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マメキンカン、モデル植物の仲間入り

2022年01月15日 02時14分24秒 | 勉強

今日、改めてカレンダー見て気づいたんですが、そろそろ3年生終わるんですよね、、

院に進むとはいえ、いつまでも学生モードじゃいられないなぁ…と少し焦ってきました笑

 

さて、大学3年生になると、ある程度は英論文が読めるようになってくるもの。

今までは日本語で書かれた参考書での勉強がメインでしたが、論文では最新の研究に触れることができとても面白いので、最近は論文を読むことを心がけています。せっかく読んだ論文をそのままにしておくのももったいないので、面白かった論文に関しては、頭の整理も兼ね、このブログで紹介することにしました。ちょっと法律に関する知識が乏しくて、論文を紹介する際の著作権云々がどうなっているかわからないので、もし危なかったら教えてください。

 

 

今日紹介する論文は2019年にPlant Biotechnology Journalで紹介された「Genome sequencing and CRISPR/Cas9 gene editing of an early flowering Mini-Citrus(Fortunella hindsii)」という論文。中国の華中農業大学(Huazhong  agricultural university)の研究チームから発表された研究です。論文内容も踏まえタイトルを訳すと「幼若期の短い単胚性マメキンカンのゲノム解析及びCRISPR/Cas9によるゲノム編集」といったところでしょうか。

 

マメキンカンは、このブログで何度も書かせてもらっているように、カンキツでありながら播種から一年以内で開花するという特殊な性質を持っています。このマメキンカンは基本的に多胚性ですが、研究チームが中国の福建省で発見したマメキンカンは単胚性であり、この論文はその単胚性マメキンカンのモデル植物としての可能性を示した内容になっています。

 

論文内容で特に重要なこととして、

①中国の福建省で見つかったマメキンカンは単胚性を有していたこと

 (論文内ではこのマメキンカンを"Mini-Citrus"と呼んでいます)

②ゲノム解析の結果、遺伝的に栽培種とほとんど変わらなかったこと

③CRISPR/Cas9によりゲノム編集を試みたところ、効果的に遺伝子改変を行うことができたこと

の三点を挙げており、それらから"Mini-Citrus"がカンキツ研究においてモデル植物として役に立ちそうであることを結論付けています。

 

①に関して、遺伝子に関する解析では、対象の系統だけでなくその後代が必要になってきますが、多胚性では後代を得ることが難しく、多胚性であるマメキンカンは、種をまいてから花が咲くまでが他のカンキツに比べてとても短いという長所があるものの、研究対象としてはあまり使われることがありませんでした。しかし、この研究チームは中国の福建省で単胚性を有するマメキンカンを発見。2,3代世代を進めることによりホモ接合率を高めたものを本研究では使ったそうです。

 

②については私のゲノム解析の知識がやや乏しく若干理解が怪しいですが、8種類のカンキツ、すなわちChinese box orange、ポメロ、シトロン、パペダ、スイートオレンジ、温州ミカン、Mangshan(wild mandarin)、クレメンティンとのゲノム比較により、開花関係の遺伝子にやや違いが見られたものの、それら8種がマメキンカンとほとんど同様の遺伝子構造を持っていたことが分かったそうです。これが示すことは、栽培用カンキツの遺伝子機能の研究はマメキンカンで代用しても問題ないということであり、"Mini-Citrus"がカンキツ研究においてモデル植物として十分役に立つことをサポートする内容になっています。

 

③について、ゲノム編集はCRISPR/Cas9の発見により近年注目の的になっていますが(それまではZFNやTALENと呼ばれる人工制限酵素がゲノム編集に使われていました。CRISPR/Cas9はRNA誘導型ヌクレアーゼと呼ばれる新しいタイプのゲノム編集ツール)、カンキツではまだ研究段階にあります。本研究チームは、破壊するとアルビノが誘導されるPDS遺伝子に対してCRISPR/Cas9を適用し、その結果からCRISPR/Cas9がマメキンカンの遺伝子変異導入に効率的であることを導き出したそうです。また、ここからは理解があやしいですが、CCD4と呼ばれる遺伝子に対してもCRISPR/Cas9を適用し、遺伝子変異が誘導されることを確認したうえで、その後代を作り、遺伝子変異が後代に高い確率で引き継がれることを確認したそうです。ゲノム編集は特定の場所に変異を起こすことができるため、遺伝子機能の解析に大いに役立つといわれています。マメキンカンにCRISPR/Cas9が作用するということは、マメキンカンの遺伝子機能の解析はCRISPR/Cas9を用いて効率的に行うことができるということであり、これもまた"Mini-Citrus"がカンキツ研究においてモデル植物として十分役に立つことをサポートする内容になっています。

 

他にも、マメキンカンに特有な開花特性について、FT,COC1,FLDの活性が下がり、FLC,FLD,FWAの活性が上がるという面白そうな匂いのする内容が書いてありましたが、植物生理を勉強したことがないこともあり、理解があまり進みませんでした。ここら辺の内容はまた植物生理を勉強した上でまた読み直したいですね。

 

マメキンカンについては、面白い性質を持つことから、たとえ他胚性であっても交配したいと思い、色々試してきただけに、単胚性の発見には「単胚性マメキンカン、見つかっちゃうんか~い!」と内心ちょっとがっくりしてます笑 ただこの論文はあくまでも研究。私がやりたいのは品種づくり。ベクトルが違うからいいや、と気持ち切り替えて今後も頑張ります。

 

 

参考文献

Chenqiao Zhu :Genome sequencing and CRISPR/Cas9 gene editing of an early flowering Mini-Citrus(Fortunella hindsii)

Plant Biotechonol J.2019 Nov;17(11):2199-2210. doi: 10.1111/pbi.13132. Epub 2019 May 21.

 

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コメント (2)
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