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エタノール狂想曲

2006-10-17 | バイオマス
オイル&ガスジャーナル誌にバイオエタノールガソリンに反対するコラムが掲載されています。要は、コーンから製造されるエタノールをガソリン代替に利用することは、エネルギー収支(石油ベース)でプラスにならず、経済性も成り立たないという立場からの主張です。

バイオエタノールはエネルギープラスになるというのが今日の大勢を占める意見ではありますが、記事の内容を見てみました。

企業は修復不可能な過ちを犯しているし、米国政府は将来性の無い施策を拡大しその成功を公言しています。税制優遇措置と市場に対する命令によって、政府はエタノール狂想曲を煽っています。バイオエタノールは海外石油依存度を低下させ、大気環境を改善すると謳っていますが、その実は農業ビジネスと農業州経済の振興という政治的目的にあります。

誰も出費を強いられないのならばどんなひどい政策も良いでしょうが、エタノール政策はその付けを消費者と納税者に回しています。さらに自動車メーカーも優遇税制にそそのかされてフレキシブル燃料自動車を売り込んでいます。こうしてエタノールプラントは増えるばかりです。

政府の目標は2015年に7.5 billion gal/yearですが、現在計画中のエタノールプラントがすべて稼動すれば2010年にも10 billion gal/yearを超えると推定されています。
そのため議会はエタノール目標生産量の引き上げを要求しています。

今後も原油価格が$50/bblを下回ることなく、さらにコーン価格が上がらなければバイオエタノールは経済的に成り立つでしょう。しかしその条件が崩れた時、経済性が成り立たなくなった企業はエタノールプラントの稼動を中止し、やがては廃棄してしまうでしょう。

しかし、今日のエタノール産業は政治家が作り出したものですから、この様な経済原則に従うことはないでしょう。どのような状況になっても政治家達はエタノールの増産を行い、その結果として輸入原油は減り環境は改善されたと公言し続けるでしょう。その付けを消費者と納税者に回しながら。

原料コーン増産のため土壌は肥料付けになり、より多くの化石燃料が消費され最後にはオゾン層が破壊されるとも知らないで。

うなづける部分もありますが、本当にこの主張でよいのでしょうか?確かに数あるエタノールプロジェクトの中には、エネルギー効率に疑問符がつくものや、補助金なしでは経済性が成り立たないものもあるのでしょう。環境保全と経済性が基本的にはトレードオフの関係にあることも確かだと思いますが、だからといってすべてのバイオプロジェクトを否定する事は適切でないと思います。各プロジェクトごとにエネルギー効率、環境保全と経済性の妥協点を見出すことが今の企業に求められている社会的使命と考えねばなりません。

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