家の庭で品種改良!

庭でみかんの品種改良やってます

ラディッシュにキャベツを接ぐと花が咲く

2022年01月20日 22時10分15秒 | 勉強

大学で専攻にしている物理の話をあまりしたことがなかったですが、大学では物理学を勉強しています。

(あ、ちゃんと今日の内容と関係あります笑)

物理学といっても、宇宙というようなマクロな分野ではなくて、原子とか電子とかのミクロな分野。

いわゆる量子力学を使うような分野を勉強しています。

研究室で多いのが半導体や超伝導といった固体物理を扱う研究室。

固体物理というのは、原子・電子のレベルから物質の性質を解明していく分野で、大学で生活していると必然的にそういった研究の話が耳に入ってくるでものです。そんな中よく聞くのが、"混ぜてみたら面白い性質が見つかったからその性質を調べている"、という研究。

複数の物質を混ぜ合わせると新しい性質が生まれるということはよくあり、実際合金やら半導体やら、世の中に役に立っているものは混ぜ物ばかりなのですが、それらは理論的計算からだけでなく、偶然見つかることもあるそうです。

これって結構接ぎ木にも当てはまることだなぁと思っていてだからこそ接ぎ木が好きなのですが、今日はまさにそのような研究論文、つまり接ぎ木してみたら面白いこと起きちゃったという内容の論文の紹介です。

(イントロだけでめっちゃ長くなってしまった、、)

 

今日紹介するのは、京都大学の方が書かれた「Non-vernalization Flowering and Seed Set of Cabbage Induced by Grafting Onto Radish Rootstocks」という名前の論文です。日本語に訳すと「ラディッシュへの接ぎ木によるバーナリゼーションを介さない開花と結実」。本来キャベツというのは、十分株が大きくなったうえで低温にさらされないと花芽をつけないのですが(低温にさらすことをバーナリゼーションといいます)、ラディッシュに接ぎ木するとバーナリゼーションがなされなくとも花芽がつくことが分かったそうです。

本論文で特に重要なのは

①キャベツを抽苔し始めている何種類かのケール、ラディッシュに接ぎ木したところ、ラディッシュに接ぎ木したもののうちいくつかでは、バーナリゼーションを行わずとも、接ぎ木後おおよそ50日前後で花が咲いたということ(正確には蕾を確認した)。またその花はCO2による自家受粉で通常通り結実したということ。

②接いだキャベツについては開花を促進するFTタンパク質の有意な上昇や開花を制限するFLCタンパク質の有意な減少が見られなかったということ。唯一FTタンパク質によって活性化されるというBoSOC1については上昇が見られたということ。

③キャベツの開花に貢献したラディッシュは2種類あったが、片方ではFTタンパク質の上昇がみられたということ。

④接いだことによる開花はあまり長く続かなかったこと

これらのことから、ラディッシュへの接ぎ木により、バーナリゼーションを行わずキャベツを開花させることが可能であり、その接ぎ木による開花促進は、台木のラディッシュ由来のFTタンパク質が、キャベツのBoSOC1に直接作用することによって引き起こされているのではないかと結論付けています。

 

もう少し詳しく書きたいところですが、集中力切れたのでここら辺で切り上げます笑

開花促進は育種のスピードを上げるうえで何より重要であって、だからこそいろんなところで研究および開発が行われているわけですが、遺伝子組み換えとかウィルスベクターとか、なかなか個人じゃ手を出せないのが多いんですよね。その点、今回の研究は接ぎ木、というシンプルな方法で開花が促進できてしまうので驚きです。

接ぎ木は古くから存在している手法ですがまだまだ可能性を秘めているというのが、なんとも素敵ですね笑

ではっ!

