マジンガー通信

多分500万人に1人くらいの割合でしか役に立たないシトロエンC4にまつわるお話など。

出来る事しか出来ない、という事でしょうか。 ~日産リーフ試乗記~

2011年07月19日 | 試乗記
電気自動車がもたらす未来、だそうです。

実は元町F1イベントの日に乗ったんですが、
噂のリーフに乗りました。
過去何度かお話をしている様に
電気自動車には車を変える力があると
大きな期待を持っています。
容易に想像出来るところとして、
レイアウトの自由度が飛躍的に上がりますから
今までと全く違う動きをする車や、
より使い勝手の良いを作る事が可能です。
電気の遣り取りについても、
今はまだ原始的な方法で充電をして
ただ使うだけの為に走っている電気自動車ですが、
それ自体が大きな蓄電池であって
供給方法に自由度が増すのであれば
今懸念されている電力不足なんていう問題に大しても
大きな力を発揮する筈、といわれています。

普通の色の方がリアリティがあって良いです。

とはいえそんな社会要件を
個人が負担しなければならない故は無いですし、
ややこしい話は、また機会があればという事で
先ずは実質量産第1号になるリーフがどんな車なのか。
車としてどの様な魅力を持っているのか興味津々です。
私が住んでいる辺りは、元々日産のお膝元なので
リーフに遭遇する事が結構あります。
1日に10台以上は普通に見る、という感じでしょうか。
モーターショーや広告なんかでは水色に塗られて
まるで茄子の様な風貌のリーフですが、
白や黒いリーフを見ると大作りなハッチバック
という印象です。
どちらにしても外観上の魅力は全く無いですが、
何か異質な物な感じは、上手く出していると思います。
外観で語れるのは、その程度でしょうか。

室内は魅力が無いを通り越して、ゴチャゴチャです。

室内も異質な空気に包まれています。
未来的・・・ではなく余りのゴチャゴチャ具合に。
見切り窓が余計に見辛い視界に
情報過多な上に2段に分かれているのと、
注力点も無いので何処を見て良いのか分からない
人間工学完全無視のメーター類。
最近のガンダムとかエヴァンゲリオンとかの
コックピットの描写なんかを見ると
日本人はSF的な表現に秀でていると思うのですが、
そんな要素は全く無いです。
気を取り直して注意して見ていくと
電池残量に関する情報が多い事が分かります。
日産の航続距離に対する不安が良く現れている
メーターまわりとも言えると思います。

一回押しただけでメインスイッチがオンになる
イグニッションに違和感を感じつつも
ギアをドライブに入れると、車は走り始めます。
日産がやっているツイッターに載っている
一般のつぶやきなんかを見ると
無音で凄い、といった様な事が書いてありますが、
モーターの音が結構します。
同じ機構を使っているので当たり前ですが、
電車の音と全く同じです。
それから、エコタイヤを履いているので
ロードノイズが結構するのと、
タイヤハウスに入ってくる砂利の音が結構するので、
無音を期待すると、肩すかしを食らうと思います。

続いて肝心の動力性能について。
モーターは転がり始めから最大トルクが出るので
加速が凄いなんて事を色んなところで見聞きしますが、
厳密に言うと違います。
リーフが使っている誘導モーターは、
最初速の反応が鈍い特性を持っています。
物理的に無理な訳ではなくて、
加速度ゼロの物を動かす時に必要な
大電流を瞬時に流す制御が難しいので、
急加速が出来ないという訳です。
車は最初の入力に対してどの様な反応をするのかで
走らせて楽しい、楽しくないの殆どが決まりますから
特に手当もされていないので
最初のタイヤの半転がり分くらいの加速が
エンジンの車よりも明らかに鈍いリーフは
走りに対して真摯ではないな、という印象は受けます。
ちなみに、値段が違うので比べるのも酷ですが、
テスラはその制御を
きっちりと対策しているそうです。
ただし、そこからは怒濤の加速。
結構な坂道でフル加速をさせて貰いましたが
まるで見えない紐で引っ張られている様な
体験した事の無い走りをします。
トルクに山が無くて平板ではあるんですが、
ギアシフトの必要が無いEVにあっては
これが味だと言われれば、そうとも言えます。
もう1つ、ブレーキについて。
下り坂で試すと良く分かりますが、
利き自体も甘いですし、回生ブレーキ制御の問題か
後ろを引きずる感覚があります。
これも重量が重くてブレーキに厳しいEV、
回生ブレーキと聞いて連想する感覚
そのままな印象です。

最後に乗り味。
シートは中々良く出来ていて、
長距離で乗っても負担は少ないだろうなと思います。
とはいえ、リーフは長距離走れないんですが。
ステアリング自体は結構な手応えがあって好感が持てるのですが、
車の挙動がどうにもチグハグな印象があります。
電池をフロアに敷いているのでロールをしない、
というのは日産が言い張る通りなんですが、
着座位置が高いので人は遠心力で外に持っていかれますし、
恐らく剛性があまり高くないので
上半身が踏ん張りきれない感覚があります。
ロール特性をどう味付けてあげるのかというのは
メーカーの腕の見せ所だと思うのですが、
それ以前な印象を強く受けます。
連動する話ですが、サスペンションの動きも
綺麗に舗装された道ではバネ下重量が軽い事を利して
中々重厚な走りをしてくれるのですが、
連続的に入力がある様な状況になると
直ぐに処理不能になったかの様にバタバタとします。
乗り味も何だかチグハグな印象です。

荷室の敷居が、この車を雄弁に語っているかな。

料理人の道場六三郎さんがかつて、
”最近の料理は素材を活かすといって、
切って盛っただけが如何に多いか”
なんて事を仰っていましたが、
リーフ正しく食べてみれば材料と調理法が
素人でも分かる様な車でした。
それでも美味しければまだ救われるんですが・・・
個別最適で総論として80点辺り目指す
日本的な企画が最早通用しないのは
明確なコンセプトと社会要件から生まれた技術革新で
一皮むけた印象が強い欧州車を見ると
如実に感じます。
動力を変えたところで作り手の本質が変わらなければ
それなりの物しか出来ないという事を
リーフは証明しているのではないかと思います。
とはいえ例えば矢の様な加速感など、
電気自動車としての可能性は感じましたし、
元々高い技術は持っている日産ですから
今は醜いアヒルの子なリーフを
立派な白鳥に育てて欲しいなと思います。
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