化学系エンジニアの独り言

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サハリン2の教訓

2007-01-18 | ガス
サハリン2プロジェクトについては、シェル・物産・商事がガスプロムに51%の株式を$7.45ビリオンで売却することで決着がつきました。決着というのはこの株式譲渡を見とどけて、プーチンはサハリン2プロジェクトの犯していた環境に関わる違反行為が解決されたと、ぬけぬけと表明し、同プロジェクトの継続が確認されました。環境問題が株式譲渡で解決するという見え見えの茶番劇の結果です。

結局シェルは$6ビリオンをかけたプロジェクトの主導権をガスプロムに奪われたわけです。この事実からいくつかの教訓が得られました。

ロシアの規制当局など全く当てにならないということです。政府の意向に従って白でも黒でも都合の良い判断を下すわけです。結局ロシアで資源開発を行なおうとすれば、ガスプロムやロスネフチの意に沿うように(つまりプーチンの意に沿うように)やらなければいけないことになります。環境問題についてはNGOの告発に端を発するということが良くあります。今後は政府がこの様なNGOの活動をうまく利用する、あるいはけし掛けるという風潮が世界中で生まれるのではないでしょうか。

さらに国際石油会社、メジャーはもはやロシアの化石資源を当てにできないと思われます。折角資金を投入して資源開発を実施しても、最後には環境問題やら税金問題やらで政府からいちゃもんを付けられて権利を横取りされます。契約書など何の力にもなりません。

現在、ロシアの技術では開発できないような悪条件の資源を高度な技術を駆使して開発している企業も、これからはいつか言いがかりを付けられると認識しておく必要があります。

さらに困ったことにはこうした手法を南米やアフリカの資源国が真似するようになることです。資源国の悪口を言うつもりは毛頭ありませんが、今後ますます資源を持つ国と持たない国の交渉は難しいものになっていくのでしょう。

一方マーケットもこの様な一部の資源国の行動に影響を受けるのは必須です。今後短期間を想定すると、LNGの供給は計画されているほどは増加しないと見る向きもあります。それはシェルの代わりにロシアの石油会社の無能な経営者がサハリン2のオペレーションをするわけですから、シェルが計画したとおりの生産量は達成できないということです。

この先ロシアとはどう付き合っていけばいいのでしょうか。かすかな希望ですが、2008年の選挙でプーチンに変わる次期大統領がまともな運営をしてくれることに期待することのようです。