 

参考文献

Ko Motoki : Non-vernalization Flowering and Seed Set of Cabbage Induced by Grafting Onto Radish Rootstocks

Front Plant Sci. 2018; 9: 1967. Published online 2019 Jan 10. doi: 10.3389/fpls.2018.01967

シキキツ×マメキンカン あまり差がでない…

2022年01月20日 20時30分19秒 | シキキツ×マメキンカン

今日は大寒。昼間は暖かかったですがだんだん寒くなってきましたね、、

3限から授業で昼間に登校したのでついつい薄着で登校してしまって…帰りひどい目にあいました笑

昼間暖かいとはいえまだ1月。気を付けないとですね、、笑

 

さて、以前紹介したシキキツ×マメキンカン、

発芽したあとの様子を全然投稿していませんでしたがこのように順調に成長してきました!

2021年7月に播種しているので大体半年が経過。

発芽して以降ほとんど冬だったことを踏まえるとそれなりに順調な成長です。

 

こちらは発芽後成長が悪くすぐ接ぎ木をした個体。

これについては11月に紹介しましたが、枝がかなりがっちりしてきました。

 

合計で13本得られたこれの実生はシキキツを母親にしてマメキンカンと交配したもの。

本来シキキツは多胚性なので種子親には使えませんが、何個か単胚の種子が混ざっており、これらはそこから生まれました

ただ、単胚の種子に見えたけれども実は多胚の種子だった、なんてこともよくあるので、シキキツ×マメキンカンの実生ではなく、シキキツの実生である可能性も十分にあるんですよね、、これくらいの大きさになってくるとそろそろ両親の特徴が見え始めることですが、どうもシキキツに似ていて…汗

もしかするともしかしちゃうかもしれません笑

大体20枚くらい葉が展開してくるころには交配できているのかできていないのかはっきりするのでそれまではドキドキの毎日です

接ぎ木して早くはっきりさせたいけれど、接ぎ木に使うカラタチも貴重。

交配精度を高めることの大切さを痛感します、、、

 

関連記事

シキキツ×マメキンカンの交配成功

シキキツ×マメキンカンの播種

シキキツ×マメキンカンの成長報告

 


紅QUEEN

2022年01月17日 22時13分54秒 | 品種

つ、ついに期末テスト期間が始まりました…笑

物理とか数学のテストが多いんですが、現実逃避したいのかこういう時に限って育種の勉強がはかどるんですよね笑

いい感じで理解が深まってきました♪

 

さて、今日は久々に品種レポです!

食べた品種は""紅QUEEN"。

あまり詳しい情報は出ていませんが、どうやら大分県で開発された品種のようです!

 

まず目を引くのが見た目。表面がとてもなめらかでつやつやしています!

最近は見た目きれいな品種が多いですが、その中でも特に滑らかな品種なんじゃないかと思います。

大きさは200g強と大きく、インパクトもあります。

セミノールや紅マドンナなどは剝く前でも皮から香りがしますが、紅QUEENに関してはありませんでしたね。

 

剥くときの触感(?)も独特で、皮は全然薄いんですが、まるでブンタンを剝いているかのような触感に陥りました

アルベド(白いふわふわ)も他のカンキツとはちょっと違う見た目をしています。

剥くときはもちろん香りがしましたが、伊予柑のような香りで驚きました…!

他の交雑品種にはない特徴です。

 

中身は完全に無核(種がないこと)でした。

果肉がすごく柔らかいからこそ相対的にじょうのう(薄皮)が分厚く感じてしまいましたが、糖度も15弱ありとても濃厚な味わいでした。

 

一言でまとめると、とにかく今までとは全然違う傾向の品種。

香りも果肉の柔らかさも剥くときの触感も、今まで食べてきた品種と全然違いました。

今回のは3つで1080円。もう少し安くなることを願うばかりです。

 

調査結果(平均値)↓

調査果実数 ; 2

果重 ; 225g

幅 ; 83mm

高さ ; 58mm

果径指数 ; 143

果肉歩合 ; 86

房の数 ; 14

平均種子数 ; 0

糖度(BRIX) ; 14.9

 


マメキンカン、モデル植物の仲間入り

2022年01月15日 02時14分24秒 | 勉強

今日、改めてカレンダー見て気づいたんですが、そろそろ3年生終わるんですよね、、

院に進むとはいえ、いつまでも学生モードじゃいられないなぁ…と少し焦ってきました笑

 

