メドベージェフ大統領や私と同様、皆さんはまだ若いので、大気圏内で水爆実験が行われ、子供たちが核シェルターへの避難訓練を行い、世界が核兵器による破滅の瀬戸際まで行った、冷戦の最も暗い時代を経験していません。しかし、皆さんは、世界が分裂していた時期に生まれた最後の世代です。当時はまだ、米国とソ連の軍隊がヨーロッパに集結し、訓練を受け、戦う準備を整えていました。前世紀のイデオロギーの深い溝がほぼ存在していました。天体物理学からスポーツまで、あらゆる分野での競争がゼロサム・ゲームと見なされていました。一方が勝てば、もう一方は負けなければなりませんでした。そして、わずか数年後には、そうした世界が消滅しました。しかし、間違ってはいけません。この変化は、決してひとつの国家によってもたらされたものではありません。冷戦が終結したのは、多くの国々の長年にわたる行動の結果でした。また、ロシアと東ヨーロッパの人々が立ち上がり、冷戦を平和的に終わらせる決心をしたからでした。冷戦の終結と共に、驚くほど大きな期待が生まれました。平和と繁栄、国家間の新たな取り決め、そして個人が享受できる新たな機会に対する期待です。大きな変化が起きる時期の常として、当時も、野心的な計画と無限の可能性が生まれました。しかし、言うまでもなく、物事が常に計画通り進むとは限りません。
混乱が続いた過去20年間、これが真実であることが世界各地で証明されてきました。大きな富が築かれましたが、それによって、圧倒的な貧困に苦しむ広範な地域がなくなることはありませんでした。貧困はロシアにも、米国にも、そして世界中どこにも存在します。投票をする人の数は増えましたが、依然としてあまりにも多くの政府が、国民の権利を守ろうとしていません。イデオロギー闘争は減少しましたが、それに代わって、部族間、民族間、宗教間の対立が起きています。新しいロシアでは、ソビエト連邦の解体後、それまでの政治的・経済的な制約がなくなったことが、可能性と困難の両方をもたらしました。一部には豊かになった人たちもいましたが、そうなれなかった人たちがさらに大勢いました。苦しい時もありました。しかし、ロシア国民は強さを発揮し、犠牲を払い、経済を成長させ、自信を深めることによって、苦労はしましたが、前に進むことができました。そして、苦しい時期もありましたが、今日、東ヨーロッパとロシアでは多くの人たちの生活が、20年前に比べて向上しています。
皆さんの人生は、ちょうどこの過渡期に重なりました。しかし、この学校が創設された当時に問われた基本的な問題について考えてみてください。ロシアの未来はどのようなものになるのか。ロシアと米国はどのような未来を共有するのか。冷戦に代わってどのような世界秩序が生まれるのか。こうした問題にはいまだに明確な答えが出ていません。ですから、皆さんが…ロシア、米国、そして世界中の皆さんの世代が、答えを出さなければなりません。皆さんが決めることができるのです。
皆さんに代わって私がこれらの問いに答えることはできませんが、米国の求める未来について率直にお話しすることはできます。まず、はっきりさせておきたいのは、米国は、強く、平和な、繁栄するロシアを求めている、ということです。この信念の根本にあるのは、ロシア国民に対する私たちの尊敬の念であり、米ロ両国が競争を超えて共有する歴史です。過去に競争関係にあったにもかかわらず、米国とロシアの国民は、20世紀最大の戦いにおいては同盟関係にありました。最近ノルマンディーを訪れたときに、私はこのことに気付きました。ボストンやバーミンガム出身の兵士がどのような危険も顧みずにノルマンディーの海岸を急襲し、がけに登っていたとき、カザンやキエフ出身のソビエト軍兵士は、侵略を撃退し、東部戦線の形勢を逆転させるために、想像を絶する苦境に耐えていました。ジョン・ケネディ大統領が述べたように、「戦闘の歴史において、第2次世界大戦中のソビエト連邦ほど苦しんだ国家はなかった」のです。私たちは、こうした過去に敬意を払うと同時に、強く活気あるロシアが将来にもたらす恩恵をも認識しています。
皆さんの人生を決定するさまざまな課題について考えてみてください。核兵器や過激主義からの保護、市場と機会へのアクセス、保健と環境、安定と繁栄を推進すると同時に主権と人権を保護する国際制度、といった課題です。こうした課題は、世界的なパートナーシップを必要とするものであり、ロシアが大国として正当な立場に立つことによって、そのパートナーシップが強化されます。
しかしながら、残念なことに、旧来の前提、つまり古い考え方が優先されなければならない、という認識が時々見られます。それは、未来ではなく過去に根差した力の概念です。米国とロシアは敵対する宿命にあり、強いロシアあるいは強い米国は、相互に対立する形でしか自己の権利を主張することができない、という20世紀的な見方です。また、私たちは影響力の及ぶ範囲を奪い合う運命にあり、大国は相互の均衡のために競合するブロックを形成しなければならない、という19世紀的な考え方もあります。これらの前提は間違っています。2009年においては、大国は他国を支配したり悪者扱いしたりすることによって、その力を誇示するのではありません。帝国が主権国家をチェスの駒のように扱うことのできる時代は終わりました。私がカイロでお話ししたように、私たちの相互依存性を考慮すると、ひとつの国家あるいはひとつの集団を他より上に置こうとする世界秩序は、必ず失敗します。力の追求は、もはやゼロサム・ゲームではなく、共に前進していかなければなりません。私が、米国とロシアの関係を「リセット」することを求めたのはそのためです。これは、クレムリンとホワイトハウスの関係を一新するにとどまるものではありません。確かに、この関係の一新は重要であり、私はロシアの大統領および首相と大変良い話し合いを行いましたが…。これは、米国とロシアの国民が相互の利益を明確にし、前進への道を開く対話と協力を拡大する持続的な努力でなければなりません。
