江戸の妖怪、怪奇、怪談、奇談

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動物界霊異誌 河童その4  水戸浦の河童捕獲の上申書

2023-07-26 21:41:11 | カッパ
4、水戸浦の河童捕獲の上申書  (仮題) 動物界霊異誌 河童その4
                  2023.7

享和辛酉(かのととり:しんゆう。1801年)六月一日、水戸浦から捕獲された河童は、大きさ三尺五寸余り、重さは十二貫目ありました。
殊の外、見た目よりも重くございました。
海中に赤児の鳴くような声が、おびただしく聞こえました。

それで、漁夫どもが船に乗り漕いで行ってみると、海の底にいました。網を下しましたが、色々の声が聞こえてきました。
それから、さし網を引き廻わした所、鰯網(いわしあみ)の内に十四五疋入っておりました。
河童たちは、網より跳び出して、逃げました。
船頭どもは、棒擢にて打ちますと、粘ばり附き、すべって、一向に擢などがあたりませんでした。
その内の一疋が船の中へ飛び込みましたので、むしろなどを、上におしかけ、その上からたたき、打ち殺しました。
その節まで、やはり赤子のような鳴く声を出しておりました。

打ち殺した時には、屁をこき申しました。
誠にたえへがたい臭いでして、鉛頭などは後に煩いいたしました。
河童を打った棒擢(ぼう・かい)などは、生ぐさい臭いがついて、いまだに消えておりません。
河童には、尻の穴が三つ有りました。
全体的に、骨がない様に見えました。
屁の音はしないで、スクスクとばかり聞こえました。
頭を打てば、首は胴の中へ八分ほど入りました。
胸や肩は張出してセムシのようでございました。
死んでも首は、引っ込みませんでした。

当地では、河童を度々(たびたび)捕えますが、この度(たび)ほど大きく重いのは、今まで捕獲したことは、ございません。

それ故、御報告申し上げます。

六月五日。
東浜 権平次(報告者)

浦山金平様

(一言一篇)動物界霊異誌より