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燃料作物とバイオ工学

2006-09-11 | バイオマス
NYTimesより
バイオテクノロジーを用いてエタノールを製造するためのコーンや他の作物を改良する開発が進められています。原油の高騰と化石燃料使用抑制(輸入石油に頼ることの安全保障上の観点と地球温暖化抑制の観点から)を追い風にバイオ燃料は増産の方向ですが、そこには解決すべき課題がたくさんあるようです。

1.燃料作物改良の目的・目標
農作物はこれまで害虫と除草剤への耐性を上げる改良が加えられてきましたが、燃料作物ではリグニンを減らす改良が目指されています。リグニンは植物の剛性を保つために必要な物質ですが、エタノール転換に際しては邪魔者です。

現在のところ、バイオエネルギーに関する技術的関心は燃料作物からバイオ燃料への転換技術におかれていますが、バイオ燃料の重要さが増すにつれて単位農地面積当りの生産エネルギー量に関心は移るでしょう。それはバイオ燃料の最大の弱点が量的確保にあるからです。

またコーンの発酵可能なデンプン量を増やすことで、エタノール収率は2から5%はアップするといいます。

2.遺伝子操作と一般的な交配による品種改良
Syngenta社は2008年に遺伝子操作で改良したコーンを製品化するとしています。これはエタノール工場で添加する酵素を初めから含むものです。同社は海底火山の近くにいる微生物からの遺伝子を酵素コーンに移植しています。高温耐性のある微生物からの遺伝子を持つので、エタノール発酵条件をより高温に、より酸性度アップ方向にできることでエタノール生産効率は向上します。

DuPont社はバイオディーゼルのための大豆を改良すると発表しています。
Ceres社はswitch grassを燃料作物にする開発を実施しています。

モンサント社やDuPont社は現時点での燃料作物の改良に必ずしも遺伝子操作が必要というわけではないといいます。一般的な品種改良のほうが開発期間が短くて済むという理由からです。さらに燃料コーンに要求される特性は、病気、害虫や干ばつへの耐性ですが、それは食用コーンに要求されることと同じです。従って、必ずしもSyngenta社の酵素コーンが必要ではないといいます。

環境主義者は、遺伝子操作作物が野生種と交配することで森林がしおれてしまうことを心配し、この様なバイオ燃料の情報が国民の車社会への熱中を加速する(省エネと反対の機運)ことに反対しています。

2000年にはAventis CropScience社のスターリンクコーン事件がありました。飼料用のみに認められた遺伝子操作コーンが異花交配により食用コーンにも混ざっていることが判明し、回収と輸出停止になったというものです。

さらにはエタノール発酵槽に後からそのような酵素を加えることと、あらかじめ燃料コーンの中にその酵素を入れ込んでおくことにどれくらいの差があるのか、という疑問もあります。

一方、賛成者は国外の石油への依存という恐怖に比べれば、遺伝子操作作物のリスクは小さいと主張しています。
Syngenta社は酵素コーンについて食用、資料用の両方の認可をアメリカ、ヨーロッパ、南アフリカなどいくつかの国で取得する方針です。この酵素は安全であり、事実唾液にも含まれているというのがその根拠です。

食品安全センターの関係者はこの酵素(のための遺伝子)はまだ良く解明されていない微生物から取り出されたものであり、この酵素自身がアレルギーを生じさせる可能性も否定されてはいないと慎重な意見です。
農業省は同社に対してこの酵素コーンについてもっと情報を提示するよう要求しています。

3.セルロースの利用

コーン全量をエタノールに転換してもガソリンの15%にしかならない現状では、コーン以外の作物に注目する必要があります。

またエタノール生産増加により固いコーンの需要が高まります。農家は輪作をやめ、毎年コーンを作ることを強いられますが、これは土壌にゆがみをもたらし害虫や病気を増やす元になります。

量的確保の観点からはバイオエタノールの原料をデンプン・糖ではなく、セルロースに求めることは必然に思えます。例えば多年草植物であれば、灌がいや植付けに要するエネルギーは少なくてすみます。
Ceres社は一般的な交配と遺伝子操作の両面からswitch grassの研究を進めています。現在のところ、通常5トン/acreの収穫量が9トン/acreに向上しているといいます。

Mendel Biotechnology社は中国原産のmiscanthusに注目しています。収穫量は20トン/acreも可能であり、植付けも受粉も灌がいの手間も要らず、少なくとも10年間はただ刈り取るだけでいいといいます。
さらにポプラも候補の一つといえます。ポプラはゲノム解明された最初の木だからです。

この様な状況にあって、燃料作物の開発は一般的な交配技術から次第に遺伝子操作に移行していくことは間違いないでしょう。それは地球を守る、地球温暖化を抑制する技術に反対するのは困難だからといえそうです。

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