化学系エンジニアの独り言

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EUの挑戦

2007-01-17 | エネルギー
ロシアの積極的というか強硬的な資源外交に対応するため、EUは各国政府の国営企業への支配力を弱め、市場化することを提案しています。これによりインフラ整備や技術開発における競争と投資を促し、ロシアなどの強力な資源輸出国に対抗するとともに、温暖化問題にも対応しようというものです。提案は多くの項目を含んでいますが、そのいくつかを以下にあげます。

自動車での再生可能エネルギー使用の促進
ビルや住宅におけるエネルギー効率の改善
2020年におけるCO2排出量を1990年比で30%カット
CO2隔離と貯留を2020年以降の新設石炭火力に適用
CO2を排出しない原発の発電シェアを一番にする

これらの提案の中には最もだと賛成できるものもありますが、各国の国情に照らし合わせると無理と思われるものもあります。

CO2を30%カットする、については鉄鋼業界が労使揃って反対しています。せめて20%にしようと言っています。CO2削減により明らかに会社の利益は損なわれ、ひいては雇用の喪失につながると恐れているからです。CO2排出削減という制約の中で生産活動をしていくEU企業が、アメリカを初めとするCO2排出削減の足かせのない他国の企業と競争すれば、世界市場でのシェアを失いかねないと危惧しているからです。

フランスのように原発に80%依存している国もあれば、ポーランドのように石炭火力に大きく依存している国もあります。この様な国情を全く考慮せずに、EU統一の政策を作ることはそもそも無理があるというものです。
しかしその無理をあえてやろうというのが欧州人気質なのでしょうか。

これらの提案の中で注目したいのは、CO2隔離と貯留という方法が10年以上先ではあるものの実用技術として議論されている点です。再生可能自動車用燃料とは、言い換えればバイオ燃料です。このEUの挑戦とも言える提案から、CO2隔離・貯留とバイオ燃料という技術が2007年のトッププライオリティーになるのではと予想します。