日本学術会議の梶田会長と管首相が16日に15分ほど会談した。直後の会長のぶら下がり会見をラジオで一部終始聴いていて、管政
権の体質が顕わになってきたように感じる。
梶田会長だけがその弱腰を攻められるような手練手管の舞台回しに、まんまと引き込まれてしまった。
会長は6名を任命しなかった理由を明らかにし、任命して欲しいという学術会議の要望書を直接渡しに行ったとのことで、新役員就任の挨拶もあ
り、「そのような場ではないので」と回答を求めなかったという。この先の行動も決まっていないとのこと。
挙げ句に、「“未来志向”で社会や国に貢献したい。」と伝え、首相からは「しっかりやって下さい。」と返答があったという。奇異だっ
たのは、会長が記者の質問を遮り、思い出したかのように、「これまで学術会議は発信力が弱く、改革して行きたい。」とも述べたと語
った。
「行政改革」の土俵に引き釣り込まれた瞬間である。律儀な学者の世界である。これまでの体制をあからさまに批判するはずが無い。
これでこの件は終わったかもしれない。何故なら、「未来志向」という言葉は、外交などで膠着した局面を打開するために、経過とか責
任の所在を曖昧に棚上げしてしまう場合によく使われているからだ。
予算で首根っこを抑えられ、反発出来ないことを見越して、官邸筋が会談に当たって、入念にシナリオを作ったことが伺われる。ぶら下
がり会見の音声に、「会長はこの後、予定がありますので。」とどこかで聞いたようなフレーズが盛んに入っていたことがこのことを物
語っている。
弱い立場の会長に対して、アンフェアである。管首相が一国のリーダーとして採るべき態度は、自らの考えを正々堂々と会見で披瀝する
ことであって、権力をかさにした強引さと裾払いのような狡猾な手段を駆使することではない。あらためて暗い政治体質を感じた。