最近、藤原正彦の「若き数学者のアメリカ」と「遥かなるケンブリッジ」を読みました。
お茶の水女子大学の名誉教授で数学者の藤原氏が20歳代の若いころ研究員としてミシガン大学とコロラド大学に
派遣された時のアメリカ体験記と10数年後に3児の父親となってからケンブリッジ大学に助教授として赴任した時
のイギリス体験記です。
この2冊を読んでアメリカとイギリスの違い、それぞれの特徴がよくわかりました。
多国籍人種が混在して自由気ままに活気あふれる活躍をしているアメリカに比べイギリスは逆に長い伝統とよき
文化を誇りとして他を寄せ付けないような落ち着いた雰囲気が漂っているようです。それゆえに時として
人種的偏見が現れるのもムベなるかなと思われます。
アメリカで、「Can I ask you somethinng ?」と聞くと「Yes you can」といい握手をしてくれるが、
イギリスでは「No.you can’t」と言われてなかなか握手もしてくれないそうです。
しかしそれは冷たいのではなく内気のせいなのだそうです。
アメリカでは英語が通じず、「ここはアメリカだ」と言われて米語に慣れていたら、イギリスでは英語(実は米語に
なっていた)が通じず、往生したこと。数限りない失敗談が描かれています。
アメリカのジョーク、イギリスのユーモアの違いも面白いです。イギリスではユーモアこそ最上の社交術であり
教養のバロメーターです。
日本人とイギリス人とは、心底に無常感を抱いているという点で、本質的のよく似ていいる。日本とアメリカは
緊密な交流を保ちながらも、なかなか真の相互理解に達しえないでいる。それに比べ日英が、深い部分で心を
通わせるのは、はるかに容易と思われる。終戦とともに生まれ変わり、いま壮年期に入った日本が、アメリカ
の若さに惹かれるばかりなく、イギリスの、懐の深い熟年の美学に惹かれるのは、そう遠い先のことではない
ような気がする。(これは「遥かなるケンブリッジ」のP261より抜粋)
因みに、藤原正彦氏は作家新田次郎と藤原せいの次男です。藤原せいの「流れる星は生きている」によると彼が
3歳の時終戦を迎え満州より日本に帰るまでの苦難を経験しています。