂わす脅迫状が送られてきて、その後間もなく2人は逮捕される」
彼らが轢き逃げの犯人であることは、現在の様に防犯カメラが縦横に設置されている都市では簡単に判明するのだ。
「望の両親(父光央を水谷豊。母千鶴子を壇ふみ)の前に刑事(岸部一徳)が遺留品を持って現れ、望の携帯電話が見つからないと告げる。2人して携帯を捜すが見つからず、代りに望の日誌を見つけ、そこに付き合っていたらしい男性の影を発見する。水谷は日記を頼りに在りし日の娘の姿を追って友達を訪ね歩く。その友達の動画から携帯を盗んだ者を知った水谷は彼の部屋に忍び込み、遂には娘の携帯に辿り着く。そのとき、部屋主が現れ大乱闘となり、2人とも一階に落下する」 怪我を負った人物の顔をみて私は驚いた。おそらく大部分の観客もビックリしたことだろう。ネタバレになるので事故の真相はここまでに留める。
この映画で私が一番驚いたのは相も変わらぬ水谷の活力だ。不審な人物を全速力で追いかけたり、大乱闘を演じたりで、抜群の運動能力を見せてくれる。『相棒』の刑事さながら聞き込みに歩き回るのだが、テレビドラマの様に颯爽とはしていない。真相究明への情熱は変わらないが、肩を落とし悲哀が漂う。事故現場での上の写真がそれを象徴的に表していた。岸部一徳は味のある年配の刑事役がピッタリ。
映画後半は被害者側・加害者側の心理描写に焦点が移っていく。悔恨や絶望、嫉妬など人間の深層心理が浮き彫りにされる一方、他者をも思いやることの出来る女性2人、そこが私には救いに思われた。
結婚直後に事故を知らされた新婚の妻早苗は後悔に苛まれる夫を健気にも励ます。望の母千鶴子は現場に花束を捧げに来た早苗と神戸の海を見渡せるテラスで語り合い、「貴方が悪いのでありませんよ」との言葉をかける場面でジエンド。
ミステリー部分の展開があっけなくそこが私には残念だったが、息もつかさぬ展開。水谷監督3作目を待ちたい。
今日の一葉:国技館へ向かう為か、タクシーを待つ、右錦木関。伊勢ノ海部屋付近で撮影