これは容易なことではありません。過去に敵対していた者同士が永続的なパートナーシップを築くのは困難なことです。何十年にもわたって私たちの政府や官僚制度に深く根付いてきた習慣を変えるのは難しいことです。しかし私は、この世紀を決定付ける根本的な課題に関して、米国民とロシア国民には、協力の基盤となる共通の利害があると信じています。私は、ロシアの国益を決める立場にはありませんが、米国の国益についてはお話しすることができます。そして、米国とロシアが共通の立場に立っていることを理解していただけると信じています。
混乱が続いた過去20年間、これが真実であることが世界各地で証明されてきました。大きな富が築かれましたが、それによって、圧倒的な貧困に苦しむ広範な地域がなくなることはありませんでした。貧困はロシアにも、米国にも、そして世界中どこにも存在します。投票をする人の数は増えましたが、依然としてあまりにも多くの政府が、国民の権利を守ろうとしていません。イデオロギー闘争は減少しましたが、それに代わって、部族間、民族間、宗教間の対立が起きています。新しいロシアでは、ソビエト連邦の解体後、それまでの政治的・経済的な制約がなくなったことが、可能性と困難の両方をもたらしました。一部には豊かになった人たちもいましたが、そうなれなかった人たちがさらに大勢いました。苦しい時もありました。しかし、ロシア国民は強さを発揮し、犠牲を払い、経済を成長させ、自信を深めることによって、苦労はしましたが、前に進むことができました。そして、苦しい時期もありましたが、今日、東ヨーロッパとロシアでは多くの人たちの生活が、20年前に比べて向上しています。
皆さんの人生は、ちょうどこの過渡期に重なりました。しかし、この学校が創設された当時に問われた基本的な問題について考えてみてください。ロシアの未来はどのようなものになるのか。ロシアと米国はどのような未来を共有するのか。冷戦に代わってどのような世界秩序が生まれるのか。こうした問題にはいまだに明確な答えが出ていません。ですから、皆さんが…ロシア、米国、そして世界中の皆さんの世代が、答えを出さなければなりません。皆さんが決めることができるのです。
皆さんに代わって私がこれらの問いに答えることはできませんが、米国の求める未来について率直にお話しすることはできます。まず、はっきりさせておきたいのは、米国は、強く、平和な、繁栄するロシアを求めている、ということです。この信念の根本にあるのは、ロシア国民に対する私たちの尊敬の念であり、米ロ両国が競争を超えて共有する歴史です。過去に競争関係にあったにもかかわらず、米国とロシアの国民は、20世紀最大の戦いにおいては同盟関係にありました。最近ノルマンディーを訪れたときに、私はこのことに気付きました。ボストンやバーミンガム出身の兵士がどのような危険も顧みずにノルマンディーの海岸を急襲し、がけに登っていたとき、カザンやキエフ出身のソビエト軍兵士は、侵略を撃退し、東部戦線の形勢を逆転させるために、想像を絶する苦境に耐えていました。ジョン・ケネディ大統領が述べたように、「戦闘の歴史において、第2次世界大戦中のソビエト連邦ほど苦しんだ国家はなかった」のです。私たちは、こうした過去に敬意を払うと同時に、強く活気あるロシアが将来にもたらす恩恵をも認識しています。
皆さんの人生を決定するさまざまな課題について考えてみてください。核兵器や過激主義からの保護、市場と機会へのアクセス、保健と環境、安定と繁栄を推進すると同時に主権と人権を保護する国際制度、といった課題です。こうした課題は、世界的なパートナーシップを必要とするものであり、ロシアが大国として正当な立場に立つことによって、そのパートナーシップが強化されます。
しかしながら、残念なことに、旧来の前提、つまり古い考え方が優先されなければならない、という認識が時々見られます。それは、未来ではなく過去に根差した力の概念です。米国とロシアは敵対する宿命にあり、強いロシアあるいは強い米国は、相互に対立する形でしか自己の権利を主張することができない、という20世紀的な見方です。また、私たちは影響力の及ぶ範囲を奪い合う運命にあり、大国は相互の均衡のために競合するブロックを形成しなければならない、という19世紀的な考え方もあります。これらの前提は間違っています。2009年においては、大国は他国を支配したり悪者扱いしたりすることによって、その力を誇示するのではありません。帝国が主権国家をチェスの駒のように扱うことのできる時代は終わりました。私がカイロでお話ししたように、私たちの相互依存性を考慮すると、ひとつの国家あるいはひとつの集団を他より上に置こうとする世界秩序は、必ず失敗します。力の追求は、もはやゼロサム・ゲームではなく、共に前進していかなければなりません。私が、米国とロシアの関係を「リセット」することを求めたのはそのためです。これは、クレムリンとホワイトハウスの関係を一新するにとどまるものではありません。確かに、この関係の一新は重要であり、私はロシアの大統領および首相と大変良い話し合いを行いましたが…。これは、米国とロシアの国民が相互の利益を明確にし、前進への道を開く対話と協力を拡大する持続的な努力でなければなりません。
これは容易なことではありません。過去に敵対していた者同士が永続的なパートナーシップを築くのは困難なことです。何十年にもわたって私たちの政府や官僚制度に深く根付いてきた習慣を変えるのは難しいことです。しかし私は、この世紀を決定付ける根本的な課題に関して、米国民とロシア国民には、協力の基盤となる共通の利害があると信じています。私は、ロシアの国益を決める立場にはありませんが、米国の国益についてはお話しすることができます。そして、米国とロシアが共通の立場に立っていることを理解していただけると信じています。