江戸の妖怪、怪奇、怪談、奇談

江戸時代を中心とした、面白い話を、探して、紹介します。

「対馬夜話」の怪奇な話  その2

2022-04-28 19:46:09 | 対馬夜話
「対馬夜話」の怪奇な話  その2

だんだん小さくなっていった幽霊(人魂)

吉川権右衛門の家
昔、祖母が死んだ後、7月の魂祭りに、その祖母の幽霊(原文では人魂だが幽霊とした方が文意に合致する)、棚に座っていた。
生きている人のようであったが、物も言わず、なにも食べなかった。
皆皆驚ろき怪しんだが、別に不思議なことは起こらなかった。
16日に魂棚を取り払ったが、動かなかった。
ついに、挟み箱(はさみばこ)の上に安置した。
箱の中の物が入り用の時は、また他の物の上に移した。
年を経てきたが、もう家内の人も、不思議とも思わなくなった。
次第に、年月がたってくると、その幽霊は影法師のように薄くなってきて、消失したそうである。
これは、古川の家より、聞いたそうである。

弘化3年(1846年)丙午(ひのえうま)7月16日、吉副橘左衛門の語ったことである。西村栗右衛門も同座していた。

「対馬夜話」の怪奇な話  その1

2022-04-28 19:41:38 | 対馬夜話

「対馬夜話」の怪奇な話   楽郊記聞  中川延良

                        2022.4

対馬の幕末の藩士である中川延良の書いた随筆集。 「対馬夜話」(「楽郊記聞」)は、当時の、対馬の事を、活写している。

その内に、ごくわずかだが、怪しいことを書いた部分がある(志怪)。

この「対馬夜話」は、「楽郊記聞」という表題で、平凡社の「東洋文庫」にある。

 

「対馬夜話」の怪奇な話  その1

人魂が、ちぎれた話 若年の頃、8月12、3日の夜、2、3人と一緒に、一ッ橋の東の河端を下りたことがあった。

会所の少し下に行った頃、昌元の浦の方から人魂が飛んできて、大橋の方に向かって行った。

往来の人々が、アレーと見ているうちに、川向こうの荒木という紺屋のもがり竹の垣根の梢に、尻にひいているものが、掛かって先に進めなくなってしまった。

いかにも、先に行きたい様子であったが、離れられなかった。

人々が、東西の川端に立って、あれあれ、と言っている声に、いよいよ先に行こうとしていたが、まとわりついてなかなか離れなかった。

しかし、ついに、人魂の途中から引き切れて、頭の方は、山下の方を指して飛んで行った。

竹に引っかかっていたのは、なおも離れようとの勢いであった。

しばらくして、ようやく、コレも竹からはなれて、頭の方の後を追って、山下の方に向かって行った。

その時は、頭の方は、もう見えなくなっていた。

これは、私の父(対馬夜話の著者である中川延良の父親のこと)の語ったことである。