隣でブロック塀工事が進んでいるのを一週間ほど眺めている。
ブロック積みを夫婦で行なっているのを見て、ふと思いだしたことがあった。
知り合いのろう者にブロック工をしている人がいて、その夫妻に関わる話だ。
その夫妻には、聴者で手話を学び始まったばかりのAさんがいた。
Aさんは、教育委員会からろう者の子育てに関し、講演してほしいと頼まれた。
講演の内容を考えたが、ろう者の子育ては、本人が話すべきと考えた。
聴覚障害者の子育ての苦労は、当事者自身の声(手話)で伝えるほうが良い。
その旨を依頼者に伝えると、初めてのことでもあり、ろう者の講演に反対された。
障害者を「さらし者」にしていると、聴衆に思われないかという危惧だったそうだ
Aさんは、教育委員会に対し、粘り強く説明した。
結果、ろうの女性が手話で講演し、それを読み取って聴衆に伝えることになった。
手話初心者のAさんは、綿密に手話の読み取り方の打合せを繰り返した。
講演の結果は好評で、涙を流す人が多かったとのこと。
その後、依頼されて、何回か同じような講演をしたそうだ
20年ほど前の古い話であるが、私はその話に感心し、彼女を見直した。
この人ならば信頼できる通訳になれると思った。
数年後、手話の講師を依頼されたときは、必ずAさんを紹介するようになった。
当時のAさんは、手話の初心者であったので、よけいに私は感心している。