旅のウンチク

旅行会社の人間が描く、旅するうえでの役に立つ知識や役に立たない知識など。

快適な安宿を探せ

2007年11月27日 | 旅行一般
20代中盤の頃でしょうか。その時、私は会社員で、研修旅行という名目でオーストラリアに送り込まれていました。研修旅行といっても"海外で経験を積んでこい"という意図の物でたいていの社員はフィリピンやインド、中国などに航空券だけ持たされて送り込まれるのですが、私の場合、入社前にそういった地域には馴染があるので会社側も苦慮した結果、先進国に送り込むというイジメを思いついたようでした。

入社までの流れもあって、ここでも当然、安宿泊まり。ところが、エアーズロックでもゴールドコーストでも、どうもバックパッカーズでの滞在が昔のように快適ではない事に気がついたのです。その時、私は、"ああ、もうあの頃みたいに安宿滞在を楽しめない年齢になったのだな"と思い、そのまま今年に至りました。

そんな事もあって今回、"スーパーカブで走破するタイ北部山岳地帯"に同行するにあたって、自らが決めた安宿泊を若干不安にも感じていたのですが、行ってみると杞憂でありました。全く昔どおり快適で、楽しい滞在となったのです。

それと同時に同行のお客様を観察していて更なる発見がありました。

私が"最も快適"と感じている安宿が、お客様達にとっては最も不快であったようで、私が最も気に入った、チェンライのYa Houseというゲストハウスに至っては、お客様達は"幽霊屋敷"などと呼んでおりました。また、その幽霊屋敷の写真を見た、旅慣れた私の友人は"いいねぇ"と。

ここで安宿の快適な過ごし方について、一つの形が見えてきました。

例えば、あなたは休みの日、特に出かける予定のない時は、どのように家で過ごしているでしょうか。いくつかの部屋がある家で、一日中、部屋に篭りっきりという人は少ないのではないでしょうか。例えば私の場合、リビングで本を読んだり、仕事の続きをしたりそんな感じで、自分の部屋で過ごすのは起きるまでと寝るまでです。

ホテルに泊まる場合は、このリビングの機能と寝室の機能、それにバスルームの機能が1つの部屋に凝縮されています。ところが安宿の多くはこれらの機能が安宿全体に散らばっています。ですから、安宿の場合、部屋に帰るのは寝る時だけ。宿全体を自分の家と考えて利用すれば、シャワーやトイレが共同なのも当然と思えるのではないでしょうか。

そして、この観点に立つと、自分の部屋のきれいさなどはあまり快適さとは関係なくなってきます。むしろ、共有スペースとしてのリビング的な機能がどの位快適かが、安宿の快適さの決め手となります。この事を無意識に感じていた事に気がついて、オーストラリアで自分が泊まったバックパッカーズが今一つ快適でなかった理由がようやく自分で理解できました。

アジアの国々では私は本能的にこういう宿選びをしていたようで、その点、今回の企画でも同様でした。私が選択する安宿の条件を今回、意識して分類してみました。

*広めの共同スペースにテーブルやイスが気ままに使える状態で置いてあって、そこの雰囲気が良い(できれば中庭が良い)
*共同スペースに従業員が"それとなく"居て、ヒマつぶしに話しをしたり、情報を聞いたりできる
*少し町の中心部から離れていて、静か。ただしバザールまで徒歩圏内。

こんなところでしょうか。

そういえば、昔はこの共同のスペースで日記を書いたり本を読んだりしているうちに、同じようにしている他の国からの旅行者と知り合って話し込んだりしたものですが、今回、このスペースで"まったり"している旅行者を結局見かけませんでした。ここでの情報交換が旅の必需品だったのですが、情報化社会が葬り去った古き良き文化なのでしょうかね。


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