さて、大学3年生になると、ある程度は英論文が読めるようになってくるもの。

今までは日本語で書かれた参考書での勉強がメインでしたが、論文では最新の研究に触れることができとても面白いので、最近は論文を読むことを心がけています。せっかく読んだ論文をそのままにしておくのももったいないので、面白かった論文に関しては、頭の整理も兼ね、このブログで紹介することにしました。ちょっと法律に関する知識が乏しくて、論文を紹介する際の著作権云々がどうなっているかわからないので、もし危なかったら教えてください。

 

 

今日紹介する論文は2019年にPlant Biotechnology Journalで紹介された「Genome sequencing and CRISPR/Cas9 gene editing of an early flowering Mini-Citrus(Fortunella hindsii)」という論文。中国の華中農業大学(Huazhong  agricultural university)の研究チームから発表された研究です。論文内容も踏まえタイトルを訳すと「幼若期の短い単胚性マメキンカンのゲノム解析及びCRISPR/Cas9によるゲノム編集」といったところでしょうか。

 

マメキンカンは、このブログで何度も書かせてもらっているように、カンキツでありながら播種から一年以内で開花するという特殊な性質を持っています。このマメキンカンは基本的に多胚性ですが、研究チームが中国の福建省で発見したマメキンカンは単胚性であり、この論文はその単胚性マメキンカンのモデル植物としての可能性を示した内容になっています。

 

論文内容で特に重要なこととして、

①中国の福建省で見つかったマメキンカンは単胚性を有していたこと

 (論文内ではこのマメキンカンを"Mini-Citrus"と呼んでいます)

②ゲノム解析の結果、遺伝的に栽培種とほとんど変わらなかったこと

③CRISPR/Cas9によりゲノム編集を試みたところ、効果的に遺伝子改変を行うことができたこと

の三点を挙げており、それらから"Mini-Citrus"がカンキツ研究においてモデル植物として役に立ちそうであることを結論付けています。

 

①に関して、遺伝子に関する解析では、対象の系統だけでなくその後代が必要になってきますが、多胚性では後代を得ることが難しく、多胚性であるマメキンカンは、種をまいてから花が咲くまでが他のカンキツに比べてとても短いという長所があるものの、研究対象としてはあまり使われることがありませんでした。しかし、この研究チームは中国の福建省で単胚性を有するマメキンカンを発見。2,3代世代を進めることによりホモ接合率を高めたものを本研究では使ったそうです。

 

②については私のゲノム解析の知識がやや乏しく若干理解が怪しいですが、8種類のカンキツ、すなわちChinese box orange、ポメロ、シトロン、パペダ、スイートオレンジ、温州ミカン、Mangshan(wild mandarin)、クレメンティンとのゲノム比較により、開花関係の遺伝子にやや違いが見られたものの、それら8種がマメキンカンとほとんど同様の遺伝子構造を持っていたことが分かったそうです。これが示すことは、栽培用カンキツの遺伝子機能の研究はマメキンカンで代用しても問題ないということであり、"Mini-Citrus"がカンキツ研究においてモデル植物として十分役に立つことをサポートする内容になっています。

 

③について、ゲノム編集はCRISPR/Cas9の発見により近年注目の的になっていますが(それまではZFNやTALENと呼ばれる人工制限酵素がゲノム編集に使われていました。CRISPR/Cas9はRNA誘導型ヌクレアーゼと呼ばれる新しいタイプのゲノム編集ツール)、カンキツではまだ研究段階にあります。本研究チームは、破壊するとアルビノが誘導されるPDS遺伝子に対してCRISPR/Cas9を適用し、その結果からCRISPR/Cas9がマメキンカンの遺伝子変異導入に効率的であることを導き出したそうです。また、ここからは理解があやしいですが、CCD4と呼ばれる遺伝子に対してもCRISPR/Cas9を適用し、遺伝子変異が誘導されることを確認したうえで、その後代を作り、遺伝子変異が後代に高い確率で引き継がれることを確認したそうです。ゲノム編集は特定の場所に変異を起こすことができるため、遺伝子機能の解析に大いに役立つといわれています。マメキンカンにCRISPR/Cas9が作用するということは、マメキンカンの遺伝子機能の解析はCRISPR/Cas9を用いて効率的に行うことができるということであり、これもまた"Mini-Citrus"がカンキツ研究においてモデル植物として十分役に立つことをサポートする内容になっています。

 

他にも、マメキンカンに特有な開花特性について、FT,COC1,FLDの活性が下がり、FLC,FLD,FWAの活性が上がるという面白そうな匂いのする内容が書いてありましたが、植物生理を勉強したことがないこともあり、理解があまり進みませんでした。ここら辺の内容はまた植物生理を勉強した上でまた読み直したいですね。

 

マメキンカンについては、面白い性質を持つことから、たとえ他胚性であっても交配したいと思い、色々試してきただけに、単胚性の発見には「単胚性マメキンカン、見つかっちゃうんか~い!」と内心ちょっとがっくりしてます笑 ただこの論文はあくまでも研究。私がやりたいのは品種づくり。ベクトルが違うからいいや、と気持ち切り替えて今後も頑張ります。

 

 

参考文献

Chenqiao Zhu :Genome sequencing and CRISPR/Cas9 gene editing of an early flowering Mini-Citrus(Fortunella hindsii)

Plant Biotechonol J.2019 Nov;17(11):2199-2210. doi: 10.1111/pbi.13132. Epub 2019 May 21.

 

関連記事

単胚性・多胚性 - 家の庭で品種改良! (goo.ne.jp)

マメキンカンの話 - 家の庭で品種改良! (goo.ne.jp)


適当に植えてもまぁ育つ

2022年01月14日 18時37分17秒 | アブラナ

いよいよ共通一次テストが明日に迫ってきましたね

僕が受けていたころはセンター試験といっていましたが、試験内容の大幅変更に伴って名前まで変わったらしいです。

毎年雪が降ったことに伴う騒動でニュースになりますが、今年はどうなるでしょう、、

地元では昨日の夜、うっすらですが今年二回目の雪が降ったので少し心配です

 

さて、今日はアブラナ科野菜の話題です。

しばらくやっていなかったアブラナ科の交配をこの冬から再開しました。

交配に使おうと思って育てたけれども最終的に使わなかった苗というのが結構出るのですが、それらをプランターに適当に植えておいたところ、なんだかんだ本命で育てているのより元気に育ってきました笑

 

まずは花芯白菜。

播種がかなり遅れたことに加え、この密植具合なので、さすがに本来の株の大きさには育ちませんでしたが、花芯白菜らしい明るい葉を展開してくれました。ただ、写真からはわかりにくいですが、葉の形は結構ばらけました。奥の株は結構丸い葉をつけているのに対し、右と左の二株の葉はどちらかというとギザギザしています。個人的には一番奥の子が好きですね笑

ちなみに真ん中に祝蕾が隠れています、少しだけ葉が顔をのぞかせていますね。偶然、花屋で見つけて衝動的に買っちゃったんですが、植える場所が見つからなくって、結局ここに落ち着きました…笑 うちは雲仙こぶ高菜が雑草のように生えてくるのですが、そろそろ飽きてきたので、祝蕾と自然交配してもらおうかななんて思っています笑

 

次はターサイです

ターサイは他の品種と比べて相対的に種が小さいので、まくときはいつも心配になってしまうのですが大きく育ちました。ただ、よくよく観察すると、すでに花芽ができているのでこれ以上は大きくならないでしょうね。ターサイはトウ立ちが早いですよね。トウ立ちが遅い品種も作られてるみたいですが、育ててみたら実は雄性不稔でした~なんてことになるのが怖くてなかなか買えません笑

 

という感じで、密植&適当に植えたわりに結構ちゃんと育ってくれました。うちでは結構な頻度でシンクイムシが発生してしまうのですが、植えたのが遅かったせいかそちらの被害にもあわずに済みました。去年はカメムシこそ多かったものの、ブドウの葉を食べてしまうコガネムシもほとんど発生しなかったですね…こうなると今年が怖い、、いったいどれだけの被害が出ることやら